簪作家「榮-sakae-」さんのこと
今回は榮さんが作り出すその透明で儚げな、まさに天上の美とも言うべき作品世界をご紹介します。
Photo by Ryoukan Abe (www.ryoukan-abe.com)
全世界のメディアが注目する「華」
榮さんのお名前を聞いたことはなくても、このCMをご覧になった方は多いのではないでしょうか。
美しい黒髪を長く伸ばした滝川クリステルさんを飾った、色鮮やかな牡丹の花。この簪を作ったのが榮さんです。
2011年から2012年までTBSで放送された、各業界のトップエース達がその技術を競い合う国別対抗戦番組「アジアンエース」にも榮さんの簪が登場しています。踊絵師・神田サオリさんと中国代表のタトゥーアーティストによるウェディングドレス対決にて、榮さんが作り上げた八重桜と牡丹をイメージした白く輝く大輪の花簪が、神田さんのドレスに文字通り華を添えました。
透徹な白に、光を受けて淡く光るパールピンク。トレーシングペーパーよりも薄い「妖精の羽」というシルクをふんだんに使ったドレスと調和し、かつ高貴で幻想的に咲く花。「神々しいまでに美しい」とはこの花の為にある言葉ではないでしょうか。
ご紹介したように榮さんの作品は国内の雑誌やテレビなどにも度々登場していますが、アメリカの放送局・CNNでも取材が行われたそうです。番組は全220ヶ国に放送されるとのことで、この美しい「華」の魅力に全世界が虜になるのは間違いありませんね。
”ディップアート”で作り出す透徹な世界
用意する物はワイヤーとディップ液と呼ばれる液体合成樹脂。ゲージパイプという丸い筒にワイヤーを巻き付けてねじり、花びらの形に整えます。このワイヤーをディップ液に浸して液体樹脂の膜を作り、固まるまで乾かします。
花びらのパーツが乾いたら花の形に組み、テープを巻き付けて完成。花びら一枚一枚の形を作ったり、乾くまでに時間がかかったりと、手間と根気が必要なハンドクラフトですが、それだけに完成した時の喜びはひとしおですね。
春夏秋冬。榮さんの花簪にうつろう季節の美しさを知る
桜簪【紅山桜】
満開の大木は厳かでどこか凄絶なまでの美しさを漂わせる、日本の美の象徴とも言うべき桜は、一枝、一輪の花を見ればどこまでも可憐。そんな桜を榮さんが咲かせれば、何とも言えない艶やかさを纏います。また開いた花と蕾、葉のバランスが絶妙。桜のもっとも美しい姿を透明な光の中に閉じ込めた、そんな簪です。
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八重桜簪【春陽-haru hi-】
こちらはさらにゴージャスに光を放つ八重桜。花びらの数が多い分、ぽってりとした厚みを感じます。
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桜色が濃さを増して妖艶なまでに美しく、けれど少女のような愛らしさも秘めた八重桜。大人の女性の装いにふさわしい花ではないでしょうか。
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桜簪【染井吉野】
とろんとたゆたうような乳白色。根本だけが淡いピンク色の花びら。七分咲きに今を盛りと開ききった花に明日には開きそうなつぼみ、まだまだ固く締まったつぼみ…日本人にとって特別な花、「桜」をこうまで美しく咲かせられる簪作家さんを、私は榮さん以外に知りません。
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磁器のように艶やかな白い花びらですが、先端はガラスのように透き通って光を通します。まるで夢と現実の境目のように。
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春牡丹簪【花神】
桜が散り、萌えいずる緑が眩しくなってきた頃に絢爛豪華な牡丹が花開きます。幾重にも重なった薄い花びらがまるで漣のよう。藤色から紫へのグラデーションは美しい色の影を作ります。
Photo by MICHIHARU BABA (www.baba-m.com/)
藤簪【藤娘】
陽に透ける小さな花は楚々とした美しさながら、花房がしゃらりと揺れる様は妖艶な藤。青と紫、白と透明のグラデーションが二つの美しさを見事に表します。
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花房が枝垂れる様子は胡蝶が舞い飛ぶ様にも似て。
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紫陽花簪【水の器・天色】
牡丹、藤と過ぎれば雨の季節へ。「水の器」と名付けられた紫陽花は、梅雨の合間に晴れた空を切り取ったような色。
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紫陽花簪【水の器・甕覗】
こちらは「甕覗(かめのぞき)」。藍染めで一番浅く染めた鮮やかな水色の名前です。雨の滴を含んだ浅い藍の花びらは、これからやってくる夏の空を思わせます。
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蓮簪【千夜】
夏の朝、まだ涼しい空気のなかで咲く清浄の花。かげろうの羽根のように薄く透明な花びらは、そのまま空気に溶けて行くかのごとく。
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透けて見える花托もまた美しく。こんなにも透明なのに存在感のある花です。
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月下美人簪【月華】
個人的な意見で恐縮ですが、榮さんが咲かせる花の中でも、桜とこの月下美人は特別な花という気がします。この美しいフォルムには夏の夜、一夜限りに咲く幻の花そのものの儚さが漂います。
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白く淡く、透き通る花びらは月の光そのもの。この花が夜闇に浮かび上がる姿を見られた方はとても幸運だと思わずにいられません。
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鬼灯簪【燈曾(ランタン)2014】&【輝血(かがち)】
初夏から花を咲かせ、夏の盛りには実が赤く色づく鬼灯。ですが夏の熱気が過ぎて少し淋しい風が吹く景色の中で、ひっそりと熟れた実が揺れている、そんなイメージがあるのはその穏やかな色のせいでしょうか。
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やや赤みが強いこちらが「輝血」。輝血もまた鬼灯の別名のひとつ。透き通る萼に守られた朱色の実は、まるで夕陽を閉じ込めたよう。
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金木犀簪【追憶】
ひそやかに、けれど空気すべてを染めあげるような芳香で秋の訪れを告げる使者。桜や牡丹のような華やかさはなくとも、暖かなオレンジ色の小さな花が秋に似合う落ち着いた美しさを持っています。
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金木犀の葉先にわずかに煌めくオパール色。まさに「神は細部に宿る」ですね。
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赤椿簪【藪椿】
濃い緑と艶やかな赤のコントラストが美しい藪椿は、和の美を象徴する花のひとつと言えるでしょう。花の開き具合、ふくらんだつぼみ、艶やかな葉。完成された美とはこういうことを言うのでしょうか。女性の黒髪を美しくも可憐に、そして凛として飾る姿は、雪に耐えて咲く椿そのものですね。
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終わりに
透明で繊細な榮さんの作品をたくさんご紹介させて頂きましたが、ご堪能頂けましたでしょうか。終わりに代えて作品の入手方法をご紹介しますので欲しい!と思った方はご参考にどうぞ。
Photo by MICHIHARU BABA (www.baba-m.com/)
榮-sakae-さんの簪は現在ヤフオク!でのみ購入のチャンスあり
榮さんの簪は、実店舗やWEBショップなどへの卸販売は行われていません。長い時間をかけて丁寧に作られる簪はひとつ完成するごとにヤフオク!に出品されるので、在庫などもありません。制作中の作品について、またオークションに出品する際にも公式ブログやFACEBOOKにて告知されます。アドレスをご紹介しておきますので、チェックしてみてください。
Photo by Ryoukan Abe (www.ryoukan-abe.com)
本物の花よりも美しい「華」を咲かせる簪作家「榮-sakae-」さん。
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