自分にとって、そして地球にとってもよりよい暮らしとは
マイボトルを持ち歩いたり、ゴミはなるべく小さくして捨てたり、土に還る素材のものを選んでみたり……わたしたちの普段の生活を顧みてみても、ちょっとした心がけが習慣化していることも多いですよね。
これから先も、なるべく地球にやさしく、かつ自分にとって無理のない心地よい暮らしを送りたいから。今回は、自分自身が自然体でいられるエシカルな暮らしを実践されている方のお宅にお邪魔して、お話を伺うことにしました。
“こうありたい”を大切に移住を決めた下道さん
4代が住み継いできた里山の古民家へ
移住してきた最初のころは別の家に住んでいたそうですが、地元の不動産屋さんが出しているチラシや空き家の情報サイトなどをこまめにチェックしながら、理想の家を探していたんだとか。
そんな折に出会って一目惚れしたのが、下道さん一家が4代目の住人となる一軒の古民家です。
二間続きの日当たりのよい和室では、子どもがゴロゴロしたり、藍染めやヨガのワークショップを開いたり。訪れた人も口々に「おばあちゃんちに来たみたいで懐かしい!」とおっしゃるそう
「子どものころは、山形の祖母の家で毎年夏休みを過ごしていました。祖母は農家で、家の周りにも自然が多くて。そんな祖母の家に滞在している時間が一番自分らしくいられる時間だったんです。だから、心のどこかでずっと古民家に住みたいという思いがあったのかもしれません」
上左・上右:和室にいまでも当時のまま残る木の細工
下:縁側の上に走る太い木の梁は、特に下道さんのお気に入り
「代々の住人の方が植えたものも多いのですが、自分たちで育てているのは食べられる植物が多く、夫が畑で育てているフルーツなども身近にあります。息子は好き嫌いがないのですが、赤ちゃんのころから季節の野菜や果物をまんべんなく食べて育ったからかもしれませんね。
庭に植えてある実のなる植物は、いつも鳥と息子で取り合いに(笑)。鳥は熟す前の果実でもくわえていってしまうので、先を越されまいと『まだ青いかな?』なんて言いながら収穫しています」
一年中お庭のどこかで花が咲いているそうで、取材時(10月中旬)はちょうど立派なキンモクセイの木が満開に。家のなかにもふわりと華やかな香りがただよっていました
大切な一着を長く着続けられる“藍染め”に出会って
Photo/Nanako Koyama
「学生時代にテキスタイルについて学んでいたころ、のれん職人さんと一緒に制作する機会がありました。その方は、商品を作る過程で余った染料で自分の作業着を染めていて。『俺はこの作業着じゃなきゃダメなんだ』と、何度も繰り返し染め直したものを着てらしたんです。
10~20代前半のころは、モデルとしても駆け出し。必死になってトレンドを追いかけていたのですが、半年ごとに流行りが変わって、買ったばかりの服が着られなくなって……というサイクルの速さがちょっと苦しく感じていました。
そんなときに、自分にとっての大切な一着に手をかけて長く着られている職人さんの姿を見て、“こちらの生き方のほうがわたしにとっては豊かなのかもしれない”と思うようになりました」
下道さんご自身が藍で染め直して着ている洋服たち。藍の状態や洗濯の回数によって、色の濃淡に差が生まれます
はじめは職人さんのところに通って藍染めについて学んでいた下道さん。移住先の千葉でも藍染めを続け、いまではワークショップの開催や染め直しのオーダーなども受けているそうです。
「ワークショップでは参加される方ご自身の服を持ってきていただいて染めることもあるのですが、実際にやってみると『次はあれも染めたい!』というお声をいただくことが多いんです。お気に入りの服でも、何度も着ているとどうしても汚れてしまうもの。綿やウールといった天然の素材なら、藍で染め直すことで色の変化を楽しみながら長く着続けられます」
長く好きでいられるものだけを身のまわりに
背の高いご夫婦で使いやすいようにと少し高めにリフォームしたキッチン。天井から吊られた棚は、夫・龍一さんのお手製
「“これでいい”というよりは、“これがいい”と思えるようなものを、ちゃんと使ってあげられる数だけ持つようにしています」とお話ししてくださった下道さん。見せる収納を取り入れながらすっきりと片付けられたキッチンで、特にお気に入りのアイテムについてご紹介いただきました。
左上から時計回り:近所の方が「あなたにぜひ使ってほしい!」と持ってきてくださったという青のガラスボウル、金継ぎを自ら施したおたま&菜箸スタンド、知り合いの方手作りのコースター、厳しい製品基準からこぼれてしまった「リチャード ジノリ」の食器に「ミナ ペルホネン」がデザインを施して蘇らせた大皿、龍一さんのロシアのご親戚から受け継いだ陶器。一つ一つのアイテムに下道さんの思い入れが
家族で暮らす家も、日々身にまとう衣服も、毎日使う日用品も、“これがいい”と納得できて、長く付き合えるものを選んでいるという下道さん。多くは持たず、時間をかけて大切なものを育てていくことが自分にとって心地よく、結果として無駄の少ない、シンプルでエシカルな暮らしに繋がっています。
肌ラボ®極潤®ヒアルロン液(販売名:ハダラボモイスト化粧水d)
「敏感肌なので、肌に合う、合わないが結構あって。季節や体調によっていままで使えていたものでも刺激を感じるようになってしまうこともあるので、化粧水選びはどうしても迷子になりがちです」
下道さんに一か月ほど使ってみていただいたのは、ロート製薬「肌ラボ®極潤®ヒアルロン液」。スキンケアの原点である“うるおい”を追究したシンプルな化粧水は、発売以来多くの人に愛されているロングセラーです。
もの選びでもそうですが、足らなすぎても不便だし、多すぎてもなんだか過剰で自分らしくない。シンプルだけどちょうどいいというのが、長く使い続けたいと感じるポイントなのかもしれません」
微生物に分解されるバイオマスプラスチックを使用したパッケージ。当時としてはいち早くコンパクトな詰め替え用も発売したそう
ただ、わたしの場合だったら新しく服を買うときは藍で染め直すことができるウールや綿などの天然素材を選ぶようにしたり、繰り返し使える蜜ろうラップを取り入れてみたり、詰め替え用があるものを選んだり。すごいことをしなくちゃと思わなくても、まずは世の中にある環境にやさしい選択肢を知って、自分が自然にできる小さな選択を積み重ねることで、少しずつ暮らしが変わっていくのではないでしょうか」
時間をかけて育む、自分にとってのエシカルな暮らし
地球もわたしも、どちらも大切に。一歩ずつ、健やかな暮らしを育んでいきましょう。
築5、60年は経っているという下道さんのご自宅。昔ながらの模様入りのガラス戸や雨戸を収納する木製の戸袋がそのまま残っています