今こそ訪れたい、お茶の名産地・浜松

「夏も近づく八十八夜……」
このフレーズを聞くだけで、爽やかな風と青々とした茶畑の風景が目に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。初夏の茶摘みの光景を歌った有名な唱歌で、ここで歌われている「八十八夜(立春から88日目)」に摘み取られたお茶は、古くから不老長寿の縁起物として珍重されてきました。
そんな特別な「新茶」のシーズンが、今年も到来。
日本屈指のお茶どころ・静岡県では、この時期になると街中がみずみずしい新緑と爽やかな香りに包まれます。今回は、今しかできない贅沢な新茶の手摘み体験「五感で愉しむお茶作り」を取材すべく、お茶好きの編集部が静岡県浜松市にある温泉旅館「界 遠州」を訪ねました。
日本屈指のお茶どころ・静岡県では、この時期になると街中がみずみずしい新緑と爽やかな香りに包まれます。今回は、今しかできない贅沢な新茶の手摘み体験「五感で愉しむお茶作り」を取材すべく、お茶好きの編集部が静岡県浜松市にある温泉旅館「界 遠州」を訪ねました。
舘山寺温泉で、特別な新茶体験を

星野リゾートが運営する温泉旅館「界 遠州」が佇む舘山寺(かんざんじ)は、浜名湖畔に位置する豊かな自然に恵まれた風光明媚な温泉街。810年に弘法大師(空海)が開創したと伝わる曹洞宗の古刹があり、縁結びのご利益で知られるほか、日本で唯一の湖上を渡るロープウェイ、浜名湖うなぎや遠州灘のふぐといった美食も揃う、見どころ尽くしのエリアです。

宿に一歩足を踏み入れると、茶香炉から漂う香ばしいお茶の香りが、旅の疲れをやさしく癒やしてくれます。さらに奥のラウンジへと進むと窓の外に広がっていたのは、みずみずしい茶畑の緑ときらめく穏やかな浜名湖。館内に流れる清々しくのんびりとした空気に、思わず取材中であることを忘れてしまうほど、心が満たされていきました。
試行錯誤の歳月を経て、念願の「新茶収穫」へ

今でこそ立派に青々と茂る茶畑ですが、2019年の完成当初はチャノキの育ちが悪く一度すべての木を抜き取って水はけを良くする大がかりな工事を行いました。そこからスタッフ一丸となり、地元の茶農家に何度も通って管理方法を一から学び、水はけの悪い場所の土を入れ替え手作業で修繕したり、冬にはチャノキが冷えないよう藁を敷き詰めたり……。日々試行錯誤を繰り返しながら、我が子のように成長を見届けてきたのだそうです。
そして今年、念願の茶摘みができる環境が整いました。
そして今年、念願の茶摘みができる環境が整いました。
「ようやく、お客様に茶摘みを楽しんでもらえるまでになりました」
そう嬉しそうに語るスタッフさんの表情に、私たちも思わず胸が熱くなりました。長い月日と深い愛情を注がれて育った、努力の結晶ともいえるこの茶畑。そんな特別な場所で育まれた「貴重な新茶」を、いよいよ手摘みさせていただきます。
そう嬉しそうに語るスタッフさんの表情に、私たちも思わず胸が熱くなりました。長い月日と深い愛情を注がれて育った、努力の結晶ともいえるこの茶畑。そんな特別な場所で育まれた「貴重な新茶」を、いよいよ手摘みさせていただきます。

ここでスタッフさんから、新茶を摘むための大事なキーワードを教わりました。それが
「一心二葉(いっしんによう)」
お茶の木の枝の先端にある新芽(芯)と、そのすぐ下にある2枚の葉を二葉と呼び、この3枚の部分だけを丁寧に手摘みしていく伝統的な手法です。
生まれたばかりの若い芽は冬の厳しい寒さに耐え、お茶の甘みと旨味がぎゅっと凝縮され、渋みが少ないのが特長です。新茶はこの生まれたばかりの茶葉しか使わない贅沢なお茶のため、この手法で摘んでつくるお茶は最高級とされています。
生まれたばかりの若い芽は冬の厳しい寒さに耐え、お茶の甘みと旨味がぎゅっと凝縮され、渋みが少ないのが特長です。新茶はこの生まれたばかりの茶葉しか使わない贅沢なお茶のため、この手法で摘んでつくるお茶は最高級とされています。

宝探しをするように茶の木を覗き込み、やわらかな新芽を優しく指でつまんでポキッと摘み取ります。自分の手で摘むからこそ、葉のみずみずしさや命の力強さがダイレクトに伝わってきて、なんだか愛おしさすら湧いてくるほど。
茶摘みを行った後は、自身で摘んだ茶葉を手揉みして試飲できます。採れたての生茶葉を自分の手で揉み込んで、製茶する工程まで体験できるのは贅沢ですよね。
茶摘みを行った後は、自身で摘んだ茶葉を手揉みして試飲できます。採れたての生茶葉を自分の手で揉み込んで、製茶する工程まで体験できるのは贅沢ですよね。
自分好みのお茶をつくる「合組体験」

「五感で愉しむお茶作り」は5月中旬までですが、それ以降もお茶のディープな世界に浸ることができるプログラムが用意されています。それが、「新茶合組(ごうぐみ)体験」。浅蒸し茶や深蒸し茶の特長や産地・品種ごとの違いを感じながら、好きな茶葉を選びブレンドすることができます。世界に一つだけのブレンド茶をつくれるなんて、お茶好きとしては堪らないひととき!

オリジナルのお茶は、地元の名店「巌邑堂(がんゆうどう)」の上生菓子といただきます。残った茶葉は缶に入れてお土産として持ち帰ることができ、帰宅してからも旅の思い出を語りながら自宅で楽しめますよ。
客室や温泉、食事も!まるごと“お茶のおもてなし”

お茶の魅力を五感で楽しむ温泉滞在――。
そんな“美茶楽湯治(びちゃらくとうじ)”をテーマに掲げる「界 遠州」で、今回は新客室「茶ごもり特別室」に宿泊しました。その名の通り、一歩もお部屋から出ることなく、極上の煎茶と温泉を心ゆくまで堪能できる贅沢な空間です。
そんな“美茶楽湯治(びちゃらくとうじ)”をテーマに掲げる「界 遠州」で、今回は新客室「茶ごもり特別室」に宿泊しました。その名の通り、一歩もお部屋から出ることなく、極上の煎茶と温泉を心ゆくまで堪能できる贅沢な空間です。

ここでの楽しみは、滞在中何度でも体験できる「私だけの一杯」。
10種類の茶葉と5種類の茶器から、今の気分に合わせたお茶を選び、客室でゆっくりと味わえます。用意されているのは、老舗製茶問屋『和田長治商店』の協力の下、煎茶道の師範資格を持つスタッフがこの客室のためだけに厳選した静岡県産の茶葉。それぞれに最適な温度や淹れ方が記された「ティーカード」を参考に、丁寧にお茶を淹れていきます。
お湯の温度や茶葉によって大きく表情を変える、お茶の奥深さには驚くばかり。この日編集部が選んだ「さえあかり」のまろやかな甘みとやさしい風味は、日常の忙しさを忘れさせ、旅の疲れをそっと癒やしてくれました。
10種類の茶葉と5種類の茶器から、今の気分に合わせたお茶を選び、客室でゆっくりと味わえます。用意されているのは、老舗製茶問屋『和田長治商店』の協力の下、煎茶道の師範資格を持つスタッフがこの客室のためだけに厳選した静岡県産の茶葉。それぞれに最適な温度や淹れ方が記された「ティーカード」を参考に、丁寧にお茶を淹れていきます。
お湯の温度や茶葉によって大きく表情を変える、お茶の奥深さには驚くばかり。この日編集部が選んだ「さえあかり」のまろやかな甘みとやさしい風味は、日常の忙しさを忘れさせ、旅の疲れをそっと癒やしてくれました。

「茶ごもり特別室」の客室露天風呂では、湯船に浸かってリラックスしながら冷たい水出し茶をいただくことができます。爽やかなお茶の香りと温泉に包まれるひとときは、まさに温泉とお茶の相乗効果を肌で感じるおもてなし。宿のコンセプトである“美茶楽湯治”を心ゆくまで体感できます。
静岡の豊かな海の恵みに心満たされる

美食の宝庫・静岡ならではの極上の味覚に出合えるのも醍醐味の一つ。
浜名湖名物の「うなぎ」をはじめ、遠州灘の豊かな海が育んだ「とらふぐ」を贅沢に仕立てた特別会席が、旅の夜を華やかに彩ります。さらに翌朝には、古くから茶葉の保管に使われてきた本物の茶箱にお料理を詰め込んだ、遊び心あふれる「茶箱朝食」が登場。蓋をあける瞬間のワクワク感とともに、お腹と心を満たしてくれます。
浜名湖名物の「うなぎ」をはじめ、遠州灘の豊かな海が育んだ「とらふぐ」を贅沢に仕立てた特別会席が、旅の夜を華やかに彩ります。さらに翌朝には、古くから茶葉の保管に使われてきた本物の茶箱にお料理を詰め込んだ、遊び心あふれる「茶箱朝食」が登場。蓋をあける瞬間のワクワク感とともに、お腹と心を満たしてくれます。
五感がほどける至福の湯浴み

こだわりの温泉も見逃せません。全国的にも塩分濃度が高い塩化物強塩温泉が身体を包み込み、日頃の緊張を時ほぐしてくれます。なかでも、熟練の職人が仕上げた大きな桶型のヒバの露天風呂「華の湯」は格別。湯面には地元静岡の茶葉を詰め込んだ籠が浮かび、爽やかな茶葉の香りを胸いっぱいに吸い込みながら至福の湯浴みを満喫できます。
湯上がり後のお楽しみは、12種類の茶葉をそろえた「ティーセラー」での一杯。中庭の「つむぎ茶畑」と雄大な浜名湖の絶景を望む小上がり空間で、お気に入りのお茶を手にゆったり過ごせます。五感が満たされていくような寛ぎの時間は、ここでしか味わえない贅沢です。
湯上がり後のお楽しみは、12種類の茶葉をそろえた「ティーセラー」での一杯。中庭の「つむぎ茶畑」と雄大な浜名湖の絶景を望む小上がり空間で、お気に入りのお茶を手にゆったり過ごせます。五感が満たされていくような寛ぎの時間は、ここでしか味わえない贅沢です。
界 遠州(静岡県・舘山寺温泉)
住所/静岡県浜松市中央区舘山寺町399-1
アクセス/遠州鉄道バス「浜名湖ベイストリート」にて下車 徒歩1分
TEL/050-3134-8092(界 予約センター)
住所/静岡県浜松市中央区舘山寺町399-1
アクセス/遠州鉄道バス「浜名湖ベイストリート」にて下車 徒歩1分
TEL/050-3134-8092(界 予約センター)
少し足をのばして、老舗のお茶屋さんへ
まだまだお茶を味わい尽くしたい!そんな方におすすめなのが、宿から車で15分ほどの場所にある、自園自製のお茶屋さん『まるたま製茶』。“自分の子どもに自信を持って飲ませたいお茶づくり”を掲げ、自然の恵みをそのままに、除草剤を一切使わない環境にやさしいお茶栽培を行っています。

古い小屋をリノベーションしたおしゃれなカフェでは、自家製のお茶やスイーツが味わえ、旅の思い出にぴったりな茶葉や茶器が並ぶ直売所も併設されています。手揉みの新茶やほうじ茶、和紅茶など、目移りしてしまうほど種類豊富に揃うお茶の数々。編集部も時間を忘れて、お土産選びに夢中になりました。

また、こちらでぜひ体験いただきたいのが、随時開催されているお茶にまつわるワークショップ。
私たちが訪れた時期は、界 遠州の宿泊者限定「新茶摘みと製茶体験」が開催されていました。茶揉みの師範の指南を受けながら、みずみずしく柔らかい新芽をひとつずつ手作業で摘み取り、丹念に揉み込んで茶葉を仕上げていきます。完成したばかりの茶葉はその場でいただくことができ、師範が手掛けたお茶との飲み比べも楽しめます。オリジナルの甘いお茶請け菓子とともにいただく時間は格別ですよ。
私たちが訪れた時期は、界 遠州の宿泊者限定「新茶摘みと製茶体験」が開催されていました。茶揉みの師範の指南を受けながら、みずみずしく柔らかい新芽をひとつずつ手作業で摘み取り、丹念に揉み込んで茶葉を仕上げていきます。完成したばかりの茶葉はその場でいただくことができ、師範が手掛けたお茶との飲み比べも楽しめます。オリジナルの甘いお茶請け菓子とともにいただく時間は格別ですよ。

焙炉という作業台の上で、熟練の茶師の手技のみで4時間もの時間をかけて作られる『手揉み茶』。写真左上の若々しくみずみずしい新茶が、右下の乾燥した深い色の茶葉へと姿を変えるまでの工程に、気の遠くなるような職人の技と情熱が注がれているのを感じました
「普段何気なく飲んでいるお茶が、こんなにも丁寧に手間暇をかけてつくられていたなんて……」と、お茶への理解と感謝がより一層深まる体験になりました。
住所/静岡県浜松市浜名区細江町中川7172-917
アクセス/「聖隷三方原病院」から徒歩8分、「界 遠州」から車で15分
TEL/053-522-0517
営業/Instagram・HPをご覧ください。
アクセス/「聖隷三方原病院」から徒歩8分、「界 遠州」から車で15分
TEL/053-522-0517
営業/Instagram・HPをご覧ください。
至福の“お茶体験”へ
客室で静かに淹れる特別な一杯やお茶の香りに包まれる至福の温泉、そして地域の職人たちが紡ぐ情熱に触れる旅。ここで過ごした豊かな時間は、きっと日常に戻ってからの暮らしにも、心地よい余白を届けてくれるはずです。
次のお休みや連休には、五感がじんわりと満たされる、贅沢なお茶尽くしの旅へ出かけてみませんか?
次のお休みや連休には、五感がじんわりと満たされる、贅沢なお茶尽くしの旅へ出かけてみませんか?



















宿の“顔”でもある茶畑は、お茶の原料であるチャノキとドウダンツツジが交互に植えられ、秋になるとそれぞれが色づき、美しい「縞柄模様」が浮かびあがります。この模様は、地域の伝統工芸品である「遠州綿紬(めんつむぎ)」の縞柄をモチーフにしており、そこから「つむぎ茶畑」という名前がつけられました