ジャズを聴きながら、お洒落な夜を。
でも“何を聴いたら良いかわからない…”という方のために、ジャズのスタンダート曲を中心に、楽器別でセレクトしてみました。演奏は有名な方ばかりなので聴きごたえがありますよ!
トランペット
Chet Baker & Paul Desmond- Autumn Leaves
Miles Davis - All of You
「All of You」は1954年に発表されたポピュラーソング。コール・ポーターが作曲し、ミュージカル「絹の靴下」のために作られた作品です。歌詞の内容は「あなたのすべてを私の物にしたい」という熱烈なラブソング。ジャズにおいてもマイルス・デイヴィスをはじめ、ピアニストのビル・エヴァンスなど、数々の著名なジャズメンがカヴァ―しています。マイルスは冒頭から「ハーマン・ミュート」を使用した独特のトランペットの音でとてもクールに演奏していますが、なぜか心に熱く訴えかけるものがあります。
マイルス・デイヴィスはアメリカのジャズトランぺット奏者。日本では「ジャズの帝王」と呼ばれることもあります。ジャズトランぺッターと聞いて、まず彼のことを思い出す方も多いのではないでしょうか。
Lee Morgan - The Sidewinder
「The Sidewinder」はリー・モーガンの代表的な楽曲で、1963年に発売された同名のアルバムに収められています。この曲は8ビートを取り入れたジャズ・ロック調で、当時大ヒットしました。今日でもジャズのスタンダートとしてカヴァーされたりCMにも使われています。この曲のリー・モーガンのトランペットは、自由な鳥の羽ばたきのような卓越したテクニックとメロディラインの美しさが光っていて、とてもカッコいいのでジャズバーっぽい雰囲気にはぴったりです。
リー・モーガンはアメリカのジャズトランペット奏者。子供のころから神童と呼ばれ、早熟の天才と呼ばれることもあったそうです。大胆で破天荒なプレイが特徴の彼でしたが、33歳の若さでこの世を去りました。
サックス
John Coltrane -My Favorite Things
「My Favorite Things」は、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中曲。TVやCMでも使われることの多い曲なので、ご存知の方も多いと思います。コルトレーン最初のヒット曲で、日本では「私のお気に入り」という題名で知られ、ジャズにおいてもよく演奏されています。抒情的なメロディーと、アドリブではコルトレーンの華麗なテクニックが光ります。そして、当時はまだジャズではあまり使われていなかったソプラノサックスの音色が斬新で魅力にあふれています。
ジョン・コルトレーンはアメリカのサックス奏者。長い間無名だったために第一線で活躍したのは10年ほどと短いのですが、「20世紀のジャズの最大の巨人」と呼ばれているそうです。演奏にソプラノサックスを取り入れたことで、以降のジャズサックス奏者にも影響を与えました。
Dexter Gordon -Blue Bossa
「Blue Bossa」は1963年にケニー・ドーハムによって作曲され、ジョー・ヘンダーソンのアルバム「Page One」で初めて発表されました。その後数々のジャズミュージシャンによってカヴァーされているスタンダードナンバーです。デクスター・ゴードンのテナーサックスの艶っぽい音色と、余分な力の入っていない良い意味でけだるい感じの演奏が、ボサノバのリズムとよく合い、とてもリラックスできます。
デクスター・ゴードンはアメリカのテナーサックス奏者。1960年代初頭から70年代中ごろまではフランスやデンマークを拠点に活動していました。すごく有名というわけではありませんが、伸びやかでダイナミックな音と独特のリズム感が特徴です。
Wayne Shorter - Black Nile
「Black Nile」は1964年に録音されたウェイン・ショーターのアルバム、「NIGHT DREAMER」の中の一曲です。彼がジャズ・メッセンジャーズから独立後の初めてのソロ作です。トランぺッター、リー・モーガンとの2管編成による夢のような作品。冒頭の印象的なメロディのテーマと、それに続くショーター独特のソロ部分がクールです。大空に羽ばたくような、力強さのある2人の音がカッコいい曲です。
ウェイン・ショーターはアメリカのサックス奏者。現在でも第一線で活躍し、グラミー賞も受賞しています。アート・ブレイキー率いるザ・ジャズメッセンジャーズやマイルス・デイビスクインテットにも所属していました。現代のジャズに多大な影響を与える偉大なミュージシャンです。
Paul Desmond & Gerry Mulligan Quartet- All The Things You Are
「All The Things You Are」は1939年のミュージカル「ヴェリー・フォーム・フォー・メイ」のために作られた作品で、多くのスタンダートナンバーを残したジェローム・カーンが作曲しました。「あなたは私の全て」という意味の美しいメロディのラブソング。冒頭の掛け合いから甘く切ないイメージで心がきゅんとします。アルトサックスのポール・デスモンドの繊細な音と優しく無駄な力みのないバリトンサックスのジェリー・マリガンによる、クールで渋いおしゃれな1曲です。
ジェリー・マリガンはアメリカのジャズミュージシャン。ジャズ界においては数少ないバリトンサックス奏者であり、ピアニストでもあります。柔らかくて温かみのある低音が心地よく響き、バリトンサックスの魅力を余すところなく伝えてくれます。
トロンボーン
J.J. Johnson - Just Friends
「Just Friends」は1931年発表のアメリカのポピュラーソング。翌年、ラス・コロンボの歌でヒットしました。以降、ジャズのスタンダートとしても様々にカヴァーされています。「ただの友達」という意味のこの曲は、明るい感じですがちょっと切なさが漂い、J.J.ジョンソンのソロ部分では、早いフレーズを吹くことが難しいトロンボーンで超絶的なテクニックを華麗に披露しています。ライブハウス「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライブ盤なので、その場にいるような臨場感が味わえるのも醍醐味ですよ!
J.J. ジョンソンはアメリカのトロンボーン奏者。モダンジャズ時代のトロンボーン奏者の第一人者で、世界で最も有名なジャズトロンボーンプレーヤーです。「J.J」といえば彼を指すほどに有名な存在でもあります。
ドラムス
Art Blakey & the Jazz Messengers - Moanin'
「Moanin'」はアート・ブレイキー率いるザ・ジャズメッセンジャーズが1958年に発表した同名のアルバムの1曲目に収められたものであり、ジャズの中でも特に人気の高い曲で、CMなどでよく使われています。「Moanin'」は当時のザ・ジャズメッセンジャーズのピアニスト、ボビー・ティモンズが作曲し、ファンキージャズを代表する曲と言われています。ブレイキ―のキレのあるドラムはもちろん、リー・モーガンの炸裂するようなトランペットのソロもかっこよくて聴きどころです。
アート・ブレイキーはアメリカのジャズドラマー。当初はピアニストでしたが、ドラマーに転向し、ザ・ジャズメッセンジャーズを結成しました。このバンドからはトランペットのリー・モーガンやサックスのウェイン・ショーターなど著名なジャズメンが巣立っています。また、彼は親日家でもあり、何度も来日し、自分の息子に「Taro(太郎)」と名付けるほど日本が好きだったそうです。
ピアノ
Herbie Hancock - Maiden Voyage
「Maiden Voyage」は1965年に録音されたハービー・ハンコックの同名のアルバムの中の1曲。日本語名は「処女航海」。当時はマイルス・デイヴィスバンドに所属し、60年代に主流だったモードジャズの代表的な作品で、ハービーの代表作でもあります。夜明けに船出する小さなヨットの不安と喜びが見事に表現されていて、印象的なメロディ、美しいハービーのピアノとトランペットのフレディ・ハバードのソロがとてもカッコ良い1曲です。
ハービー・ハンコックはアメリカのジャズピアニスト。1960年代から現代においても第一線で活躍しています。時代と共に変化する彼の音楽は、常に最先端の新しい物を取り入れ、世界中のミュージシャンに影響を与えています。
Bill Evans - Waltz For Debby
「 Waltz For Debby」はピアニストのビル・エヴァンスが1961年にライブハウス「ヴィレッジ・ヴァンガード」で行ったライブを録音したアルバムのうちの1曲。元々は1956年にエヴァンスが作曲し、幼い姪にささげた曲だったそうですが、有名になったのはこのライブアルバムの演奏以降でした。ビルの繊細で優しく美しいピアノの音とベースのスコット・ラファロのソロも素晴らしく、ジャズ初心者でも聴きやすい、癒される曲です。
ビル・エヴァンスはアメリカのジャズピアニスト。ドビュッシーやラベルなどのクラシックの印象主義から影響を受けた和音の構成、多彩なアレンジ、優美なピアノタッチはハービー・ハンコックなど多くのピアニストに影響を与えました。
お気に入りの曲は見つかりましたか?
テレビを消して、灯りを暗くして、素敵な夜をお過ごしください。
ジャズのスタンダートナンバーではお馴染みの「Autumn Leaves」。日本では「枯葉」の曲名で知られています。1946年に制作された映画「夜の門」の挿入歌で、その後シャンソン歌手ジュリエット・グレコが歌ったことで世に知られました。1950年代後半以降に有名なジャズメンによって多く取り上げられ、様々にアレンジされています。チェット・ベイカーのはかなく消え入りそうなトランペットの音は、抒情的な「枯葉」のイメージにぴったりですが、ただ悲しいだけではなく、温かさや力強さも感じさせます。
チェット・ベイカーはアメリカのトランペット奏者。ポール・デスモンドはアメリカのサックス奏者。ともにウエストコーストジャズを代表するミュージシャンで、「Autumn Leaves」はアルバム「Together」に収められた曲です。2人が共演を果たしたのは意外にも晩年になってからでしたが、抜群のコンビネーションを発揮し、心地よいサウンドに仕上がっています。