【連載】写日好日 ―レンズの向こうに― vol.6『手』

写日好日 ―レンズの向こうに―
vol.6『手』

写真・文：川原﨑宣喜

何気ない日常の風景を写真に収めるとき。わたしたちはレンズの向こう側に何を見て、何を想うのか――写真家・川原﨑宣喜氏がお届けする連載フォトエッセイ。第六回目のテーマは『手』。プライベートや取材先で「つい手を撮ってしまう」というほど惹かれる、その魅力はどこにあるのでしょうか。読み終えた後には、思わず自分の手を見つめてしまうかもしれません。

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姪っ子の手は、小さく柔らかい。
まだ世の中のことは何も知らない手が可愛いくて、撮ってしまう。

彼女が生まれて、母はおばあちゃんになった。
食後、いつもの椅子で昼寝をしている。
自分の指先の形は母譲りなのだと知る。
音を立てないように、静かにシャッターを切る。

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一途に働く手に出会ったときも、僕は思わずレンズを覗く。
カンカンカンと金槌の音を鳴らしながら、特別なアクセサリーを作る。
それは四十年も変わらずに。

何か一つのことを続けている人にいつも憧れる。
僕はいろんなスポーツをやってきたけれど、どれも途中で距離を置いてしまったからかもしれない。

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ファインダーの向こうにいる被写体と対話しているような気がする。

懸命に動く手指がその人のことを語ってくれる。

その人が何に向き合ってきたのか。

手がその人の「言葉」みたいに。

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厚み、傷、シワ。

まるで年輪みたいに、それがその人の経験してきた時間だと思う。

けれど、そのことを僕は言葉でうまく伝えられない。

だから写真で伝えようとする。
少しでも多く、少しでも彩り豊かに。

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僕の手は十年先、二十年先、どんな風になっているだろうか。

もしシャッターボタンを押し続けていたら、
それはどんな表情で、何を語ってくれるのか見てみたい。
今みたいにすべすべではないだろうけど、
そこに積み重ねた歳月が与えてくれる美しさがあるといい。
人生の中で一つくらい、大切に続けたものが僕にもあっていいはずだ。

自分のことを好きなんて、なかなか思えない。
けれど、写真を撮り続けた手のことなら、好きだと言える。
きっと。

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