「ありそうでない」がキーワード
水縞の文房具は、ストレートではなく変化球。単純に「かわいい」というものではなく、「渋さ」や「ユーモア」などが微妙なさじ加減で足されています。味わうほどにうまみが出るような魅力に溢れ、気づけば虜になってしまうのです。
「ファンシーやラブリーな感じというよりは、渋かわいいというか、落ち着き感があるものを作りたいと思っています」
「ファンシーやラブリーな感じというよりは、渋かわいいというか、落ち着き感があるものを作りたいと思っています」
お話してくれたのは、「水玉担当」でプロダクトデザインを担当している植木明日子さん。水玉担当にふさわしく、この日も水玉ファッションで出迎えてくれました。ほがらかな笑顔が周りを明るい気持ちにさせてくれる、陽だまりのような女性です。「縞々担当」でディレクションを担当している村上さんは、出産の準備ということで現在は京都に帰省中。そして、なんと植木さんも7月に出産予定という身重の身。「ふたりとも同じタイミングで授かるなんて不思議ですよね~」と植木さんが再びのほほんと笑います。
息がぴたりと合うふたり。水縞の誕生も初めての出会いから、するりするりと決まっていきました。
息がぴたりと合うふたり。水縞の誕生も初めての出会いから、するりするりと決まっていきました。
こちらの「水縞のし」は、通常水縞では使わないピンク色やハートを密かに使った紙を小さく切って使ったところがポイント。
水縞のはじまり。それは、植木さんが吉祥寺にある文房具のお店「36 Sublo」に行ったことがきっかけでした。
「近所の大好きなお店という感覚でよく遊びに行ってたんです」
好きなものが似ていたふたりは出会ってすぐに意気投合。その後、植木さんのブランド「プルンニー」の商品を36 Subloで取り扱うようになり、次第にものづくりの仲間として、何か一緒にやれないかということを考えはじめたそうです。
「実際にスタートするにあたり、どうしようかといろいろと案を出していたんですけれど、その当時、私がよくタイに行っていて。お土産に文房具を買って、村上にあげる度に『これは日本にないからおもしろい』と、いろんな反応をしてくれて。さすがプロの反応は違うなぁって感じたんです。そこで村上とタイに行ったらもっと面白いものが見つかるかも知れないと思ったんです」
一緒にタイへ旅立ったふたりが見つけたのが、ちょっと厚みのあるカラフルなテープ。まだ日本でマスキングテープが注目されていなかった当時、紙のテープはめずらしいものでした。
「近所の大好きなお店という感覚でよく遊びに行ってたんです」
好きなものが似ていたふたりは出会ってすぐに意気投合。その後、植木さんのブランド「プルンニー」の商品を36 Subloで取り扱うようになり、次第にものづくりの仲間として、何か一緒にやれないかということを考えはじめたそうです。
「実際にスタートするにあたり、どうしようかといろいろと案を出していたんですけれど、その当時、私がよくタイに行っていて。お土産に文房具を買って、村上にあげる度に『これは日本にないからおもしろい』と、いろんな反応をしてくれて。さすがプロの反応は違うなぁって感じたんです。そこで村上とタイに行ったらもっと面白いものが見つかるかも知れないと思ったんです」
一緒にタイへ旅立ったふたりが見つけたのが、ちょっと厚みのあるカラフルなテープ。まだ日本でマスキングテープが注目されていなかった当時、紙のテープはめずらしいものでした。
水縞がスタートするきっかけになった紙テープ。現在は販売終了。
「これはいい!輸入して日本で売ってみたい!これを一緒にやろう!ということになり、水縞ができました」
初めて出会ってからここまで、約一年半の間に起こった出来事。それから少しずつオリジナルの商品を増やしていき「水縞」の表現したい世界が世の中に広がっていきました。
「最初から今でも水縞で大事にしたい部分はお互い通じ合っていて、言葉に出さなくても表現したいものが分かり合えるんですよね。これはそう、これは違う、みたいなことが自然にできていて。不思議ですよね、それはずっと崩れることはありません」
ふたりだから分かり合えること、つまり水縞が大事にしていることを、あえて言葉にしてもらいました。植木さんは「あまり話し合ったことないからな~」と少しはにかみながらこんな風に教えてくれました。
「一言でいうのは難しいんですけど、“ありそうでない”というのが私たちのキーワードなんです。“ありそう”というのは、みんなが欲しいものということ。それが、“ない”というのは、技術的に作れないとか、何らかのクリアされない理由があるからだと思うんです。“ありそうでない”とぱっと言ってしまえばなんてことはないんですけど、実際にそれを形にするためには結構高いハードルがあって、そこを越えることが、私たちの中で大事にしている部分ではないかと思っています」
初めて出会ってからここまで、約一年半の間に起こった出来事。それから少しずつオリジナルの商品を増やしていき「水縞」の表現したい世界が世の中に広がっていきました。
「最初から今でも水縞で大事にしたい部分はお互い通じ合っていて、言葉に出さなくても表現したいものが分かり合えるんですよね。これはそう、これは違う、みたいなことが自然にできていて。不思議ですよね、それはずっと崩れることはありません」
ふたりだから分かり合えること、つまり水縞が大事にしていることを、あえて言葉にしてもらいました。植木さんは「あまり話し合ったことないからな~」と少しはにかみながらこんな風に教えてくれました。
「一言でいうのは難しいんですけど、“ありそうでない”というのが私たちのキーワードなんです。“ありそう”というのは、みんなが欲しいものということ。それが、“ない”というのは、技術的に作れないとか、何らかのクリアされない理由があるからだと思うんです。“ありそうでない”とぱっと言ってしまえばなんてことはないんですけど、実際にそれを形にするためには結構高いハードルがあって、そこを越えることが、私たちの中で大事にしている部分ではないかと思っています」
100万円を束ねる際に使われる紙に印刷をほどこした、その名も「のし帯」。従来からあるものに、デザインを加えて新しい価値を与えることも水縞が得意とするところ。
自分たちが面白がれることが大事
水縞のものづくりのプロセスのひとつに年に一回程度のペースでテーマを設け、プロダクトを展開するものがあります。「ナンバー」という数字のシリーズから始まり、次に「ハウジング」「ゲーム」と続いていきました。テーマは、どれだけ自分たちが面白がってアイディアを出せるものにするかということが一番大事なのだそうです。
例えば、昨年のテーマである「日本のかたち」の中で作られた“都道府県ポーズ全国大会”シリーズ。
例えば、昨年のテーマである「日本のかたち」の中で作られた“都道府県ポーズ全国大会”シリーズ。
“都道府県ポーズ全国大会”シリーズのポスター。
それぞれTOTTORI NANCY(トットリ ナンシー)、FUKUSHIMA AKABE(フクシマ アカベ)といった名前が付けられ、思わずクスリとしてしまいます。
「これは、人が“人のかたち”を作るというような日本画があったことを思い出して、面白いと思ったんです。人間ひとりがひとつの都道府県だとして、それで日本地図ができたらすごくない?でも、難しくない?って、そんな風に楽しみながら形にしていきました」
この「楽しい」という気持ちが、水縞のものづくりの源泉となり生み出されるプロダクトの魅力につながっているのだと思います。
この「楽しい」という気持ちが、水縞のものづくりの源泉となり生み出されるプロダクトの魅力につながっているのだと思います。
面白い答えが返ってくる質問を考えるのが好き
普段は卸がメインということもあり、あまりお客さんと会う機会がない水縞のふたりは、展示会などのイベントをとても大事にしています。
「実際にお客さんから声を聞くことで、ものづくりの新しい発見があるんですよね。“ナンバー”がテーマだった時も、数字への熱い思いが垣間見えてすごくおもしろかったです。その時に数字に対するアンケートを取ったんですけど、みなさん結構語るんですよ、数字について」
このアンケート、通常だったら、ただ好きな数字を聞くだけかもしれませんが、そこは水縞。結婚したい数字、息子のお嫁さんにもらいたい数字、友達になりたい数字といった、ユニークな質問がずらりと並ぶものだったそうです。
「実際にお客さんから声を聞くことで、ものづくりの新しい発見があるんですよね。“ナンバー”がテーマだった時も、数字への熱い思いが垣間見えてすごくおもしろかったです。その時に数字に対するアンケートを取ったんですけど、みなさん結構語るんですよ、数字について」
このアンケート、通常だったら、ただ好きな数字を聞くだけかもしれませんが、そこは水縞。結婚したい数字、息子のお嫁さんにもらいたい数字、友達になりたい数字といった、ユニークな質問がずらりと並ぶものだったそうです。
友達になりたい数字はどれですか?
「"2"は安心感がある、お嫁さんにほしいのは"8"が一番とか。みなさんいろんな理由で選んでいて、すごく楽しかったです。『どういう質問をしたらおもしろい答えが返ってくるのかね~』ということを考えるのがふたりとも好きなんです」
自分も周りの人たちもどうしたら、楽しいのか。そんなことを自然と考えている水縞であり、ふたりなのです。
自分も周りの人たちもどうしたら、楽しいのか。そんなことを自然と考えている水縞であり、ふたりなのです。
私たちだからできることをこれからも
水縞が生まれてから今年で9年、来年には10周年を迎えるタイミングでふたりに訪れた出産というビッグイベント。そのため、この先1,2年先のことはまだ具体的に思い描けていない状態だそうです。それは水縞にとって初めてのこと。
「でも、これから先もふたりで何かやっていこうという気持ちに変わりはありません。子どもが生まれても、離れていても、一緒にやっていくワクワク感は全く失われないと思うんです。もしかしたら文房具じゃないことも新しく挑戦するかもしれませんが、私と村上の組み合わせだとこういうものができるよね、ということは今後もやっていきたいです」
「でも、これから先もふたりで何かやっていこうという気持ちに変わりはありません。子どもが生まれても、離れていても、一緒にやっていくワクワク感は全く失われないと思うんです。もしかしたら文房具じゃないことも新しく挑戦するかもしれませんが、私と村上の組み合わせだとこういうものができるよね、ということは今後もやっていきたいです」
こちらは植木さんのお気に入りのカレンダースタンプ。日付の場所を変えることができるので、永遠に使えます。
植木さん一押しの厚手封筒シリーズ。水縞では、よく文房具を人に例えるそうで、こちらは「目立たない男性なんですけど自分をしっかり持っていて、私はたぶんその人を好きなんです」とのこと。
植木さんは、プロダクトデザイナーとして、村上さんは、36 Subloの店主として、それぞれ水縞以外の仕事を持っているため、会うのは週に一回程度。貴重な時間だから、さぞかし仕事について集中してお話しされているのかと思いきや、「カフェに行って、話すんですけど、すぐに話が他の方に逸れちゃう。いつもどこから逸れちゃったんだろうねって(笑)」とのこと。
初めて出会った頃から変わらない、ふたりにとっての当たり前の出来事。そんな居心地のいい時間は水縞と一緒にこの先もずっと続いていくことでしょう。
初めて出会った頃から変わらない、ふたりにとっての当たり前の出来事。そんな居心地のいい時間は水縞と一緒にこの先もずっと続いていくことでしょう。
植木明日子さん。終始絶やすことのなかった笑顔は、植木さんの人柄を表すように温かいものでした。