「消えたい」に覆いつくされる前に

PART1:あなたの辛さや苦しさは、持っていていい
他の人にとってはなんでもないのだから、ネガティブな感情に支配されていると、そんな考えが頭をよぎります。しかしそれは、物事に真面目に取り組もうとしているからこそ抱く、自然な感情。辛さ、苦しさは、あなたが正面から物事に向き合おうとしているから生まれる、当たり前のものなのです。まずは、そんな考えを受け入れやすくしてくれる本を3冊ご紹介します。
すべて投げ出してもいいんです
辛さや苦しさを感じやすいのは個人の性質が原因?
■『鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』イルセ・サン 著、枇谷玲子 訳(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
生きにくさを感じるのは、あなたの頑張りや努力が足りないのではなく、あなたが本来もっている性質のためかもしれません。最近ニュースなどでも取り上げられるようになった、HSP。5人に1人は該当すると言われている、物事に敏感に、繊細に反応してしまう性質のことです。この本では、その性質を愛すべき「能力」として解説。苦しさや辛さの原因を見極め、自分に向き合えば、逆にそれを活かすこともできるというHSPの可能性を教えてくれます。
あの文豪も辛さや苦しさを感じていた
■『絶望名人カフカの人生論』フランツ・カフカ 著、頭木樹 訳(新潮社)
『変身』などで知られるチェコ出身の作家、フランツ・カフカ。孤独感や不安を感じさせる、ユニークでシュールな世界観の小説を書いてきましたが、生前は作家としてあまり評価されていませんでした。私生活では体が弱く、仕事嫌いで、家族ともいまくいっていなかったんだとか。こちらの本は、そんなカフカのが残した日記やノート、手紙などから言葉を集めた名言集。カフカ自身の強烈ともいえるほどのネガティブさは、共感しつつも、どこかくすっと笑ってしまうユーモアさも持ち合わせています。一緒に絶望してくれるのに、なぜか慰められているような気分にもなる1冊です。
PART2:「消えたい」の根っこには「自分嫌い」がある?
「しんどい」の根底に何があるかを理解する
■『しんどい心にさようなら 生きやすくなる55の考え方』きい(KADOKAWA)
「しんどい」と思う瞬間はひとそれぞれ。しかしその根底には、共通した考え方や意識の仕方があるかもしれません。統合失調症や依存症などにさいなまれ、独自に心理学などを学んで回復した経験を持つ著者によるこの本では、自分の経験を踏まえて「しんどい」と思うシーンを55項目に分け、よく陥りやすい考え方などを解説。自分が嫌い、嫌だという感情に支配されている時、すぐに自分のことを好きになるのは難しいもの。しかしなぜそう思ってしまうのか、どういう時に思うのかという考え方のパターンをつかめば、自分の心を大切に扱うことができます。
気づかずに背負っている罪悪感はありませんか?
■『いつも自分のせいにする罪悪感がすーっと消えてなくなる本』根本裕幸(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「すべては自分のせい」「自分は誰かに愛されるはずがない」と考え、生きづらさを感じている人にぜひ読んでほしい1冊。明らかに自分に非がない時にも罪悪感を感じてしまう人は、まず自分を許してあげてください。罪悪感なんてないという人も、「他人の期待に過剰に応えようとする」「人からの愛情や親切を素直に受けとれない」といったことに身に覚えがあれば、気づかずに自分を責めているかもしれません。本書では罪悪感のタイプを7つに分け、なぜ感じてしまうのか、どうしたら自分を許せるようになるのか解説。少しでも罪悪感を取り払い、背負っているものを減らしてみましょう。
人の目をどうしても気にしてしまうあなたへ
■『うつくしい人』西加奈子(幻冬舎)
こちらは西加奈子さんによる小説。主人公は、人の目を気にしながら生きている女性・百合です。ある時小さなミスから仕事を辞め、衝動的に離島のホテルへ一人旅に出かけます。そこでバーテンの坂崎やドイツ人のマティアスと知り合ったり、他人の目を気にせずひきこもっている姉のことを思い出したり。新しい出会いや過去と向き合うことを通して、百合は自分の心がほぐれていくのを感じます。人の目を気にして「自分はどう見られているのか?」「他人に合わせて普通にならなくちゃ」と考えすぎている方や、他人を気にしすぎる自分に負い目を感じている方におすすめです。
PART3:考え方を変えて、背負い込むものをへらそう
力を抜いて生きるコツとは?
■『あやうく一生懸命生きるところだった』ハ・ワン 著、岡崎暢子 訳(ダイヤモンド社)
仕事にも恋愛にも子育てにも、全力。けれどどうしてこんなにも疲れ、思い描いていた人生とはかけ離れてしまったのだろう…。このエッセイの著者は、そんな想いに耐え切れなくなって40歳目前で仕事を辞め、「今日から、必死に生きるのはやめよう」と心に決めます。実験的に力を抜いて生きてみると、今までの生き方は何だったのか、今まで頑張りすぎていたのではないかと思うように。頑張りすぎな自分を変えたい方、どうやって力を抜いたらいいか分からない方は、本書の力の抜き方のコツをぜひ実践してみてください。
本当の意味の「雑に生きる」を知る
■『もうちょっと「雑」に生きてみないか』和田秀樹(新講社)
もっと雑に生きてみたいけれど、どうすればいいの?不真面目に生きる?もっとざっくばらんに振る舞う?こちらの本では、「雑」に生きることを「ゆるやかに、振れ幅を楽しむように生きること」としています。何事にも完璧を求めてしまう方は、「雑に生きる」ことさえまっすぐに実行しようとしてしまいます。自覚のない完璧の追求、言い換えれば強い思い込みがあると、そのままではどうしても雑に生きることができません。本書を読めば、そんな思い込みを解きほぐし、人生80%くらいでいいと思わせてくれます。
足りないところ探し、もうやめませんか?
■『「心がボロボロ」がスーッとラクになる本』水島広子(さくら舎)
いろいろなものを背負い込みすぎてもうしんどい、心が疲れたと感じる時、あなたは自分の足りないところばかりを見ているかもしれません。そうは言われても、完璧を求めて背負い込んでしまうのは自分の性質だから…と諦めないでください。こちらの本では、やさしい言葉でなぜ心がボロボロになってしまうのか、どうやったら傷ついた心を癒せるのかを解説。諦める前に、方向性を少し変えるだけで足りないところ探しをやめられる、新しい考え方に触れてみませんか?できることから実践して、心を少しずつ軽くしていきましょう。
PART4:他人を自分の心の中に受け入れてみよう
人は頼まれると喜ぶ?頼むための実践法
■『人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学』ハイディ・グラント 著、児島修 訳(徳間書店)
人に頼めない、頼むのが苦手と感じるのはなぜでしょうか。迷惑をかけたくないから?自分でやった方か早いから?断られるのが怖いから?本書では、コロンビア大学の社会心理学者が、最新科学をもとに頼む側・頼まれる側の心理を解説。意外と人は頼まれるのを嫌がってはおらず、きちんと誰に何を頼むかを考えれば、むしろ喜ばれるそうです。不安や自己嫌悪に陥った時はあえて他人に目を向け、何かを頼んでみることで、自分が何を恐れているかを知ることができるかもしれません。
気付かないところで、あなたはすでに誰かを頼っている
■『「人に頼りたくない」のも「弱みを見せたくない」のもあなたが人を信じていないから』小倉広(青春出版社)
上記の『人に頼む技術』が頼る側・頼られる側の心理に科学的に迫ったのに対して、こちらは頼れない人の心そのものを、精神的に迫っています。本書は、もしあなたが現状に行き詰りを感じているなら、一度勇気を出して他人を頼り、あえて「借り」を作って、その借りを返すために行動してみようと提案します。借りを作ってはいけないと考える方もいるかもしれませんが、それはただの思い込み。実際には、人は気付かないところですでに誰かを頼っているそうです。俯瞰して見てみれば、誰かを頼る時、ためらう必要などどこにもないのかもしれません。
ひとりの女性が、他人と触れ合おうとする物語
■『やわらかい砂のうえ』寺地はるな(祥伝社)
この小説の主人公は、税理士事務所に勤める24歳の万智子。ちょっと面倒くさい性格をしていて、自分に自信がないので誰にも心を開けず、今まで男性と付き合ったこともありません。しかしあるお客さんに頼まれ、週末だけウェディングドレスサロンの社長お手伝いをすることに。ある日サロンに現れた男性・早田さんに、万智子はときめきを感じるのですが…。いろいろな人や考え方と出会い、視野を広げていく万智子の物語。やわらかい砂のうえを歩くように不安定な人間関係で、一歩踏み込んでみようという勇気をくれる1冊です。
PART5:近い将来、やりたいことを考える
あの美味しかった食べ物、好きだった食べ物をもう一度
■『あつあつを召し上がれ』小川糸(新潮社)
あなたにとって、美味しかった食べ物、好きな食べ物は何ですか?こちらの短編集には、母から作り方を伝授されたお味噌汁や、家族みんなで食べた富士山みたいなかき氷など、読んでいるだけでお腹が減ってしまう料理の数々が登場します。あまりにも美味しそうなので、心をあたためてくれるだけでなく、あなたの記憶に残っている食べ物を思い出させてくれるかもしれません。読み終えたら、ぜひその食べ物を久しぶりに食べに行ったり、作ってみてくださいね。
あなたの想いを文字にしたためてみよう
■『水曜日の手紙』森沢明夫(KADOKAWA)
1週間に1度だけ開く、「水曜日郵便局」。水曜日に起こった出来事や考えた想いを手紙に書き、水曜日郵便局当てに送ると、代わりに誰かの水曜日の日常が書かれた手紙が届くというプロジェクトです。この小説は、そんな水曜日郵便局を利用する人たちのお話。見知らぬだれかとの一度限りの交換日記のような手紙交換を通して、くすぶっていた心の変化、毎日の愛おしさなどが描かれます。この物語に心が癒されたら、きっと誰かのために手紙を書いてみたくなりますよ。
シンプルな暮らし、始めてみませんか?
■『禅、シンプル生活のすすめ』枡野俊明(三笠書房)
今すぐにやりたいことは思いつかないけれど、今の気持ちを変えるために何かしてみたい――そんな時は、シンプルな生活を始めてみてはいかがでしょうか。こちらの本では、曹洞宗の住職が「禅的」と書いて「シンプル」と読ませる、今すぐできる暮らし方のススメを紹介。「ボーっとする時間を持つ」「十五分、早起きしてみる」など日常的に簡単に始められる行動や考え方を通して、心を軽くする方法を教えてくれます。心が反応してくれない時は、行動だけでもいいので、少しずつ変えてみてください。
PART6:知らないところで、役に立っていることもある
誰かとお話したくなる、「デート」の物語
■『おしまいのデート』瀬尾まいこ(集英社)
瀬尾まいこさんによる5編が収録された短編集です。恋人同士がするものというイメージの強い「デート」ですが、こちらの本では祖父と孫、元不良と老教師、それまで仲よくしたことがなかった同級生の男子同士、公園で犬を飼うOLと男子学生…といった、男と女以外の二人のデートを描きます。切ない物語も、意外な物語もありますが、いずれも優しい気持ちにあふれていて、相手を想う一言が心を動かすこともあると教えてくれます。
時を超えて、誰かに思いが届く奇跡
■『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎(新潮社)
30年ほど前に最後のレコーディングに臨んだ売れないロックバンド、20年ほど前に襲われている女性を助けた男、今現在ハイジャック事件に巻き込まれている女性、10年後にネットワークの専門家として活躍する女性……。本書は、そんな全く関係なさそうな人生が交差し、時を超えて、思いもよらない展開を引き起こす物語です。映画にもなっている表題作のほか、3編を収録。人はどこか思いもよらないところでつながっていて、意外な奇跡を起こすこともあるのだと思わせてくれる物語です。読み終わると、心が軽くなっているのを感じられますよ。
どこかで誰かとつながっていることもある
■『木曜日にはココアを』青山美智子(宝島社)
それぞれ主人公の異なる、12の小さな物語から成る短編集です。この物語の特徴は、1つの物語に、必ず1つ前の物語の主人公が登場すること。どの主人公も性別や立場、悩んでいることは違うのですが、新しい出会いや身近な人々、気に入った場所に触れ、前向きで優しい気持ちになっていきます。自分では気づいていなくても、みんなどこかでつながって、誰かの人生の一部になっているのではないか。そんな前向きな気持ちを抱かせてくれます。
本の世界に入り込んで、自分の心を癒してみよう

■『「すべて投げ出してしまいたい」と思ったら読む本』諸富祥彦(朝日新聞出版)
仕事も家族も子育ても、ふっと何もかもどうでもよくなる瞬間がある…。真面目に向き合ってきたからこそ、物事がうまくいかなると「すべて投げ出したい」という気持ちになることがあります。そんな時は少しでも心をラクにするために、自分が苦しんでいることを認め、すべてを投げ出してみてください。臨床心理士やカウンセラーとして活躍する著者によるこちらの本では、「すべてを投げ出す」ことのススメや、「投げ出したい」気持ちの解消方法などを解説。投げ出したいけど投げ出せないという葛藤に苦しんでいる方は、最初の数章だけでもいいのでぜひ読んでみてください。