出典: 東京都内には、古くから“山の手”と呼ばれる地域があります。
出典: “山の手”とは、名が示す通り、低地に対しての高台です。
都内においては、概ね、江戸期に武家の居住地として開かれ、武家屋敷が連ねた地域です。
出典: 文京区の「音羽」と「目白台」周辺も、そうした東京の“山の手”に数えられる一地域です。
かつてこの界隈の高台や斜面には、武家屋敷が連なり、廃藩となった明治以降も、師範学校(大学)などの教育施設がおかれる他、公園用地や政財界の名士らの居住地となっていました。現在も、有形無形の歴史的文化財を内包した都内有数の文教地区、閑静な住宅街としてよく知られています。
音羽から目白台へ。地形と歴史が育んだ“山の手”風情。
出典: 護国寺から江戸川橋へと抜ける「音羽通り」を堺に、隣接する「音羽」と「*目白台」、街のシンボルでもある「護国寺」周辺は、台地(高台・斜面)の特質を活かし開かれた土地です。
【雑司が谷台地の南斜面に位置する「護国寺」は、低地に「仁王門」が、高台に「本堂」があり、標高差がある。(画像は、ツツジ咲く頃の「不老門」。門前の急勾配の階段は「護国寺」を代表する景観となっている。)】
出典: “音羽谷”というように、音羽通り沿いは、二つの台地に挟まれている谷戸で、この音羽通りを挟んで、東側が“音羽御殿(鳩山会館)”の建つ「小日向台地」、反対の西側が日本女子大がある「関口台地」。音羽通りの起点である「護国寺」は「雑司が谷台地」の南端上に位置しています。【小日向台地の高台に建つ「鳩山邸」】
出典: 文京区はこの他、本郷台地など、幾つかの台地と、「音羽谷」のような台地に囲まれた谷や低地で、概ね成り立っています。【「鳩山会館」英国風庭園】
出典: 台地と接する“低地”や“谷”の殆どは、海水の後退や川の侵食により形成されたものですが、一部の谷は、伏流水が台地の端で湧き出ることによって出来たものです。
本記事で紹介する、目白台(関口台地)の高台から神田川へと落ち込む“谷”もそうした場所の一つ。
谷へと落ち込む傾斜地は、滋養を含んだ湧水によって土地が潤い、緑が育まれ、自然豊かな環境、生き生きとした景観を提供してくれます。【関口台地・崖地の湧水を引き込んで造園された「肥後細川庭園」(池泉回遊式庭園)】
出典: 目白台から神田川にかけての界隈は、元々江戸が開かれる以前から風光明媚な地として知られ、近世以降に台地斜面特有の自然環境を活かした武家の別荘(下屋敷)街となり、明治以降、名士らの邸宅街となった場所です。今も豊かな環境を伝えつつ、かつての屋敷跡や遺構を活かした庭園や公園、桜並木の遊歩道が整備され、一般に利用されています。
【台地斜面の特質を上手く活かして作庭された「椿山荘」庭園。(画像は「椿山荘」の御神木で、椿山荘最古の樹木(椎ノ木)。根本周囲4.5m、樹齢500年を数える。)】
出典: “*山の手”と称される地域は、高台(台地)と台地の裾部分(低地帯)が複雑に入り組むため、概ね急坂や路地が錯綜しています。ここ音羽(小日向台地)や目白台(関口台地)も、「鼠坂」や「鉄砲坂」、「胸突坂」等など、大小様々の急勾配の坂道や曲折した細い階段、軒先が迫るような路地が、街のいたる所に生活道として残っています。
(※「山の手」の“手”とは、方向を指す言葉で、山の方向という意味。)
そうした坂や階段、路地に佇めば、標高差のある“山の手”ならではの景観と共に、歴史が育んだ独特の風情をも味わうことができます。【目白台の高台から神田川へと下る「胸突坂」】
出典: 先に述べたように、ここは教育施設や学術機関が多く集まる、都内有数の文教地区です。
条例によって建築用途制限があるため、当界隈は、武士や名士らが住み支えた土地の歴史と相俟って、都心部とは思えないほどに、街全体が静かで、穏やか。落ち着いた雰囲気です。【目白通り沿いに続く「日本女子大学」の赤煉瓦塀】
出典: また歴史ある当界隈には、都内指折りの名刹「護国寺」や、洋館と庭園が麗しい「鳩山会館」、名園で名高い「椿山荘」や「肥後細川庭園」、細川家伝来の品々を展示する「永青文庫」等など、魅力的なスポットが点在しています。
【ツツジ咲く頃の「護国寺」不老門】
出典: さらに、当界隈には、100年以上の永き亘って多くの人々に愛されてきた、二軒の有名店が在しています。
一軒は、音羽の「護国寺」門前に、大正初期から暖簾を掲げきた和菓子店「群林堂」。【「群林堂」豆大福と豆餅】
出典: もう一軒は、目白台の坂下で、明治中期からパンを焼き続けてきた「関口フランスパン」です。どちらの店も、その味を求めて遠方からのリピーターも多く足を運ぶ人気店です。【「関口フランスパン」の明太子フランス】
出典: 高級住宅街としての印象とは裏腹に、「音羽・目白台」の文化施設は、概ね無料で入場でき、有料であっても、リーズナブルな料金設定です。日がな一日、あちらこちらと立ち寄っても、懐に負担をかけずに、散策が楽しめます。
【入園無料の「文京区立肥後細川庭園」】
出典: さらに、バス、都電、地下鉄、JRと、各種の交通機関に通じているので、アクセスも抜群。都内や近郊に暮らすなら、思い立った時に気軽に足を運べます。
【肥後細川庭園内に建つ「松聲閣」は、見学・休憩ともに無料。休憩室では、リーズナブルな料金で抹茶と茶菓子も頂ける。(2月中旬の「松聲閣」休憩室)】
出典: 本記事では、音羽と目白台界隈の魅力的なスポットを、モデルコースに沿って順に紹介します。記事を参考に、日がな一日気ままな散歩を楽しんで下さい。【5月初旬「水神社」の大銀杏】
1.「音羽」から水と緑の「目白台」へ。散策モデルコース
出典: [東京メトロ有楽町線 護国寺駅]→(徒歩すぐ)→〘大本山 護国寺〙→〈5分〉→〘菓子処 群林堂〙
→〈9分〉→〈〘鳩山会館〙→〈4分〉→〘関口フランスパン本店〙→〈3分〉→〘文京区立 江戸川公園〙
→〈神田川沿いの遊歩道2分〉→〘椿山荘 庭園(冠木門)〙→〈胸突坂 2分〉→〘関口芭蕉庵〙
〈胸突坂 2分〉→〘永青文庫〙→〈1分〉→〘文京区立肥後細川庭園〙→〈4分〉→[都電荒川線 早稲田駅]
※( )内の分数は、参拝や見学所要時間を除く、徒歩移動の所要時間。
護国寺駅~早稲田駅までの、散策モデルコースが示してあります。
護国寺駅から早稲田駅までの総移動時間は、おおよそ30分~40分程度ですが、「護国寺」や「椿山荘」は、敷地が広く、また「鳩山会館」や「永青文庫」、「肥後細川庭園」は見所多く、参拝や見学にはある程度時間を要します。紹介する全ての施設を周るのであれば、ランチを含めてゆったり半日かけて歩くのがお勧めです。
(*本記事で案内する住所地:「音羽」は、「護国寺」が在する文京区大塚5丁目と音羽1,2丁目、「目白台」は、文京区文京区関口2,3丁目、目白台1丁目、豊島区高田1丁目の一部。記事では、便宜上「音羽」「目白台」と表記している。)
出典: ここ「護国寺」は、東京の中で屈指の寺格を誇る名刹の一つです。
江戸幕府・第五代将軍綱吉の生母・桂昌院(けいしょういん)の発願によって、天和元(1681)年に創建された真言宗豊山派の大本山。桂昌院が帰依していた「大聖護国寺(群馬県高崎市)」から亮賢僧正が招かれ開山した寺院です。
【有楽町線・護国寺駅、護国寺方面出口から地上に出たすぐの所に建つ護国寺の「仁王門」。
壮麗な丹塗の門は、元禄10(1697)年建立。伽藍の中でも重要な表門となっている。南側の正面右に阿形(あぎょう)像、左に吽形(うんぎょう)像の二体の仏像、その北側の背面には、増長天と広目天の二天像が安置されている。】
出典: 桂昌院は、京の八百屋の娘として生まれ、数奇な運命を辿り、徳川家光、春日局の寵愛受けて、家光の側室から将軍の母という座に着いた人物です。そうした運命からか、桂昌院は、大変信心深く、数々の寺院を綱吉に建立させています。「護国寺」は、その代表例で、他にも、京都の「智積院(金堂)」の建立や、応仁の乱で焼失した「南禅寺」や「善峯寺」等など、京都の多くの寺院の再建・再興に尽力しています。
【京都・鞍馬寺を基に設計された「不老門」は、昭和13(1938)年4月建立。額面の「不老」の二字は、徳川家達公の筆によるもの。(ツツジ咲5月初旬の「不老門」)】
出典: その篤い信仰心から敢行させた天下の悪法「生類憐れみの令」でも有名となった桂昌院ですが、その強運から“玉の輿”にのった人物として、後世の女性ら憧れる存在ともなっています。【本堂(観音堂)庇内側一部】
(※“玉の輿”は、八百屋の娘だった「玉(後の桂昌院)」が、京都・西陣の大店の養女となり、その後家光に見初められ、「御輿」に乗って京都から江戸へ嫁いだことから生まれた諺と伝わる。但し、その真偽は不明である。)
出典: 北西に向かって深く広がる「護国寺」の境内は、都会の喧騒を忘れるほどに、静穏で、落ち着いた雰囲気です。
見所が多い「護国寺」ですが、寺のハイライトは、二つ。
一つは、「仁王門」先に建つ「不老門」へのアプローチです。特に「不老門」と参道の階段は、絵になる眺めです。春の頃は、桜やツツジが美しく、新緑の頃は、丹塗の門と緑が相俟って実に印象的です。【桜の頃の「不老門」】
出典: 先の「不老門」をくぐり、参道を真っ直ぐ進むと正面にあるのが、もう一つのハイライト「観音堂(本堂)」です。
出典: 都内随一と称される観音堂(本堂)は、広大な境内と相俟って実に壮大。堂々たる伽藍があっても、本堂周囲は、穏やかで安らいだ雰囲気です。一時を過ごすのにお勧めのスポットです。
【元禄10年(1697)の正月に“観音堂新営の幕命”が下りた後、約半年で完成させたと伝わる観音堂(本堂)。関東大震災、第二次世界大戦の大災害をくぐり抜けた都内中心地において、三百有余年の長き歳月を経た木造建築の大伽藍が残っているのは、特筆に値する。(3月下旬枝垂れ桜が見頃の「本堂(観音堂)/重文」)】
出典: 観音堂(本堂)の安置されている本尊は、本堂落成時、桂昌院が持仏としていた『如意輪観世音菩薩』です。その後、秘仏となり、現在安置されているのは「六臂如意輪観世音菩薩像」です。
【随所に江戸・元禄期の建築工芸の粋を感じることが出来る「観音堂(本堂)」内部。秘仏である『如意輪観世音菩薩像』は、護国寺の縁日である毎月18日に御開帳され、本尊開帳法要が行われ、誰でも参加できる。(※本堂内の写真撮影不可)
*六臂像は、六本の手をそなえており、そのうち2本は、如意輪観世音菩薩の由来である「如意宝珠(様々な願いを叶える宝の珠)」と「法輪(仏教の教えが世界に尽きなく巡る輪宝)」を持っている。慈悲深く温かな表情が特徴的である。
本堂を支える52本のケヤキの柱は、元禄期の大商人・紀伊国屋文左衛門が調達したと伝わるが、300年以上の長きに亘って経を聞き続けてきたことから“開運柱”、“抱きつき柱”と呼ばれ、抱きついて願えば、願い事が叶うと伝わる。】
出典: 「護国寺」は、広大な敷地を誇る名刹だけに、見所が沢山あります。
境内には、元禄4年建立された「薬師堂」、江戸中期建立と伝わる袴腰付重層入母屋造の「鐘楼」、大仏如来像を安置した「多宝塔」、桃山期の書院様式を伝える「月光殿(重文)」等など、美術、建築、歴史的にも価値の高い貴重な建物が点在しています。
【八重桜咲く4月初旬の「多宝塔」】
出典: また、桂昌院が寄進した手水舎「唐銅蓮葉形手洗水盤一対二基」や「身代り地蔵尊」、「六地蔵尊」や「大仏」等など、堂宇以外の見所も多く、“一言だけ願い事を聞く”という「一言地蔵尊」といったパワースポットも広い境内に点在しています。【柔和な表情が魅力的な「大仏(釈迦如来坐像」】
出典: 「護国寺」は、多くの著名人が眠る寺院としも有名です。北側墓地には、大倉財閥の創始者大倉喜八郎、明治初期に招聘された建築家・ジョサイア・コンドル、公卿・政治家の三条実美、早稲田の創始者・大隈重信等など、多くの偉人らの墓があります。【後に紹介する「椿山荘」の主、明治の元勲・山縣有朋が眠る墓】
出典: 都内のパワースポットで、密かな人気を集めているのが、「護国寺」境内にある“音羽富士”です。
「音羽富士」は、都内に幾つもある富士塚の一つ。ここの富士塚は、寺院の中にあり、また200年前に造られた当時のままに残っているのが珍しく人気をよんでいます。標高は7mで、頂上まで片道3分。今も江戸庶民さながらに“富士登山”を楽しむことが出来ます。
【本堂近くにある、春の頃の「音羽富士」の入口。先に進むと、合目を表した石碑や、御胎内など、“富士山信仰”に欠かせないアイテムが配置され、頂上には「浅間神社」の石柱と祠が据えられている。】
出典: 「護国寺」では、地元名士や芸能人らによる節分会、花祭り、彼岸会等、誰でも参加できる年中行事が催され、毎月18日には御開帳の本尊開帳法要も行われています。
また寺の行事ではありませんが、外国人や玄人筋が多く集まることで有名な「骨董市」も開催されています。毎月第二土曜日の開催で、約50店舗が出店して賑わいます。【2019年5月開催の「骨董市」】
出典: 堂々たる伽藍と堂宇が点在する名刹でも、ここ「護国寺」は、厳粛な場所というよりも、地域に根付いた“癒やしの場”。古くから猫が多く住み着いているように、境内はいたって静かで穏やか。寺社仏閣巡りに興味がなくても、のんびりと過ごすのにお勧めのスポットです。
出典: ゆったり歩いて周り、境内の好む場所に佇んで、のどかで穏やかな雰囲気を味わいましょう。
出典: 「群林堂」は、東京三大“豆大福”の一つに数えられる名店です。知る人ぞ知るというよりも、和菓子好きなら誰もが一度は耳にしたことがある超有名店です。
といっても、大福の専門店というわけではなく、正真正銘、昔ながらの和菓子店です。創業は、大正5年。ここ音羽の地で、百有余年もの長きに亘って愛されてきた、護国寺門前の老舗です。【手前『豆大福』・奥『豆餅』】
出典: 護国寺駅から徒歩1分程の「群林堂」は、遠目でも分かる程に行列が目印。
近隣のみならず、遥か遠方からその味を楽しみに訪れる人が多く、行列が見えなかったら、店が定休日か、“豆大福”が売り切れかのどちらか。それ程までに“豆大福”で人気を博している和菓子店です。
出典: 本来、生和菓子は、日持ちせず、作ってから時間と共に劣化していくものです。
“売り切れ”が出てしまうのは、美味で人気に他なりませんが、それは、「群林堂」の『豆大福』が、添加物を用いず、昔ながらの製法で作っている証でもあります。
人にはそれぞれに好みはありますが、「豆大福」の醍醐味は、“搗きたて”の餅・塩味の赤えんどう豆・甘味のあずき餡が、三位一体となったところにあります。その美味しさを、きっちりと味わうのなら、やはり出来たてを買い求め、時間が経たぬ内に、口に入れてしまうのが一番!です。
出典: 「群林堂」の豆大福は、薄い餅生地の中に、つぶ餡がぎっしりと詰まっています。
つぶ餡は、小豆の粒が残りつつも、口当たり良く、滑らか。甘みも丁度良く、豆の塩気とのバランスが絶妙です。
『豆大福』の賞味期限は、販売当日のみ。店の営業時間は、朝の9時半から。
『豆大福』は、昼頃までにはほとんど売り切れてしまいますが、営業前から並んでも、昼前に並んでも、購入できる限度数は一緒です。売り切れが心配なら、護国寺参拝は後にして、駅を降り立ったら、一直線に店を目指しましょう。
出典: 『豆大福』が売り切れても、店内には、無添加手作りの、昔ながらの生和菓子が並んでいます。お勧めは「群林堂」ならではの『栗蒸し羊羹』と『かのこ』。
どちらも、素朴な見た目でも、味わいは上品。
鹿の子も羊羹も、硬すぎず、柔らかすぎずの絶妙な食感で、舌触りも滑らか。豆の風味が生きたほどよい甘みです。和菓子や甘味を好まない人でも、一つ、二つと飽きずに頂けます。
【画像上から『豆大福』、中央左『栗蒸し羊羹』、中央右『かのこ』、右下は粒餡、こし餡が選べる『桜餅』】
護国寺 / 和菓子
- 住所
- 文京区音羽2-1-2
- 営業時間
- 9:30~17:00
- 定休日
- 月曜・日曜
- 平均予算
- ~¥999 /~¥999
データ提供: 出典: 大福の生地は、一般的に、餅か、求肥を用います。それぞれに長短があり、好みが分かれるところです。特徴を知ってそれぞれの味わいを楽しみましょう。
●求肥:
賞味期限が数日ある餅菓子の生地、滑らかな食味を大事にする和菓子は、ほとんど“求肥”が用いられています。「求肥」は、餅米の粉に水や砂糖等を加えて練り上げて作り上げるもので、水・茹で・蒸しと“練り方”で異なりますが、時間が経過しても硬くならないという特徴があります。
●餅:
餅生地は、シンプルに蒸した餅米を搗き上げて作られます。しっかりと搗き上げた餅は、伸びやかで滑らかです。柔らかながらも、粘りとコシがあり、穀物本来の旨味や餅米特有の香りが味わえます。しかし餅は、時間の経過とともに、冷え固まり、それとともにデンプンが老化し、その美味しさが急速に失われていきます。
ご飯を温め直したり、パンや餅を焼けば、再びでんぷん質が変化し美味しく味わえるのは、誰もが経験的にご存知のとおりです。しかし和菓子となると、ご飯のように元の味わいをトータルで復活させることは出来ません。
それでも食べ時を失って、餅生地が硬くなってしまった場合は、焼き網やトースター使って焼いてみましょう。当初のものとは別の味わいになりますが、餅は柔らかになり、表面が焦げた香ばしさも加わって美味しく頂けます。
出典: 音羽の小高い丘に建つ「旧鳩山一郎邸」、別名“音羽御殿”は、関東大震災翌年に建てられた元総理大臣であった鳩山一郎の私邸です。
【鳩山家は、一郎の父・和夫から、一郎、威一郎、由紀夫、邦夫と、四代にもわたって著名的な政治家を輩出した政治一家。(敷地高台に建つ邸宅・車寄せ付きの正面玄関。車寄せ屋根は2階のバルコニーとなっている。その上部の壁面には鹿の頭が中央に、鳩山家のシンボル“鳩”のレリーフが左右に装飾されている。)】
出典: 鳩山家が当地に居を構えたのは、明治24(1891)年。関東大震災の翌年の1924年に完成した屋敷は、発足当初の自由民主党(元自由党)の重要な会合など、数々の史上有名な政治舞台となったことで知られています。
現在は、1995年の大修復工事を経て、一部改修があるものの、往時そのままに復元され、「鳩山会館」として一般公開されています。【音羽通りに面する「鳩山会館」の入口】
出典: 「鳩山会館」の入口は、先の「群林堂」から、音羽通りを江戸川橋方向へ歩いて7,8分。音羽通りに接する入口から、広やかなアプローチを4,5分程上ると、洋館の邸宅へと到着します。【6月下旬の「鳩山会館」玄関からのアプローチ】
出典: 大正期を代表する住宅建築として名高い「鳩山会館」。その見所は様々にありますが、“バラとステンドグラスの鳩山会館”という当館のキャッチコピーの通り、見所の第一は、約150株にもおよぶ薔薇が植えられた英国風庭園です。
【5月中旬の洋館と庭園】
出典: 春と秋のバラ咲く頃は、薔薇と洋館、英国風に整えられた庭園の“山の手”らしい格別な景観を楽しみに、例年多くの人々が来訪します。庭園には桜も植樹され、毎年4月初旬には、政界の重要人物が多く集まる「観桜会」が開催されています。
バラの見頃は、例年5月半ば~6月初旬頃(春バラ)、10月半ば~11月初旬頃(秋バラ)。桜の見頃は、他の東京地域に同じで、3月中旬~4月初旬頃です。【5月下旬の「鳩山会館」英国風庭園】
出典: 庭園やバラも素晴らしいですが、「鳩山会館」の一番の見所は、やはり洋館の屋敷です。
設計に携わったのは、一郎の東大で同窓だった岡田信一郎。銀座歌舞伎座や、明治生命館等など手掛け、近代日本建築を牽引した名建築家の一人です。【1階の東側の応接間】
出典: 鳩山邸は、地上2階、地下1階の鉄筋コンクリート造。人造石や煉瓦タイルで装飾された壁面、アーチや矩形のバランス良く配置させた開口部、鹿の頭や鳩といった外部装飾等など、特徴ある建築様式や遊び心を随所に取り入れ、柔らかで穏やか、瀟洒な雰囲気を演出しています。【1階食堂とサンルーム】
出典: 建築内部の見所は、応接・居間・食堂の三部屋。照明器具や家具、美術品といった調度品も上品で素晴らしいですが、部屋それぞれには、床、壁面、天井と随所に細やかな工夫が凝らされ、様々なスタイルでデザインされています。
【ランプシェードの影も美しい邸内「玄関ホール」】
出典: 外部と内部の繋がりも良く、室内と庭園の間には、外光が良く入る「サンルーム」が設置され、当屋敷を特徴づけています。「サンルーム」では、見学者も当時そのままの気分で休憩出来ます。
【小川三知作のステンドグラスが嵌め込まれた「サンルーム」の仕切りガラス戸。】
出典: 邸内の中で見逃せないのは、やはり“ステンドグラス”。
当邸のステンドグラスを製作したのは、米国ティファニー社で修行を積んだ、工芸家・小川三知(おがわさんち/1867-1928)。大正から昭和初期に活躍した人物で、日本におけるステンドグラスの草分け的な存在です。日本画家・橋本雅邦に学んだ三知らしく、どの作品も日本の情緒が感じられるのが特徴的です。
出典: ここ「鳩山会館」は、いわば、小川三知作品の宝庫。
それほどまでに、小川の制作したステンドグラスが状態が良いままに数多く残り、今も色鮮やかに光を透過し続けています。
階段踊り場の一番大きな『五重塔と鳩』の他、応接室やサンルーム、玄関ホールにも、鳩山家のシンボルマーク“鳩”などをモチーフとした作品が嵌め込まれています。
出典: 様々な西洋の建築様式が取り込まれ、随所に遊び心が散りばめられた鳩山邸は、総じて上品で明るい印象で、伸びやかな休日を過ごすのにお勧めのスポットです。【邸内1階「第二応接室」】
5.フランスパン発祥の店「関口フランスパン 本店」
出典: 「関口フランスパン」は、日本で初めて本格的フランスパンを製造販売した老舗ベーカリーです。
邦画「寅さん」にも登場し、食通でも知られる世界的映画監督・小津安二郎が贔屓にしたことでも知られ、今もなお多くの人々に支持されている人気店です。【目白坂にあるニチバン本社ビル1階の「関口フランスパン 本店」】
出典: 現代的な店構えとは裏腹に、「関口」の歴史は古く、明治21(1888)年に、小石川関口教会(現:関口教会)付属の聖母仏語学校製パン部として誕生したのが店の始まりです。
今も「関口」に伝わるフランスパンの製法は、創業前の明治中期に、教会が*仏印へ送り出した孤児院の子供が、現地で修行の上身に付けたものです。【夕方前には売り切れるフランスパンが並ぶコーナー。*仏印:フランス領インドシナ】
出典: 多くの人々に愛され、名店として支持されてきたのは、「関口」が継承してきたフランスパンの味わいに他なりません。
「関口」では、バゲットやファイセルといった伝統的なフランスパンは、蒸気をかけ一気に高温で焼き上げ、創業当時の味わい大切に守り継いでいます。
【黒豆と抹茶を練り込んだ和風テイスト『抹茶バケット』】
出典: 「関口」のフランスパンは、パリッとしながらもクラストは薄めで香ばしく、むっちりと心地良い弾力があるクラムは、しっとりして、噛む程に穀物の甘みが広がります。翌日でも美味しく頂ける軟らかさがあり、トーストすると、焼きたての美味しさが復活すると評判です。【明治期からの製法で焼き上げている「フランスパン」】
出典: 「関口」で特徴的なのが、販売しているパンの種類の多さ。フランスパン発祥店でも、その看板に甘んぜず、創意工夫を凝らし、バラエティ豊かに、日々焼きたてパンを並べています。
【販売されているパン、ドリンクは、店内イートインスペースで自由に頂くことが出来る。(画像は、自家製カスタードクリームがたっぷり詰まった『シューデニッシュ』、サクサクふんわりのパンとマイルドなカレーが絶妙と人気の『カレードーナッツ』。)】
出典: 食パンやロールパンといった食事パン各種の他、サンドイッチや惣菜パンも揃い、デニッシュ系、ドーナッツ類、菓子パン類も、種類豊富で色とりどりです。さらに唐揚げやハッシュポテト等の惣菜、ピザなどもあり、目移りするほど様々な種類のパンが店内にずらりと並んでいます。
出典: もちろんお勧めは、創業以来の伝統味であるフランスパン、『バゲット』や『ガレット』。散策のお供やランチで頂くのなら、フランスパン生地の『ソーセージフランス』や『明太子フランス』、『ピーナッツフランス』等など。お土産なら『低温冷蔵長時間発酵バゲット』や『ハードトースト』といった食事パンです。
出典: 評判なのが、種類豊富なサンドイッチ。食パン、ロールパン、バゲットなど、使用するパンも、また挟まれている具も種類豊富で、実にバラエティに富んでいます。特に目を引くのが、海老カツやチキンカツ、コロッケを挟んだボリューミーなサンドイッチ。揚げたてなので、衣サクサクで、美味しいと評判です。
【サンドイッチ、菓子パン様々に並ぶ店内。ハードなフランスパンも様々にあるが、子供や高齢者でも食べやすい“ソフトフランス”も豊富な品揃え。右下は子供に人気の『クリームパンダ・チョココアラ』】
出典: 素晴らしいのは、店内の広いイートインスペース。
外光入る明るいスペースでは、店内に並ぶ焼き立てパンの他、『クラブハウスサンド』や『オニオングラタンスープ』など、オーダーメイドのメニューや、各種ドリンク、アルコール類も頂けます。外の緑も眺められ、簡易なイートインでも上質な時間が過ごせます。
【トマトや照り焼きチキンなど、様々な具材を贅沢に挟んだ、人気のオーダーメニュー『クラブハウスサンドイッチ』。ボリューミィで食べごたえがあり、満足する一皿と評判。オーダーメニューも、テイクアウト可。】
出典: 本店は、平日も休日も8時から営業し、朝の時間帯では、焼き立てのトーストとドリンクのモーニングセットも頂けます。
【イートインスペースの奥には、椿山荘に接するテラス席がある。画像のドリンクは『抹茶フラペチーノ』】
江戸川橋 / パン
- 住所
- 文京区関口2-3-3 目白坂STビル 1F
- 営業時間
- [月]
08:00 - 18:00
[火]
08:00 - 18:00
[水]
08:00 - 18:00
[木]
08:00 - 18:00
[金]
08:00 - 18:00
[土]
08:00 - 18:00
[日]
08:00 - 17:00
[祝日]
08:00 - 17:00
【定休日】
12/31~1/4
- 定休日
- 平均予算
- ~¥999
データ提供: 出典: 「関口フランスパン」には、関口の本店以外にも姉妹店が近隣にあります。場所は、本店から歩いて10分程、有楽町線「江戸川橋駅」すぐに店舗があります。
店名の“パティスリーダノワーズとは、フランス語でデニッシュペストリーのこと”。デニッシュ系のパンに力を入れた、地域密着型の店舗です。当店舗にも明るいイートインスペースがあり、その場でゆったり頂けます。
【デニッシュペストリー系を中心に、関口の主力商品も種類豊富に並ぶ店内。】
江戸川橋 / パン
- 住所
- 文京区関口1-18-6
- 営業時間
- [月]
07:00 - 20:00
[火]
07:00 - 20:00
[水]
07:00 - 20:00
[木]
07:00 - 20:00
[金]
07:00 - 20:00
[土]
07:00 - 18:00
[日]
07:00 - 18:00
[祝日]
07:00 - 18:00
- 定休日
- 平均予算
- ~¥999 /~¥999
データ提供: ※姉妹店「パティスリーダノワーズ店」は、本店より一時間早い営業です。
出典: 目白台斜面下の神田川沿いは、桜並木が続く「神田川遊歩道」で良く知られています。
【神田川沿いの遊歩道(胸突坂・駒塚橋付近)】
出典: 中でも、関口の「江戸川公園」から「面影橋」までの川沿いの道は、「椿山荘」や「肥後細川庭園」といった江戸屋敷の風情と、豊かな緑が相俟って気持ち良く、散策にお勧めです【目白台下・神田川沿い遊歩道】
出典: 桜の頃は、花枝が神田川に迫り出して広がり、実に見事で華やか。都内の桜の名所の一つで花の頃は賑わいますが、目黒川沿いほど混まず、お勧めのスポットです。【江戸川公園近辺の神田川】
出典: 今記事では、音羽から目白台(音羽の護国寺駅~都電早稲田駅)までの散策コースを案内していますが、有楽町線江戸川橋駅を起点にして、神田川沿いだけをのんびり歩くのもお勧めです。【神田川沿い、関口・目白台周辺の案内図。】
出典: 桜の季節なら、「早稲田駅」の一つ先「面影橋駅」まで歩くのがお勧めです。神田川に架かる橋上から、トンネル状に続く桜の絶景が眺められます。【満開の桜の頃の神田川・仲之橋近辺】
出典: 神田川川沿いに細長く伸びる「江戸川公園」は、かつてあった神田上水の堰(せき/川水をせき止める所)を保存するために大正期に造られた公園です。【関口台地南斜面の雑木林に設置された空中遊歩道】
出典: 公園名に“江戸川”とあるのは、かつてこの界隈の神田川が“江戸川”と呼ばれていたため、その名が付けられています。
【4月下旬の「江戸川公園」内の藤棚】
出典: 神田川の遊歩道に沿いには、石の広場や四阿(あずまや)、藤棚のテラスなど腰を下ろせる場が点在しているので、散策疲れを癒やすのにお勧め。緑も多く、桜の季節以外は、概ね静かなので、持参のおやつやランチをゆったりと頂くのにも、うってつけのスポットです。【晩夏の緑に埋もれたた園内「四阿(あずまや)」とテラス】
出典: 都内屈指の式場、高級ホテルとして知られる「椿山荘」は、明治維新で活躍した山縣有朋の元屋敷です。
神田川に接し「関口台地」上にある「椿山荘」周辺は、起伏に富み、幕府が開く以前から、自然豊かな田園地帯だった場所です。中でも、現在「椿山荘」が建つ周囲は、“つばきやま”と呼ばれる程に“椿”が群生し、風光明媚な景勝地として知られていました。
【2万坪にも及ぶ広大な敷地には、約100種類1000株もの椿が植生され、晩秋から春先まで、様々な椿が咲き継いで、庭園彩る。】
出典: 江戸期に入り、町が広がるにつれて関口台地の田園地帯も切り開かれ、当地一帯は大名屋敷や武家屋敷が連なる御屋敷街となり、「椿山荘」が建つ当地は、久留里藩(現:千葉君津市)黒田家の下屋敷となっていました。
【7月初旬の「椿山荘」庭園。】
出典: 武家屋敷が次々と手放されていった明治に入り、元勲・山縣有朋が、1万8000坪の敷地を私財を投じて当地を入手。邸宅と庭園を造り「椿山荘」と命名しました。大正期以後は、大阪・藤田財閥の二代目の別邸となり、戦後は、藤田興行が結婚式場として復興し、現在は藤田観光が「ホテル椿山荘東京」として営業を行っています。
【紅葉も名高い「椿山荘」庭園】
出典: 「椿山荘」の素晴らしさは、関口の台地の崖線地形と豊かな自然を生かした日本庭園です。
茶道にも作庭にも造詣深く、和歌を嗜んでいた山縣と、名庭師・岩本吾郎が手掛けた庭園は、京都の「無鄰菴」、小田原の「古稀庵」と共に“山縣三名園”として知られています。【4月初旬の桜の頃の「椿山荘」庭園】
出典: 「椿山荘」の庭園は、式場利用者やホテル宿泊者でなくても、“入場無料”で、ゆったり庭園鑑賞が出来ます。
ホテルの入口からも庭園に入れますが、「江戸川公園」から歩くのなら、神田川沿いの「冠木門」から入るのが便利です。目白通りからなら、3階正面フロント前のエスカレーターを利用し、1階から庭園へ入りましょう。
出典: 当庭園は、「林泉回遊式庭園」と呼ばれる庭園様式です。
かつて「つばきやま」と呼ばれた地形を生かした園路を進めば、起伏に富んだ景観、水や緑が織りなす様々な景色を楽しめます。
【*林泉回遊式庭園:池や築山、曲水や樹林など、移り変わる景色を眺めながら一回りすると、一巻の絵巻物を見終えるという庭園様式(5月中旬の園内散策路)】
出典: 庭園内には史跡が多く、東京の“*三古塔”と呼称される「三重塔」は、大正14年に「篁山竹林寺(たかむらやまちくりんじ/東広島市)」から移築したもので、国登録有形文化財に登録されています。
【4月初旬桜の頃の園内・三重塔付近(他二つ三重塔は「旧寛永寺五重塔」と「池上本門寺五重塔」)】
出典: その他にも、十三重石塔、七福神、庚申塔等など見所が数多く点在し、樹齢約500年の椎木の御神木や白玉稲荷神社といったパワースポットもあり、人気です。
【園内に置かれる江戸の画家・伊藤若冲下絵による羅漢】
出典: 園内には、1000株の椿だけでなく、桜も種々様々に植えられ、紅葉時も美しく、四季折々に、情緒ある景色を楽しむことが出来ます。
8.山の手風情を味わって。 胸突坂・水神社・関口芭蕉庵
出典: 「胸突坂」は、「椿山荘」と「肥後細川庭園」の間、神田川沿いの歩道から目白通りへと向かう急坂です。
“胸を突く”ように歩かなければ上れないことから坂の名前が付いていますが、階段と手すりが整備され、途中には腰掛けられる休憩スペースもあるので、印象とは異なって歩きやすい坂道です。
出典: 「胸突坂」には、「水神社」や「関口芭蕉庵」、「永青文庫」など、古くからの樹木や建物を良く残した魅力的な散策スポットがあるので、勾配にひるまず上ってみましょう。良い運動になるだけでなく、山の手ならではの景観、風情もたっぷりと楽しめます。【標高14mの「胸突坂」】
出典: 神田川から「胸突坂」の途中、西側にあるのは、「水神社」。神田上水が開かれてから「関口水門」の守護神として祀らえてきた神社です。
出典: 小さな祠状の社殿があるだけの小さな神社ですが、素晴らしいのが、立派な枝ぶりの二本の大銀杏です。晩秋の頃なると、辺り一面を真っ黄色に染め上げ、見事な景色となります。【神社境内に立つ新緑の大銀杏(文京区保護樹林)】
出典: 「関口芭蕉庵」は、その名の通り、江戸の俳人・松尾芭蕉ゆかりの庵。
ここは、芭蕉が二度目に江戸入りした後の3年間、神田上水の改修工事に関わった当時住んだと伝わる場所です。後になって、芭蕉を慕う人々によって「龍隠庵」という家が建てられ、それが当庵の元となっています。
【「関口芭蕉庵」の正門は神田川沿いだが、通常は胸突坂途中の裏口(画像)が出入り口となっている。入場無料。月・火・年末年始が休庵日。】
出典: 「芭蕉庵」の魅力は、ひっそりとした静けさ。“明治の佇まいを残すように作庭当時の自然石を使用した”園路を進めば、都心部とは思えないほどの深い緑と静寂さを味わうことが出来ます。【4月初旬の「関口芭蕉庵」庭園】
出典: 【「瓢箪池」を挟んで建つ「芭蕉庵」と「芭蕉堂」の二つの建物は、戦後再建されたものだが、周囲の環境と相俟って、明治期の風情を感じることが出来る。(画像は、胸突坂入口傍の「芭蕉庵」。中には、腰を下ろして休める休憩室がある。)】
出典: 散策路の途上には、芭蕉の句碑や塚が所々に配されています。取り立てて俳句好きでなくても、心躍る句碑もあるので、周りながら、ぜひ句碑を見てみましょう。【庵内『ふる池や蛙飛こむ水のをと』の句碑】
出典: 「関口芭蕉庵」から急勾配の胸突坂の階段を上りきった先の右手に佇む「永青文庫」は、旧熊本藩細川家・第16代細川護立によって設立された、細川家伝来の所蔵品を展示する施設です。
出典: 当地は、後述する「肥後細川庭園」と併せて、幕末から戦後にかけて細川家の屋敷があった場所で、「永青文庫」は、その広大な敷地の一角に位置しています。胸突坂の入口が正門ですが、細川庭園と地続きですので、庭園側からも入ることが出来ます。
【「永青文庫」と「肥後細川庭園」を繋ぐ通路上にあるアーチ状の石のオブジェ】
出典: 細川家は、代々文武両道に優れた家系。
多くの戦功を挙げ、三代・忠利の時代に肥後熊本五十四万石を与えられて外様大名として幕末まで至っています。
教養にも優れた細川家らしく、伝来の所蔵品は、歴史資料や文化財、美術品や工芸品等など、国宝8点、重要文化財32点を含み、その数約9万4千点にも及びます。
数、質共に、公的美術館や博物館に匹敵する秀逸な文庫ですので、美術や歴史、考古に興味にある方は、ぜひ立ち寄ってみましょう。
出典: 茶道具、書画、武具、漆工芸、文学等など、多岐にわたり一級品を所蔵していますが、当館では、年に4回、美術工芸品の展示を中心とした展覧会を企画開催しています。
当館の魅力は、所蔵品と趣が異なる“洋館”とその風情にもあります。瀟洒な住宅街に相応しく、佇まいが素晴らしく、中の展示室も落ち着いた雰囲気です。(館内の撮影不可)【2015年秋開催『春画展』時の「永青文庫」】
10.大名気分を味わいに。「文京区立肥後細川庭園」
出典: 「文京区立肥後細川庭園」は、幕末に肥後細川家の*下屋敷の庭園を利用して誕生した“入場無料”の公園です。
【「肥後細川庭園」正門】
(※下屋敷とは、別荘のようなもの。細川家の“上屋敷(本宅)”は、現在の東京駅丸の内北口辺り。「丸の内OAZO」は、その跡地に建てられたもので、エントランスホールには、屋敷の配置を示した線刻がデザインされている。)
出典: 明治中期に細川家の本邸となった後、昭和35(1960)年に都が買収、翌年「新江戸川公園」として開園。昭和50年に文京区所管の公園となり、2017年に「文京区立肥後細川庭園」として生まれ変わりました。
【園内南中央部に広がる「大池」(正面は「松聲閣」】
出典: 当園は、崖下の湧水と、関口台地から神田川へと至る地形を上手く活かした「池泉回遊式庭園」です。1万8500平米にも及ぶ敷地面積を誇る当園の魅力は、都心部とは思えないほどに豊かな緑と起伏に富んだ自然景観、そして情緒ある景色を楽しめることです。【5月中旬の「肥後細川庭園」】
出典: 山に見立てた緑濃い台地の下には、中島や筑山、土橋や石橋、船着石や雪見灯籠等などが配置された大池があり、椿や芍薬、花菖蒲や山茶花といった肥後の花々や、紅葉が美しいヤマモミジやエノキも植えられています。池周囲、台地斜面に巡らせた園路を周れば、四季折々、立体的で情感豊かな景観をゆったりと味わえます。【花菖蒲咲く頃6月の園内】
大名さながらに、茶を一服。「松聲閣(しょうせいかく)」
出典: 正門近くに建つ「松聲閣(しょうせいかく)」は、細川家の学問所として活用され、一時は細川家の住宅として使われていた建物です。保存修復を経て、現在は文京区の貸出施設としてリニューアルオープンしています。2階の展望所、1階の休憩室「椿」は、誰もが自由に利用可能です。
出典: 「松聲閣」の窓からは、園内が一望でき、大名さながらの気分を味わえます。「松聲閣」にも手水鉢や水琴窟、飛び石が配された庭があり、情緒豊か。
出典: 庭の景色を眺めながら、肥後銘菓と共に御抹茶や飲み物をリーズナブルな料金で頂くことが出来るので、散策の休憩がてら立ち寄ってみましょう。
【熊本銘菓『加勢以多(かせいた)』付きの「お抹茶セット」。『加勢以多』は、かりんのジャムをもち粉のおぼろ種で挟んだ、細川家秘伝の伝統菓子を復元したもの。ほのかな甘酸っぱい味わいが特徴。表面に焼き付けられた模様は、細川家の家紋「九曜紋」。】
早稲田(都電) / その他
- 住所
- 文京区目白台1-1-22 肥後細川庭園
- 営業時間
- [月]
09:00 - 17:00
[火]
09:00 - 17:00
[水]
09:00 - 17:00
[木]
09:00 - 17:00
[金]
09:00 - 17:00
[土]
09:00 - 17:00
[日]
09:00 - 17:00
- 定休日
- 平均予算
- ~¥999
データ提供: 出典: 園内には、先に紹介した「永青文庫」へ通じる通路もあり、「胸突坂」を経由せずとも入館することが出来ます。
出典: 浅草や深川、柴又といった下町も、江戸庶民の粋が感じられて面白いですが、山の手界隈に流れる独特の風情も捨てがたいものがあります。
中でも、音羽や目白台界隈には、江戸から近代、そして現代へと、文化的にも経済的にも恵まれた人々によって連綿と受け継がれてきた文教地区ならではの風情があります。【4月下旬「肥後細川庭園」近隣に咲く八重桜。】
出典: そして、都心部とは思えないほどに、緑豊かで自然豊か。閑静で、心静かな一時が過ごせる場所です。
思い立ったら、ぜひ出掛けてみて下さい。江戸・東京の、素晴らしい一面を、きっと発見するはずです。
【晩春の「護国寺」境内参道】
【音羽「鳩山会館」】