ふたりのマイルール
【連載】ふたりのマイルール 
vol.4 - 相手も自分も心地よく。
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ふたりのマイルール
vol.4 - 相手も自分も心地よく。
「頑張らない」のさじ加減

写真:yansuKIM 取材・文:西岡真実

“ルール”と聞くと少し堅苦しさを感じますが、夫婦や仕事のパートナーなどごまかしのきかない距離感では、なにかしら決め事があったほうがスムーズにいくような気もします。なら「素敵な関係のためのルール」って?毎回さまざまな「ふたり」に登場してもらい、心地よい関係を保つ秘訣を伺う連載。今回は、初対面で意気投合し餃子屋を営むことになったという『按田餃子』のお二人。お互い料理家と写真家という顔も持つお二人は、忙しさのなかでどうバランスを保ち、心地よい関係性を構築しているのでしょうか。

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2019年10月23日作成
【連載】ふたりのマイルール 
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「頑張らない」のさじ加減
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「頑張らない」のさじ加減
仕事での人間関係は、気遣いやマナーが大事。でもそれだけでなく、ピタッと相性がハマるとトントンッとうまくコトが運んで、予想以上の結果を導き出してくれたりします。今回はまさに、初対面で意気投合しその数ヶ月後には餃子屋をオープンしたお二人の“マイルール”です。
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「頑張らない」のさじ加減
メインメニューの水餃子は、「鶏:白菜と生姜」「鶏:香菜と胡瓜」「豚:大根と搾菜」「豚:カレー風味と人参」の4種類。どれもにんにくとニラが入っていないのに奥行きのある味わい

メインメニューの水餃子は、「鶏:白菜と生姜」「鶏:香菜と胡瓜」「豚:大根と搾菜」「豚:カレー風味と人参」の4種類。どれもにんにくとニラが入っていないのに奥行きのある味わい

女性一人でも入りやすく、ヘルシーな餃子を気軽に楽しめる「按田餃子(あんだぎょうざ)」。ハトムギ粉が練り込まれた水餃子は、ほんのりスパイスの香りが広がります。ほかにも一捻りある味や食感と出合える、五感に楽しいメニューばかり。ひとたびお店を訪れれば、どこか懐かしさと好奇心を刺激する世界観がクセになるよう。

料理家と写真家という異業種のお二人がなぜ餃子屋を営むことになったのか、そこには面白いエピソードがありました。

スローガンに掲げたのは『たかが、餃子』

仕事の流儀が似ている。感性や価値観や似ている。“こだわり”が一緒、または違っても尊重し合える……仕事上のベストパートナーについて考えてみると、そんな人と巡り会えることはそう多くないのかもしれません。

「按田餃子」の按田優子さんと鈴木陽介さんは、まさにベストパートナー。新しい仕事、ことに飲食店をはじめるとなると、その仲間選びにはいささか慎重にならざるを得ないような気がしますが、お二人は按田さんの著書『冷蔵庫いらずのレシピ』の撮影で出会ってすぐに意気投合。
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その頃の鈴木さんは、海外でミス・ユニバースの密着取材をして美容に目覚め(?)、8キロ体重を落としていたといいます(按田さんによると「その頃は鈴木さん、レーザーでシミ取りもしてたよね(笑)」)。

ところが「ストイックな健康志向に転換したら、外食で食べられるものがない。そういえば、女性が一人で気軽に入れるお店も少ない」と気が付き、初対面の按田さんに女性のための餃子屋さんを提案。

なんと、その3ヶ月後には物件を探し当てるというスピード展開で、按田餃子はあっという間にスタートをきりました。

いつでも店をたためるくらいの気持ちで

二子玉川店は、広めで少し違った雰囲気。並ばずにゆったり食事を楽しめる

二子玉川店は、広めで少し違った雰囲気。並ばずにゆったり食事を楽しめる

「みんなで出せる分だけ出してやろう。お金がなくなったらやめればいい」
2012年、そんな風に産声を上げた餃子店。

今や行列の絶えない人気店となり、5,000円以下で食事ができるお店を対象としたミシュランガイドのビブグルマンを3年連続受賞。昨年は代々木上原に次いで二子玉川に2店舗目を構えるまでになりました。


はじめからすぐに軌道に乗ったわけではないけれど、ここまで続けられたのは「変な気負いがなかったから」といいます。

写真家として、料理家として普段からそれぞれ忙しくしているお二人。その上さらにお店を営むとなればさぞ大変かと思いきや、按田さんも鈴木さんも心地よい空気感で笑いが絶えません。たくさんの仕事と責任を抱えながら、とても軽やか。
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その軽やかさの理由を伺うと「お店をオープンした時点で、すでに“成功”だと思ってた」と鈴木さん。
「僕にとっての失敗は、行動しないでずっと想像しているだけな状態。だから、やった時点で成功なんです。なんなら、駄目だったらすぐにやめる準備をしてたくらい(笑)。それが逆によかったのかも。」

お二人とも料理家と写真家という仕事があるなかではじめた飲食店。だからこそ、コンセプトに掲げたのは『たかが、餃子』。思わぬ言葉に拍子抜けしてしまうけど、そこにはお二人がもともと持っていた共通の哲学がありました。
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Rule1:お互いのテリトリーには立ち入らない

お店の実務的なところは按田さん、経営としての大枠は鈴木さんが担当しているという按田餃子。もともとお二人とも違う仕事を持っていたことでよかったのは、それぞれに「軸」があること。そのおかげでそれぞれの担当が明確になりスムーズにコトが運びます。
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鈴木さん:料理のことはわからないので按田さんにお任せしていて、逆に、通販やりたいとか、今後どうしていくか考えるのは僕の担当です。きれいに分業ができてるから、打ち合わせとかも必要ないし、実はあまり会わなくても平気(笑)。

按田さん:そうそう。こういう取材の前後にちょっとした業務連絡をするくらい(笑)。スローガンも『たかが、餃子』だから、仕事を進めてて「原点に立ち返ろう」みたいな確認作業もいらなくて。

鈴木さん:「こうあるべき」とカッチリ設定してそこに向かおうとしても、絶対ズレてくるしね。按田餃子の場合は、少しずつ作りながら進んでる感じかも。

按田さん:スローガンはゆるめだけど、仕事の棲み分けはしっかりできてるし、お互いそこはお任せしているからぶつかることがないんだよね。

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Rule2:相手の“こだわり”を認める

仕事をする上で、大事なものでもある“こだわり”。ただ、誰かと一緒に仕事をする場合、お互いの譲れないものが対立してしまったり、相手に理解してもらえなかったりすることは、間々あるもの。

仕事の棲み分けはできているというお二人ですが、その上で相手のこだわりがみえたときの対応は?
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鈴木さん:お店に追加したいメニューは按田さんにちょこちょこ提案してて。そこから按田さんがいいと思ったものだけ採用されてメニューになっていく。

按田さん:ラゲーライス*とかね。

鈴木さん:ただ、熱望している「ソース焼きそば」は、按田さんの世界にハマってないみたいで、流され続けてるけど(笑)。意見は聞いてくれた上で「だけど」みたいな、按田さんにも曲げたくないポイントはいくつかあるみたいで。不思議なところにこだわりが……。

按田さん:そう。でもそれ今、10倍返しくらいで反論したい(笑)。
*ラゲーライス――八角でやわらかく煮た豚肉にきくらげと金針菜と玉ねぎを加え、ハトムギご飯に載せた按田餃子の人気メニュー。
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按田さん:鈴木さんはメニュー名の記載とかで、カタカナ表記かひらがな表記を気にしたり。私だと「お酢はここのじゃないと」みたいな。でも、それってもう、個人的な調和というか。お互いにそういうこだわりがあるのを知ってるから、そこは触らない。

鈴木さん:店舗のスタッフにしてもそうだけど、人それぞれ認識している世界が違うっていう前提があるから楽なのかも。

按田さん:お店で調味料の並べ方とか細かいところが気になることもあるけど、そもそもコントロールがきくものだとは思ってないので。そこで自分のこだわりを押し付けて細かく指示とか注意しはじめたら、自分も辛くなっちゃう。

鈴木さん:按田餃子の考え方のひとつに、お客さんはもちろんだけど、スタッフに楽しく働いてほしいっていうのもあるよね。

Rule3:頑張らない

そもそも『たかが、餃子』がスローガン。お二人とお話ししていると、「ゆるく」「頑張らない」などの言葉がそれぞれの口から飛び出します。

必要以上に「うまくやろう」と思わないことで、結果を求めすぎず楽しみながらやれる。ただそれは、なかなか勇気がいることだし、実は上級テクニックのように思えます。
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頑張るよりも、楽しむほうが、結果いい

鈴木さん:あんまり「頑張らない」ようにはしてます。ずっと根詰めてやってたら疲れちゃうし、日常がつまらなくなっちゃう。少しずつ意識してれば、その積み重ねでよくなっていくから。楽しくやってたほうが、意外とうまくいったりするから、何事も「ほどよく」。

按田さん:そう、気負わずにね。

鈴木さん:前に海外旅行でスペインのバルに行ったとき、お店のおじさんが、ずっと店内のテレビをみてサッカーに釘付けになってて。お客さんに水出すときもテレビから目を離さず無言で……(笑)。そのおじさんたちの適当さをみて、僕の人生観が変わったというか。

按田さん:海外だと割と珍しくない(笑)。鈴木さんは、価値基準が世界にあるよね。でも、そのほうがお客さんも気楽なんじゃないかな。特に女性一人だと、声かけてほしくない、ほっといてくれるほうがありがたいって人もいるし。スペインのバルのおじさんのほうが、世界でみたら圧倒的に常識かも。
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鈴木さん:若いときは、がむしゃらに仕事詰め込んだりしたけど、頑張りすぎると訳わかんなくなってくるよね。

按田さん:いろいろ経験したからこそわかった力の抜き加減かな。でも「頑張らないけど、手を抜くわけではない」、私たちのその感覚が似てるのは、同じ歳っていうのもあるかも。ひと言で「頑張らない」といっても、ひとつ上の世代とか下の世代だと、たぶん受け取り方とか感覚が違くて。世代が同じだから原体験も似てたり、多くを語らなくても共通意識みたいなものがあるから成立するんだろうなって。

ベストパートナーたる所以って?

鈴木さん ―「とりあえずやっちゃえ」精神が似ている

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按田さんて、効率とか段取りを頭のなかでいつも考えて組み立ててるんですよね。「茹でるときの湯気がもったいない。蒸してもう一品できるのに」とか。

決断も早くて、水餃子のメニューのラインナップが決まるのもあっという間だったし。引っ越しもパッパッパって、気が付いたらもう終わってる(笑)。オペレーションとかもシステム的に考えて効率化していったし、仕事をどんどんスタッフに任せて、相手が100%できなくてもやらせてみる。

「迷ってるくらいならひとまずやっちゃおう」ってタイプだから、そういうところは僕と似てるし、だから一緒に走り出したときのスピード感も同じなのかなって。

按田さん ー「手放す」ことを教えてくれた

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鈴木さんは、私が「どんどん人に任せるのが上手」っていったけど、実は、按田餃子やろうって話が出たときに、鈴木さんにもらった言葉がきっかけなんです。

「按田さんがどこまで任せられるかだよ」って。鈴木さんにかけられた言葉で、一番印象的なひと言でした。

飲食はずっとやってきたものの、今までのやり方は変えないといけないなって。人に任せるのは難しいことだけど、なるべくそうしていかないと続かないので。人に任せて、私は大事なレシピ作りに専念する。そこに集中していくために「手放す」というのは大事な工程でした。

うまくいく秘訣は、頑張らないこと

頑張ることはもちろんいいことだけど、柔軟性が失われると「こんなにやったのに」「私だけ頑張っている」といった思考に入ってしまいがち。

自分が大変になると、相手も抱えているはずの大変さがみえなくなってしまう。それは、ときに人間関係で少しのねじれを引き起こすことも。

もともとさっぱりした性格のお二人ですが、「肩の力を抜いて、楽しく」は共通の人生哲学。『たかが、餃子』のスローガンにはそんな考えがありました。
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「頑張らない」のさじ加減
その人なりの「頑張らない」の加減は、きっと、たくさん経験を重ねて底辺と天井を知ったからこそみえるもの。試行錯誤が必要なのかもしれません。

でも、その一歩として「うまくやろうとしない」「やっただけで大成功!」という言葉なら、頑張りすぎて空回りしそうなときのお守りとして気軽に使えそう。

そこから生まれる気持ちの余裕は、落ち着いて仕事に取り組めるだけでなく、きっと一緒に働くパートナーも心地よくさせるはずです。
按田餃子
2018年11月に二子玉川店に2号店オープン。水餃子の具は国産の鶏と豚をベースに季節ごとの素材を組み合わせ、自家製の皮は殻ごと粉末にしたハトムギ配合。他にも女性に嬉しいヘルシーメニューが並ぶ。
【代々木上原店】 東京都渋谷区西原3-21-2 営業時間11:30-23:00 定休日なし
【二子玉川店】東京都世田谷区玉川3-13-7 柳小路南角1階 営業時間11:30-22:00 定休日なし

【通信販売】https://andagyoza.tumblr.com/

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