奈良県の北東部に位置する曽爾村は、『古事記』では「蘇邇」、『日本書紀』では「素珥山」の記述で現れる古い歴史を持つ村です。

夏でも涼しい冷涼多雨の気候に恵まれた曽爾村は、都会の喧騒とは無縁です。曽爾村では、古くから受け継がれた伝統と雄大な自然に囲まれており、どこか懐かしい佇まいをしています。

曽爾村を代表する景勝地の一つ、「曽爾高原」は、日本有数のススキの名所です。なだらかな山の傾斜地は、果てしなく続くススキ野原となっており、ここでは忙しい日常生活とは別世界が広がっています。

空気が澄んだ曽爾村では、日が暮れると空は満天の星空となります。漆黒の闇に星々が煌めく曽爾村の夜空は、藍色のベルベットに宝石を散りばめたかのような美しさです。

曽爾高原は、標高1038メートルの倶留尊山と、標高849メートルの亀山を結ぶ尾根から西麓に広がる高原です。春の山焼きが終わった後から夏頃にかけて、曽爾高原は緑の絨毯を敷き詰めたかのような姿となります。

日本を代表するススキの名所として知られている曽爾高原では、秋になると一面のススキ野原となります。陽射しを浴びて銀色に輝くススキの穂は、風が吹く度に揺れ動き、幻想的な景色へと変貌します。

曽爾高原での夕景の美しさは傑出しています。沈みゆく夕陽、陽射しを浴びて金色に輝くススキの穂が織りなす景色は、絶景そのものです。

ススキが見頃を迎える秋になると、曽爾高原では日が暮れると「山灯り」が燈されます。心地よい高原の夜風に吹かれながら、ススキの葉擦れ音に耳を澄ませ、やさしく燈された灯りを頼りに夜の曽爾高原を散策してみるのもおすすめです。

国の天然記念物に指定されている屏風岩は、高さ200メートルに及ぶ柱状節理の断崖です。屏風岩麓の屏風岩公苑は、桜の名所としても知られており、春が訪れる頃になると樹齢100年を超えるヤマザクラが咲き誇ります。

桜の開花時期に合わせて、屏風岩ではライトアップが開催されます。桜と、柱状節理の断崖が光を浴びて世闇に浮かび上がり、周囲は幻想的な雰囲気に包まれます。

垂直にそびえたつ高さ約200メートルの断崖が連なる小太郎岩は、日本百景の一つに数えられる景勝地です。雄々しい岩肌の中腹には、「ライオン岩」と呼ばれるライオンの彫像のような岩壁があります。

エメラルドグリーンに輝く淵、無数に点在する大小の岩、緑の苔に覆われた岩壁が織りなす横輪川沿いの渓谷には、落差27メートル、幅6メートルの済浄坊の滝があります。高原を吹き抜ける爽やかな風に吹かれ、心地よい清流のせせらぎに耳を澄ませながら深緑の渓谷を歩く気持ちよさは格別です。