「いいな」と感じる“気持ち”を捉える。心地をカタチにするもの作り
シンプルで上質な白いシャツだったり、
毎日履いて出かけたくなるような靴だったり。
「今日はどれにしようかな」なんていろいろと迷ってはみても、結局、選ぶのはいつも同じもの。
気が付くとついつい手に取ってしまっている、自分にとってのスタンダード。
そういった“愛用品”が、誰にも一つはありますよね。
ブランドのコンセプトについて、そう話してくださったメデルジュエリー(mederu jewelry)さん。
飾るためのものではなく、毎日に自然と“寄り添うもの”。ジュエリーにそんな考え方があるなんて、私にとってはちょっと意外な視点でもありました。
メデルさんのジュエリーを手にした時に感じる、懐かしく温かい気持ち。
金属でありながらも、どこか柔らかで優しいぬくもりが感じられる作品たちは、そんな日々に寄り添う「飾らない心地よさ」を追求することから生み出されているようです。
メデルジュエリーの浅草本店があるのは、浅草駅から徒歩15分ほどの静かなエリア。取材時はクリスマスシーズンで入り口にスワッグが飾られていました。
「ジュエリーよりも、プロダクトデザインに近い発想かもしれません。まずは「何でこれが心地いいと感じるのかな? 何でこんなに可愛いと思うのかな?」っていう気持ちの部分から整理していって、その心地よさや可愛さの本質を自分たちなりに掴むことから始めます。カタチありきの表層的なデザインではなく、“心地”を追求していくことで “カタチ”が生まれる。それが私たちのもの作りです」
(画像提供:メデルジュエリー)
誰か一人ではなく、みんなにとっての心地よさを探して
浅草本店の隣にある「アトリエ」での一枚。ここで日々、心地をカタチにする研究が行われています (画像提供:メデルジュエリー)
(画像提供:メデルジュエリー)
「衣・食・住の暮らしにまつわるものは、センスがよく必要十分で、安価なものが増えています。それは便利なことですが、違和感を覚えるところもありました。今はとても合理的な時代で、スペックでものの価値を語られることが多いと感じます。ただ、理にかなっていることばかりだと、暮らしにうるおいがなくなってしまう。そんなことを感じていました。民芸や工芸、建築や家具などの古いものに興味があって、少しずつ集めているんですが、人の手から生まれる素朴な愛らしさや、質の高いものにも愛嬌や、遊び心があったりします。そういうものに惹かれたのは、便利な時代のなかにうるおいを求めていたからなのかもしれません。もうひとつ、最初に集まったメンバーは元々ものを作る仕事をしていたり、もの作りの現場を見て育ったりしたような人たちです。多くの分野で作り手が減っている日本の製造業、失われつつあるもの作りの風景に対して、何か出来ることはないだろうかと思っていました」
そしてある時、知人の紹介でジュエリー職人さんと出会ったことから、ふたつの思いは繋がりはじめます。
(画像提供:メデルジュエリー)
(画像提供:メデルジュエリー)
自分たちが心地よいと感じられて、身に着けたくなるものを。そんなシンプルな発想から始めたジュエリー作りでしたが、全くの未経験からスタートしたこともあって、製作は予想以上に難航。アイディアを考えては職人さんに相談し、そこからまた考え直して…といったトライアンドエラーをひたすら繰り返し、納得のいく作品が完成するまでには半年以上もかかりました。
(画像提供:メデルジュエリー)
そう言って誇らしげに、だけどちょっとだけ照れくさそうに、まるで我が子を紹介する時のようなはにかんだ笑顔で見せてくださった「ジュテーム リング」。
優美な曲線を描く二本の輪が不思議な柔らかさを醸し出し、手仕事ならではの繊細な表情が、見る人にぬくもりと優しさを感じさせます。
こちらが記念すべき作品第一号の「ジュテーム リング」 (画像提供:メデルジュエリー)
(画像提供:メデルジュエリー)
(画像提供:メデルジュエリー)
人と繋がり学ぶことから“愛用品”は生まれる
工芸技法や素材の魅力を見つめ、懐かしく新しい心地を探す取り組み「Labo」。写真は伝統的な“七宝”をジュエリーにした「Labo 七宝」シリーズ (画像提供:メデルジュエリー)
もの作りの現場や素材の産地を訪ねていろんな方と対話することで、その人達の技術や素材を「どうすれば一番メデルらしいカタチで活かせるのか」が見えてくるそう。また、様々な人達とコミュニケーションをとる中で、各地で昔から受け継がれてきた“古いものの良さ”もあらためて学べるのだとか。
「長く愛されるいいものを研究していくと、自然と古いものに行き着くんですよ。50年も100年も前に作られたのに今も愛され続けているものって、きっとこれから先の未来でも魅力的に感じられるもののはず。古き良きものの中にある「時代を越えて愛される魅力」を理解して、自分たちのジュエリーでも表現できたらいいですよね」
「アコヤ真珠」シリーズの制作時に訪れた宇和島での一コマ。現地の人たちとの触れ合うことで、メデルらしい作品が生まれます (画像提供:メデルジュエリー)
「いろんな人達と出会い、繋がり、そこから得られる学びはとても大きいです。だけどそれで終わりじゃなく、学びをアトリエに持ち帰って試作を重ねます。生産者を訪ねた真珠も、現地で得た心地をアトリエで確かめながら、皆が感じ取れる形に仕立てていきました。会いに行くことも大事ですが、アトリエに戻って研究する時間のほうがずっと長くかかるものです」
そう語るメデルさん。作品から感じる“新しいのにどこか懐かしく温かい”印象は、こうした人々との繋がりと古きよきものからの学びがあってこそ生み出せているんですね。そんな彼らの“繋がり”を大切にする姿勢。実はカタチを生み出すまでの工程だけではなく、作品が完成した後のお客様とのコミュニケーションでも一貫しているんです。
直接対話することで、お客様にも作り手にも喜びを
浅草本店の様子。アンティークの什器が並ぶ、落ち着いた雰囲気のお店です
お客様の声が職人さんに届くことで励みになり、「さらに良いものを届けたい」という熱意が生まれるそう。またお客様から頂いた声が、そのまま新しいもの作りのきっかけになることも。
穏やかで優しい光をたたえるローズカットダイヤのエンゲージリング。華やかでありながらもシンプルなメデルらしいデザインです (画像提供:メデルジュエリー)
ハンドメイドで仕上げる、オリジナルのリングピローもあります (画像提供:メデルジュエリー)
彼らのもの作りの真ん中にあるのは、いつも「人」を想う気持ち。お客様や、職人さん、素材の産地の方々とも垣根なく繋がり、沢山の人たちの“声”に耳を傾けながら、メデルらしい心地とカタチをみんなで一緒に作り上げている。メデルジュエリーの作品から優しいぬくもりが感じられるのは、そんな人を想うもの作りがベースにあるからなのでしょう。
時間が経っても「メデルを選んでよかった」と思ってもらえる存在でありたい
カジュアルなデニムスタイルにもしっくり馴染む。これも“メデルらしさ”の一つの特長かもしれません (画像提供:メデルジュエリー)
(画像提供:メデルジュエリー)
メデルジュエリーのお客様には、そう言ってくださる方がとても多いのだとか。
「ありがたいことに、お客様から「職人さんに渡してください」ってお便りをたくさん頂くんです。スタッフが結婚式にご招待頂くこともありますし、「おいしいパンがあるので、一緒に食べましょう」なんてお店に寄ってくださる方も(笑)。店舗スタッフがひとつひとつのジュエリーにまつわるエピソードを丁寧に説明するので、ジュエリーが生まれた背景や私たちのもの作りに対する想いを知った上で注文してくださる方が多いんです」
皆さん、ただ「ジュエリーを注文した」というよりは、「自分たちが信頼できて、愛し続けられるブランド」としてメデルジュエリーとの関わりを楽しんでいらっしゃるよう。そんな関係性が築けるのは、ジュエリーそのものが素敵であることはもちろんですが、“メデルだからこそのもの作り”が多くの人の共感を呼んでいるからなのでしょう。こうしたもの作りへの想いをしっかりと伝えるため、販売は直営店とweb 、そして各地へ赴く展示会形式の「キャラバン」というイベントのみ。
「キャラバンにはふだん店頭に立っていない、ジュエリーの企画や写真撮影をする本社スタッフが向かうんですが、お客様とお話することで実感できることがたくさんあります。次のアイディアにつながることも多いんです」
外部に卸さず自分たちが直接販売できる方法だけに留めているのは、「お客様と対話することで、より愛着を持ってジュエリーを使って頂ける」という考えに基づいてなのだとか。
以前に開催された「京都キャラバン店」での模様 (画像提供:メデルジュエリー)
彼らが目指しているのは、ただジュエリーを販売するブランドではなく、愛用してくださる方々と共に歩み、ずっと変わらぬ“信頼”を寄せてもらえる存在になること。
2015年A/Wのカタログ。もの作りへのまっすぐな想いが伝わってきて、読むほどにメデルジュエリーのことが好きになります (画像提供:メデルジュエリー)
ブランドの出発当時から変わらない、心地をカタチにするものづくり。
きっとこれから先もその研究は続き、メデルジュエリーらしい新たな心地よさを、ずっと生み出していってくれることでしょう。
シンプルなシャツに、着心地のいいニット、履きやすい靴、いつも一緒にお出かけする鞄、etc…。
もし、今思い浮かんだ“愛用品リスト”の中にまだジュエリーが載っていないようなら、ぜひ一度メデルジュエリーを訪ねてみてください。
あなたがあなたらしいままで、気取らずに身につけられる。
そんな心地よくてずっと愛用できるジュエリーとの出会いが、そこには待っているはずですよ。
そして、メデルのジュエリーを手にしたあなたは、きっと何年か後にはこう思うはずです。
「やっぱり、メデルを選んでよかった」
(画像提供:メデルジュエリー)