"突然の悲劇"後を描く『アマンダと僕』から、
それでも変わらずに残る、真に美しいものが見えてくる――
それでも変わらずに残る、真に美しいものが見えてくる――

特別な二人じゃない、から。"パリの日常"へ誘う『アマンダと僕』
パリで起きた、突然のテロ。この悲劇によって姉を失った青年と、母を亡くした少女が、共に悲しみを乗り越えるまでを描くフランス映画『アマンダと僕』が、6月22日(土)に公開を迎えました。
第31回東京国際映画祭コンペティションでは、審査員の満場一致で、最高賞となる東京グランプリ&最優秀脚本賞をダブル受賞。今回は、こちらの注目作を取り上げます。
第31回東京国際映画祭コンペティションでは、審査員の満場一致で、最高賞となる東京グランプリ&最優秀脚本賞をダブル受賞。今回は、こちらの注目作を取り上げます。
筆者が鑑賞後、心に残ったのは―――
どんな悲劇に見舞われても現実を受け入れ、まっすぐに前を見据えて歩み出そうとする、市井の人々の等身大の姿。そして、それでも夏の太陽はさんさんと輝き、木々や葉は青々と茂り、街を包み込む…パリの美しい風景でした。
テロが起きた状況を考えれば、怒りや憎しみ、絶望といった感情に捉われそうになるもの。テロに屈せず前を向く彼らは、2015年にパリで起きた同時多発テロ事件での市民の姿と重なります。
どんな悲劇に見舞われても現実を受け入れ、まっすぐに前を見据えて歩み出そうとする、市井の人々の等身大の姿。そして、それでも夏の太陽はさんさんと輝き、木々や葉は青々と茂り、街を包み込む…パリの美しい風景でした。
テロが起きた状況を考えれば、怒りや憎しみ、絶望といった感情に捉われそうになるもの。テロに屈せず前を向く彼らは、2015年にパリで起きた同時多発テロ事件での市民の姿と重なります。
本作の素敵なシーンをセレクト

そのような、『アマンダと僕』の魅力に、ちょっと触れてみませんか。今回は、本作から選んだ、パリでの暮らしの素敵なシーンをご紹介します。
本作は、テロ事件の描写も含めて「自分が住んでいるパリの風景を描きたい」という監督の想いのもとで製作されました。それゆえ、一般的に「パリといえば、お洒落」というイメージがありますが、『アマンダと僕』で描かれるのは、流行のファッションもガーリーなお店も登場しない、リアルなパリの日常。
この街と共に生きる市井の人々の視点で、浸透しているライフスタイル、家族愛や絆に触れることができますよ。
本作は、テロ事件の描写も含めて「自分が住んでいるパリの風景を描きたい」という監督の想いのもとで製作されました。それゆえ、一般的に「パリといえば、お洒落」というイメージがありますが、『アマンダと僕』で描かれるのは、流行のファッションもガーリーなお店も登場しない、リアルなパリの日常。
この街と共に生きる市井の人々の視点で、浸透しているライフスタイル、家族愛や絆に触れることができますよ。
『アマンダと僕』が魅せる、飾らない暮らし -3つのこと-
-1- まるで友達のよう。親と子の、仲良しな関係

© 2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA
本作の愛らしいヒロイン、7歳のアマンダ。そして、英語教師として働くシングルマザーのサンドリーヌ。
パリで母娘二人暮らしをしていますが、きっと観ている方は、サンドリーヌがアマンダをあまり子ども扱いしていないことに、すぐ気付くはず。
なかでも印象的なのは、母の本にふと目をやったアマンダが、その表紙に書かれたタイトル「エルヴィスは建物を出た(Elvis has left the building)」って?と聞くシーン。
サンドリーヌはその言葉の意味を教えてあげるとともに、エルヴィスの音楽をかけて・・・自ずとノリノリに。母娘二人で無邪気に踊りあう、水入らずの時間を楽しみます。
パリで母娘二人暮らしをしていますが、きっと観ている方は、サンドリーヌがアマンダをあまり子ども扱いしていないことに、すぐ気付くはず。
なかでも印象的なのは、母の本にふと目をやったアマンダが、その表紙に書かれたタイトル「エルヴィスは建物を出た(Elvis has left the building)」って?と聞くシーン。
サンドリーヌはその言葉の意味を教えてあげるとともに、エルヴィスの音楽をかけて・・・自ずとノリノリに。母娘二人で無邪気に踊りあう、水入らずの時間を楽しみます。
-2- 恋に落ちる喜びを、大切にする

© 2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA
サンドリーヌの弟、ダヴィッドは、ご近所に住んでいます。それゆえ、互いに忙しいときは助け合ったりと、持ちつ持たれつの仲。
そんな姉弟の素敵な関係性を感じられるのが、恋愛トーク。「頬が赤いよ」「今度は誰?また失敗しない?」と気にかけるダヴィッドに対し、サンドリーヌはSNSで出会った男性のことを楽しそうに話します。いくつになっても恋のときめきは、大切にしたいですよね。
そんな姉弟の素敵な関係性を感じられるのが、恋愛トーク。「頬が赤いよ」「今度は誰?また失敗しない?」と気にかけるダヴィッドに対し、サンドリーヌはSNSで出会った男性のことを楽しそうに話します。いくつになっても恋のときめきは、大切にしたいですよね。

© 2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA
ちなみにダヴィッドも、自分が管理人をしているアパートに、ピアノ教師・レナが住み始めて、恋に落ちます。
自然体でさりげなく、気になるレナとの距離を縮めるダヴィッドの姿に、素敵・・と感じる女性も多いはず。
自然体でさりげなく、気になるレナとの距離を縮めるダヴィッドの姿に、素敵・・と感じる女性も多いはず。
-3- 普段の移動は自転車で* 愛着が湧くパリのローカル感

出典:unsplash.com
自転車に乗って疾走するのって、すがすがしくて気持ちいいですよね。劇中では、そんな気分に浸れますよ。
サンドリーヌも、ダヴィッドも、自転車ライフ。仕事先やお買い物、最寄りの駅まで行ったりと、基本的な生活圏の移動は、自転車一台あれば事足りる日常が描かれています。
サンドリーヌも、ダヴィッドも、自転車ライフ。仕事先やお買い物、最寄りの駅まで行ったりと、基本的な生活圏の移動は、自転車一台あれば事足りる日常が描かれています。

出典:unsplash.com
自転車で移動するからこそ、毎日自分が暮らす街の風景を目で楽しめて、愛着が湧いていく。体だけでなく心もフットワークを軽く保つための秘訣にも感じられますよ*
* * *
パリで暮らす人たちの温かく強い絆、そして、皆が愛するパリの風景。
その普遍的な魅力は、許しがたい残虐な犯罪が起こっても輝きが失われないことを、本作で目にしてみてください。きっと、自分が体験したかのような感じ方ができるかもしれません。
その普遍的な魅力は、許しがたい残虐な犯罪が起こっても輝きが失われないことを、本作で目にしてみてください。きっと、自分が体験したかのような感じ方ができるかもしれません。
:『アマンダと僕』公開情報:

© 2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA
<あらすじ>
夏の日差し溢れるパリ。便利屋業として働く青年・ダヴィッドは、パリにやってきた美しい女性・レナと出会い、恋に落ちる。 穏やかで幸せな生活を送っていたが―― 突然の悲劇で大切な姉が亡くなり、ダヴィッドは悲しみに暮れる。そして彼は、身寄りがなくひとりぼっちになってしまった姪・アマンダの世話を引き受けることになる…。
夏の日差し溢れるパリ。便利屋業として働く青年・ダヴィッドは、パリにやってきた美しい女性・レナと出会い、恋に落ちる。 穏やかで幸せな生活を送っていたが―― 突然の悲劇で大切な姉が亡くなり、ダヴィッドは悲しみに暮れる。そして彼は、身寄りがなくひとりぼっちになってしまった姪・アマンダの世話を引き受けることになる…。
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シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて、全国順次公開中。
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