素敵な挿絵に忘れられないストーリー。もう一度あの世界へ

そもそも「絵本」ってどこからどうやって始まったの?

本の普及は「印刷技術の発展」とともに

はじまりは「子どもに喜ばれなかった子どもの本」

いわゆる絵本の伝統はイギリスに根付いています。イギリス文学の普及は、1476年、グーテンベルクの印刷機に衝撃を受けた商人、ウィリアム・キャクストンが初の印刷会社を設立したことにはじまります。
その後、1600年代後半に行商人チャップマンが日用品とともに売り歩いた、ポケットサイズの安価な冊子が庶民に浸透し始めました。
『シンデレラ』『青ひげ』『巨人殺しのジャック』などは、子どもにも広く読まれ、児童文学という形態はチャップ・ブックとともに始まったと言われています。
「子どもが読んで楽しい子どもの本」がロンドンで初出版

シャルル・ペロー作品やグリム童話、アンデルセン童話の英訳も、ニューベリーの手によって刊行されました。本当の意味での子どものための絵本は、ここから始まったと言われています。
子どもの本の父、ニューベリーについて学べる絵本
自分にも人にも贈りたくなる【とっておきの絵本】14選
大人になっても引き込まれる世界観
不朽の名作『不思議の国のアリス』
永遠のあこがれ?『白雪姫』
感性が磨かれるアーティスティックなイラスト
旅に出たくなる『A Lion in Paris(パリにきたライオン)』
未来への希望『やくそく』
ニコラ・デイビス 文 ローラ・カーリン 絵 さくま ゆみこ 訳(BL出版 2014年)
すさんだ街で、貧しい人たちからスリをして生きていた"わたし"。ある晩、老婆のカバンをひったくろうとしたことがきっかけで、彼女の人生は動きはじめます。ボローニャ・ラガッツィ賞フィクションの部、優秀賞受賞作。
好きなものがある人生って楽しい
ファッションが好き『おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし』
エイミー デ・ラ・ヘイ 著 エミリー・サットン 絵 たかお ゆうこ 訳(徳間書店 2015年)
クララは、人形やぬいぐるみのために帽子や洋服を作るのが大好き。帽子を創るときは、いつも帽子屋であるおばあちゃんの帽子を被ります。
Photo by Yasuko
ノースヨークシャー生まれのサットンは、クラフトや版画の制作も行っている大人気のイラストレーター。1919年創業のヨークの老舗ティールーム「Bettys(ベティーズ)」とコラボし、紅茶のパッケージやビスケット缶のデザインもしています。細部まで丁寧に描かれた異国情緒漂うイラストは、色使いが素敵で、一目で恋に落ちてしまいますよ。
本を愛する人に『ルリユールおじさん』
傍に置いておきたい宝物のような絵本
素敵が散りばめられた『BROOCH(ブローチ)』
交錯する想い『アオサギとツル』
ダーリ採集によるロシア民話より
ユーリー・ノルシュテイン 原案 フランチェスカ・ヤーブルソヴァ 絵 こじま ひろこ 訳(未知谷 2006年)
映像の詩人とも呼ばれるロシアアニメーションの巨匠ノルシュテインの傑作が、妻ヤーブルソヴァの挿絵を添えて絵本になりました。美しい装飾が施された絵は、ロシアの古いお屋敷に飾られた絵画のよう。
惹かれ合っているアオサギとツルは、求婚をし合いながらもすれ違い、意地を張り合ってしまいます。繰り返されるすれ違いが寂しくもコミカルで、憎めない愛らしさのある"2人"に感情移入してしまいます。愛することと孤独、後悔、大人になった今だからこそ分かるストーリーなのではないでしょうか。アニメーションの世界観もとっても素敵ですよ。
ずっと心にしまっておきたいストーリー
悲しみを乗り越えるために『わすれられないおくりもの』
スーザン・バーレイ さく・え 小川 仁央 やく(評論社 1986年)
野原のみんなからとても頼りにされていたアナグマ。「長いトンネルの向こうに行くよ、さようなら」という手紙を残していなくなりました。かけがえのない友を失った悲しみにくれる仲間たち。やがて、アナグマとの思い出を語り合いながら、生きるための希望を見つけていきます。アナグマが残してくれた"おくりもの"とは、いったいなんだったのでしょうか?
喪失を乗り越える導きをくれる、ずっと大切にしたいストーリー。イラストとともに、良質な絵本です。
人間の尊厳とは『ゆきのしたのなまえ』
動物たちのひみつの暮らしを覗く
ほほえましい動物たちの世界『ひみつがあります』
壮大なミニチュア舞台『マウスマンション サムとユリア』
カリーナ・スカープマン ないとう りえこ やく(メディアファクトリー 2011年)
挿絵ではないですが、あまりの素晴らしさに取り上げました。オランダ出身のスカープマンが3年の歳月をかけて手作りした、高さ3mのドールハウスを舞台に繰り広げられる、ねずみたちの愛情あふれる物語。初版は、オランダの小さな出版社から発売されるや、2日で完売したそうです。
Photo by Yasuko
こちらは、アムステルダム中央図書館に展示してある、マウスマンションの実物の一部です。通常のマンションにはないようなユニークなお部屋もあり、何時間かけても隅から隅までじっくり観察したくなります。愛嬌のあるねずみたちが、各々趣味や仕事に勤しむ姿も微笑ましい、ドールハウス好きが夢中になれる1冊。こんなマンションに住んでみたいですね。
自然の美しさに浸る歓び
可憐な妖精たちの世界『リーサの庭の花まつり』
エルサ・ベスコフ さく・え 石井 登志子 やく(童話館出版 2001年)
森のはずれに住むリーサは、ある日、夏至の妖精から夏至まつりに招待されます。そこでは、美しいバラの女王がお客様の花々を歓迎していました。
色で感じる幻想的な時間『あおのじかん』
絵本との出合いが人生を変えることも
記事を読んで下さっているあなたが、宝物にしたくなるような絵本に出合い、その延長にある"あなただけの物語"をより豊かに過ごせますように*