「上野」と一口に言っても・・・。
花見客の連なり。ジャイアントパンダの動物園。
世界遺産の美術館。博物館の国宝公開… と、思い浮かぶイメージは人それぞれ。
上野で楽しむ“わたしの気まま散歩”
「上野」で混雑するのは、イーストサイド。
散策を楽しむなら“ウエストサイドエリア”へ。
上野公園のウエストサイドで。“気ままに”お散歩。
今記事で紹介する“上野ウエストサイドエリア”
今記事の目次
- 1.「上野公園」ウエストサイドエリアの魅力
- 1-1.人混みに煩わされずに“ゆったり散策”
- 1-2.豊かな自然環境と水辺の景色
- 1-2-1.江戸期から続く豊かな自然環境 上野の山・寛永寺・桜の名所
- 1-2-2.趣ある水辺の景色
- 1-2-3.周辺地域も閑静で散策向き。
- 1-3.財布に優しい文化施設や名所、スポットが点在。
- 1-3-1.静謐な一時を過ごして。「国立国会図書館国際子ども図書館」
- 1-3-2.美術作品も。建築も。“黒田記念館”
- 1-3-3.「つくる」思いを受け取る場ーgeidai art plazaー
- 1-3-4.緑の中の寺社仏閣&パワースポット
- 1-3-5.天気の良い日は、のんびりと。「不忍池のボート場」
- 1-4.下町文化を肌で感じる。文化施設&銭湯
- 1-5.ちょっと休憩。甘味の名店&昭和レトロの喫茶店
- 1-6.気ままに方向転換。オリジナルな散策を。
- 2.上野ウエストサイドエリア・散策モデルコース
- 3.散歩の疲れを癒やす「甘味店」&「喫茶店」
- 旅のおわりに
- 旅のInformation
1.「上野公園」ウエストサイドエリアの魅力
1-1.人混みに煩わされずに“ゆったり散策”
先に述べたように、ウエストサイドエリア(上野公園北西~西~南部)は、美術館や科学館等の人気施設、またJR上野駅からやや離れているため、中央部や東側と比較して、一年を通じて人通りが少ない傾向にあります。
【2017年10月初旬頃の公園ウエストサイドエリア“芸術の散歩道”付近。正面の門扉は、土日祝のみ開門する「東博」の『旧因州池田屋敷表門(黒門)』。当門は、江戸期に権勢を奮っていた鳥取藩池田家の江戸上屋敷表門だったもの。東京大学の“赤門(加賀藩・前田家屋敷門)”に対して“黒門”と並び称される。明治期に、東宮御所正門として、その後高松宮邸に引き継がれ、昭和29年に現在地の東博へ移築されている。堂々たる姿は一度は見る価値あり。】
1-2.豊かな自然環境と水辺の景色
けれども実際は、その様なイメージに反し、緑が多く、自然豊か。総面積は、約53万㎡にも及び、南部に位置する「不忍池(しのばずのいけ)」、西部の「東京藝術大学」やその周辺地域も園内に含む、広大なる“都市公園”です。
【美術館や陳列館、学食やアートプラザ(後述)等、東京藝大構内の一部の建物は、学生以外の一般の人でも見学可能。守衛所でその旨伝えれば構内へ入れる。
(画像は、大学美術館内「ミュージアムカフェ」からの眺め。右奥は、東京藝術大学音楽学部の正門。東京藝術大学大学美術館(入館有料)は、卒業生や教員らの寄贈作品を所蔵する美術館で、その作品群は、近現代の美術史を語る上で欠くことのできない貴重なものとなっている。企画展やコレクション展、学生の作品展などが開催される。)】
1-2-1.江戸期から続く豊かな自然環境 上野の山・寛永寺・桜の名所
寺を開いた天海大僧正が、当地の景観向上のために尽力し、奈良の吉野山から山桜の苗を取り寄せ、山内に植樹したのが“上野の桜”の始まりです。
【※天海大僧正(南光坊天海)は、天台宗の僧侶。
徳川三代に仕え、江戸の都市計画においては、陰陽道や風水に基づく江戸鎮護を構想したとされる。江戸幕府の影の立役者でもある天海は、100歳を超える長命だったと言われる。
(歌川広重「江戸名所百景」『上野清水堂不忍池 (うえのきよみずどうしのばずのいけ)』。左の松は「月の松」)】
といっても「上野公園」は、明治初期から現在まで穏やかで充実した自然環境が保たれていた訳ではありません。関東大震災や第二次世界大戦等など、様々な困難、紆余曲折を経て、その度に、地元の人々の惜しみない尽力によって、“上野の山”の自然景観は取り戻され、桜は植え継がれて、再生してきたのです。
【八重桜が満開の「旧東京音楽学校奏楽堂(重文)」。奏楽堂は、滝廉太郎等、多くの音楽家を輩出した東京藝術大学音楽学部の前身「東京音楽学校」の校舎(明治23/1890年建造)。かつては、藝大敷地内にあったが、老朽化により台東区が譲り受け、上野公園内の現在地へと移築、復元し、一般公開された。平成25年から再補修され、平成30年11月にリニューアルオープンしている。】
1-2-2.趣ある水辺の景色
1-2-3.周辺地域も閑静で散策向き。
1-3.財布に優しい文化施設や名所、スポットが点在。
1-3-1.静謐な一時を過ごして。「国立国会図書館国際子ども図書館」
1-3-2.美術作品も。建築も。“黒田記念館”
「黒田記念館」も、「国際子ども図書館」同様に、無料で入館、見学、鑑賞できる施設です。日本の洋画発展に大きく貢献した“近代洋画の父”黒田清輝の作品を主に展示しています。
【「黒田記念館」は、黒田清輝が残した遺言をもとに、遺産の一部により建てられた(昭和3/1928年竣工)記念館。設置された「美術研究所(現・東京文化財研究所)」により、昭和から平成にかけて、当館で美術に関する学術調査研究や資料収集が行われてきた。
平成12(2000)に研究所の業務が新庁舎へ移動したことに伴い、、当記念館が建築史上貴重なものであることから、改修工事が進められ、平成13年に「黒田記念館」として新たに開館し、翌年に国の登録有形文化財に指定された。
(画像は、イオニア式オーダーの列柱がデザインされた「黒田記念館」正面外観。)】
1-3-3.「つくる」思いを受け取る場ーgeidai art plazaー
1-3-4.緑の中の寺社仏閣&パワースポット
1-3-5.天気の良い日は、のんびりと。「不忍池のボート場」
1-4.下町文化を肌で感じる。文化施設&銭湯
温泉好きの方にお勧めなのが、天然温泉の銭湯です。
上野には、幾つかの天然温泉施設がありますが、中でも人気が高いのが、動物園通りから少し路地を入った住宅街にひっそりと建つ「六龍鉱泉(ろくりゅうこうせん)」です。
地域に根付き、今も現役の当銭湯は、外部も内部も、“ザ・銭湯”といったスタイル。脱衣場もゆったりとして、浴室も天井高く広々。ペンキ絵やタイル、体重計やロッカー等など、内装も調度品もレトロ感いっぱいです。
湯は、“黒湯の鉱泉”で、江戸っ子好みの湯の熱さ。泉質が良いと評判で、遠くからわざわざ出向いて来る人も多い人気湯です。散歩の後で入るひとっ風呂は、いつの季節でも爽快です。タオルは販売されているので、気が向いた時にフラリと利用することができます。(月・木が休日。詳細は以下の銭湯組合のHPで確認のこと。銭湯内の撮影は禁止)
1-5.ちょっと休憩。甘味の名店&昭和レトロの喫茶店
1-6.気ままに方向転換。オリジナルな散策を。
2.上野ウエストサイドエリア・散策モデルコース
コース通りに歩いても良いですが、あくまでもモデルコースです。参考程度にして、ご自身の足の向くままに、気になるスポットを緩やかな繋げて“気ままなお散歩”を楽しんで下さい。
【「上野東照宮」は、寛永4(1627)年創建の神社。“東照宮”とは、家康公(東照大権現)を祀った神社を指すが、日光を筆頭に、当宮を含めて全国各地に数多くある。1651年築の金色の豪奢な社殿は、戦禍も地震も免れた江戸初期の建造物として大変貴重なもので、国の重要文化財に指定されている。遠い日光へ参拝できない江戸の人々のために日光東照宮に準じた社殿を建立したと伝わる。
「上野東照宮」は、拝観無料だが、「唐門」から先、菱格子の「透塀」内側の「社殿」を見学するには、拝観料が要る。日光に匹敵する豪華絢爛な唐門や社殿は、観るべき価値あり。(画像奥が「唐門」、手前が「社殿」一部)】
散歩モデルコース(鶯谷駅から御徒町駅方面へ)
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◆国立国際子ども図書館
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◆黒田記念館⇒◇東京国立博物館・庭園(※春秋に公開)
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◆藝大アートプラザ⇒◇赤レンガ1号館 ◇旧吉田屋酒店⇒★①桃林堂 ★②カヤバ珈琲 ★③愛玉子→《谷中方面》へ
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◆旧東京音楽学校奏楽堂⇒★④新鶯亭
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◆上野東照宮⇒◇六龍鉱泉(天然温泉の銭湯)→《根津方面》
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◆上野大仏⇒★⑤喫茶去⇒◇花園稲荷神社◇五條天神社
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◆清水観音堂⇒◇不忍池弁天堂⇒◇上野公園ボート場
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◆下町風俗資料館⇒★⑥みはし上野本店 ★⑦みつばち 本店 ★⑧うさぎや
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[JR御徒町駅]⇒★⑨カフェラパン ★⑩御徒町 六曜館 ★⑪ギャラン ★⑫丘
【日本における音楽教育の中心的な役割を担ってきた「旧東京音楽学校奏楽堂」は、“生きた文化財”として、建物の公開のみならず、貴重な音楽資料を展示する他、定期的に演奏会が行われている。
東京藝大音楽部学生、院生が演奏する「日曜コンサート」は、通常の入館料のみで入場できる。他にも特別コンサートが様々に開催される(入場料はコンサート毎に異なる)。「奏楽堂」の基本の公開日は、日・火・水曜日だが、月曜日以外は、ホールの使用がなければ公開。公開日、コンサート等などの詳細は、HPで確認のこと。
(画像は「奏楽堂」内ホール舞台。舞台正面のパイプオルガンは、コンサート用としては、日本最古。大正9(1920)年に徳川頼貞侯が英国より購入、昭和3年(1928)に東京音楽学校へ寄贈したものだが、現役であり、演奏でその音色を聴くことが出来る。)】
モデルコースを確認してみましょう。
3.散歩の疲れを癒やす「甘味店」&「喫茶店」
①桃林堂 上野店
- 住所
- 台東区上野桜木1-5-7
- 営業時間
- 販売 9:30~17:00
喫茶 9:30~16:00 ※繁忙期等休業あり
- 定休日
- 月曜日(祝日・繁忙期は営業)、元日〜1月3日
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
②カヤバ珈琲
③愛玉子(オーギョーチー)
谷根千の散策では、外せない有名店「愛玉子」ですが、所在地は“上野桜木町”。
「藝大アートプラザ」から徒歩5,6分、「カヤバ珈琲」からなら歩いて1分の距離にあり、ウエストサイドエリアの散策で寄り道しやすい場所に店はあります。古民家そのままの店内は、タイムスリップしたような感覚に陥る昭和レトロな空間です。
店名であり、店の名物でもある“愛玉子”とは、台湾・新高山の山麓に密生する植物(アイギョクシン)の乾燥させた実と水で作った寒天状の加工食品。台湾三大美容ゼリーの一つで、亀ゼリー、仙草ゼリーと並ぶ、台湾スイーツの一種です。栄養価が高く、“腎臓の妙薬”と云われています。
見た目は、寒天やゼリーのようですが、舌触りや食感は、まるっきり異なり、独特の弾力があり、甘酸っぱいレモンシロップと清涼感あるハーモーニーを奏でます。
【琥珀色の愛玉子とレモンシロップ、クコの実が入った基本の『愛玉子』。色合いも器もレトロ感いっぱい。】
④新鶯亭 (しんうぐいすてい)
⑤喫茶去(きっさこ)
中でも評判が高いのが、濃厚な“抹茶アイス”がたっぷりとのせられた『クリームあんみつ』です。
上野は、“あんみつ”激戦区と言っても良いほどに名店が揃っていますが、当店の『クリームあんみつ』は、他店とは一線を画した、独自路線を歩むものです。
器からはみ出さんばかりに盛られた、クコの実付きの抹茶アイスの下には、豆乳アイス、つぶ餡、寒天、白玉、生麩など様々な具が盛られています。珍しいのが、求肥の替わりに入った、むっちりとした食味の生麩と、抹茶の寒天です。素材それぞれの食味、濃厚な抹茶の風味、クリームの円やかさ、蜜や餡の甘味が渾然一体となった味わいは、個性的で格別と人気を博しています。【黒蜜と口直しの昆布の佃煮が付いた『クリームあんみつ』】
⑥みはし 上野本店
⑦甘味処みつばち 本店
「みつばち」は、明治42(1909)年に創業した老舗甘味店。
“小倉アイス”発祥の店として知られる名店ですが、今もその味は健在です。この店で食べるのなら、やっぱり『元祖 小倉アイス』です。北海道産の大納言をたっぷり用いた『小倉アイス』は、小豆の他は、砂糖と塩、水だけ。大正期に誕生した当時のままに、現在も作られています。
クリームや牛乳が入らなくとも、舌触りは滑らかで、ふんわりした食感。軽やかで、円やかです。乳脂肪分がない分、後味すっきり、小豆本来の旨味が感じられ、上品な味わいです。注文してから店頭で最中に挟むため、パリパリ、サクサクとした最中の食感も小気味よく、美味しく頂けます。
【大判焼き、土産用甘味が種々様々に販売されている店頭。画像は、『元祖 小倉アイス』。小倉アイスは他に、茹で小豆入りの『小倉アイスSP』、求肥入りのものもある。アイスクリームは、全部で十数種並び、創業100年を記念して発売された『黒糖アイス』も人気を集めている。】
⑧うさぎや
⑨カフェラパン(cafe Lapin)
遅いランチや散策の休憩なら、珈琲にぴったりと合うサンドイッチがお勧め。
ハムや野菜、ツナ等など種類も様々ですが、フワフワのパンも具材もしっかりとした味わい。パンと具の調和も良く、ボリュームもあり、心もお腹も満たされます。値段も良心的で、コストパフォマンスも抜群です。
他にクロックマダムやクロックムッシュ、コンビーフトーストやピザトースト等などのトースト系も種類豊富に揃っています。おやつ感覚で頂けるハーフサイズのサンドイッチ、ケーキ類もあり、使い勝手も、味も良い名店です。
【画像は、ハムや玉子、新鮮でシャキシャキの野菜が色とりどりに挟まれた「ミックスサンド」。添えられているポテトサラダも秀逸と評判。】
⑩御徒町 六曜館
- 住所
- 台東区上野5-24-2
- 営業時間
- 平日 8:00~20:00
土曜日 11:30~20:00
日・祝 11:30~18:00
- 定休日
- 日曜・祝(不定休)
- 平均予算
- ~¥999 /~¥999
⑪ギャラン
⑫丘 (オカ)
- 住所
- 台東区上野6-5-3 尾中ビル B1F
- 営業時間
- [火~金]
9:30~17:30
[土・日・祝]
9:30~17:00
モーニングは11:00まで
- 定休日
- 月曜(祝日の場合は翌日休)・元日
- 平均予算
- ~¥999 /~¥999
旅のおわりに
旅のInformation
東博の庭園開放について
春の庭園開放は、例年3月中旬頃~5月中旬頃。
秋の庭園開放は、例年10月下旬頃~12月初旬。
けれども、そういったステレオタイプなイメージを裏切って、「上野」には、美術鑑賞や博物館見学といった積極的な目的をもたなくても、“気ままに歩く”だけでも楽しめるエリアがあります。【上野公園内「花園稲荷神社」】