江戸時代の面影を色濃く残す町並みをした今井町は戦国時代に造られた寺内町が原型となっている町です。東西約600メートル、南北310メートルの今井町には全建物約1500棟のうち、約500棟の伝統的建築物が現存しています。

今井町に足を一歩踏み入れると、まるで時代劇のロケ地を訪れたような錯覚を感じます。風情ある道の両横には、古い歴史的建造物が軒を連ねています。この町は、江戸時代から時間が止まったままであるかのような佇まいをしています。

多くの古民家、伝統的家屋が残る今井町ですが、この町は静かな佇まいをしており、ほとんど観光地化されていません。古き良き伝統文化を大切に受け継ぎながら、風情ある古民家が一般の民家として使用されている今井町は、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。この町には、国の重要文化財に指定されている家屋が9棟、奈良県指定文化財が3棟、橿原市指定文化財が5棟あります。

華やかな外観をした今井まちなみ交流センター・華甍（はないらか）は、奈良県の指定文化財にとなっている建物で、1929年から今井町役場として使用されていた場所です。現在は、今井町の歴史を展示している資料館として開放されており、ここで今井町の観光マップなどを無料でもらうことができます。

今井まちなみ交流センター・華甍では、今井町が歩んできた歴史などが分かりやすく展示されているほか、今井町のジオラマ模型が展示されています。このジオラマ模型を見ていると、今井町がどのような構造をした町であるのかがよく分かります。

称念寺は、戦国時代に開基された真言宗の寺院で、寺内町として形成された今井町の中核となった寺院です。

入母屋造・本瓦葺をした本堂は、国の重要文化財に指定されており、江戸時代に建立されたものと推定されています。

今井町の本町筋にある今井まちや館は、18世紀初期頃に造られた町屋家屋です。ここは、江戸時代には金物屋又兵衛、明治時代には寺田又三郎の所有となりましたが、現在は無料で一般開放されています。

今井まちや館は、江戸時代中期の町屋家屋がどのようなものであるのかを知ることができる貴重な場所となっています。今井まちや館内部に一歩足を踏み入れると、往時の面影を色濃く残した座敷などを見物することができます。

今井まちや館では、二階部分も開放されています。特に何も展示されていませんが、町屋格子がはめられた窓から今井町の景色を眺めてみると、外から眺める今井町の町並みとは異なる風情を感じ取られるかもしれませんよ。

国の重要文化財に指定されている旧米谷家住宅は、中町筋北側に面した町屋家屋で切妻造、本瓦葺、平入り構造をしています。ここは、重要文化財保護の観点から無料開放されていない建物が多い今井町では貴重な、無料で事前予約無しに一般開放されている歴史的建造物です。

旧米谷家住宅は、18世紀中頃に建築された民家で、代々金具商、肥料商を営んできた家です。ここへは、内部も無料で見学することができ、スタッフの方が、この家が歩んできた歴史や特徴などを丁寧に説明してくれます。

旧米谷家住宅では、家屋だけでなく庭の見物をすることができます。古い井戸、よく手入れされた庭園などから、江戸時代、豪商の町として繁栄した今井町の煌びやかな歴史を垣間見ることができます。

国の重要文化財に指定されている河合家住宅は中尊坊通りの西に位置しています。東妻入母屋造、西妻切妻造、本瓦葺の構造に白漆喰が塗られた2階部分には丸窓があり、凝った意匠が施されています。

「上品寺屋」という屋号で江戸時代から酒造業を営んできた河合家住宅では、現在でも酒屋として営業されています。事前予約が必要となりますが、一階部分は、無料で開放されており、江戸時代の酒造がどのようなものであったかが分かりやすく展示されています。

現在でも酒造業を営んでいる河合家住宅では、様々な銘柄のお酒の試飲や酒ケーキの試食などをすることができます。お気に入りのお酒を見つけたら、今井町散策のお土産に買って帰るのもおすすめですよ。

今井町の最西端に位置しており、国の重要文化財に指定されている今西家住宅は、今井町で代々惣年寄の筆頭を務めてきた今西家の屋敷です。

「八ツ棟造り」と言われる複雑に入り組んだ入母屋造、本瓦葺き、白漆喰壁の外観をした今西家住宅は領主、代官の一翼を担っており、自治権が委ねられていた家柄に相応しく堂々たる佇まいをした外観をしています。

今西家住宅は、事前予約が必要となりますが、屋敷の内部を見学することができるので、ぜひ、事前予約して内部の見学されることをおすすめします。