「現代アートってよくわからない…」それでいいんです。

現代アートがわかりにくい3つの理由
①伝えたいことをありのまま表現していない



しかし時代が下るにつれ、「印象派」や「キュビズム」と呼ばれる画家や作品が登場します。彼らは目の前にあるものを写真のようにありのまま描くのではなく、伝統的なルールを無視し、自分で見たものをあくまで主観的に、自分の感情や考えを取り入れて表現しました。自分の感情や考えには、描ける姿かたちもなければ、多くの人が共有しているイメージなどもないので、ありのまま表現することはできません。現代アートもこの流れの先にあるもので、表現したいことがそのまま描かれていないからこそ、分かりにくいんですね。
②現代アートは、作品のコンセプトを考えるもの


どんな作品だったかというと、男性用の便器を横向きにし、「R.Mutt」というサインと年数を書いて、『泉』というタイトルを付けただけ、というもの。「それでアートなの?」と思われたかもしれませんが、当時の人も多くがそう思ったに違いありません。『泉』を作品として送られたギャラリーは、出品を許可しませんでした。しかし現在では、デュシャンはこの作品で「そもそも芸術とは何か」という問いを問いかけ、作品を展示するギャラリーという制度に一石を投じたとして高い評価を得ています。

デュシャンは、自分の感情や考えを取り入れて作品を描くことからもう一段階進んで、表現したい自分の感情や考えそのもの、つまりコンセプト自体を作品にしました。これが現代アートと呼ばれているものです。作品の本体は展示されている何かではなく、そこに込められたコンセプトそのものになったので、現代アートでは見る人自身に考えてもらい、コンセプトを理解してもらうことが欠かせません。逆に言えば、作品を見て「分からないなあ」「これは何だろう」と何かを考えた時点で、もうあなたはしっかりと現代アートを鑑賞し始めているんです。
③これまでにない新しいものがどんどん登場する

誰かの意見やアイディアが注目を浴びる時、それはこれまでになかった新しいものであったり、みんななんとなく考えていたけれど、誰も提案したことがなかったものであったりしますよね。コンセプトを作品にする現代アートでも同様で、デュシャンの『泉』のように新しいもの、これまでにないものが話題になります。他の誰かの作品への応答や、社会的な出来事への反発、身近な物事への気づき…新しい出来事が起これば、新しいコンセプトが生まれ、新しい作品が生まれていきます。

新しさは、コンセプトだけに求められるものではありません。表現の方法もまた、コンセプトを反映するものとして作品を理解するためのヒントになります。絵画のように筆と絵具で表現するもよし、既製品を利用するもよし、新しく開発された技術を使うもよし。作品によっては音や映像、言葉、さらには空間そのものまで、作品として捉えることができます。
今すぐできる「現代アート」の楽しみ方
①まずは空間から観察スタート!

②自分から動いてみる

③難しい作品は後回しでOK!

④何を感じたか、自分や友人と対話してみる

⑤アーティストについて調べてみる

⑥解説を聞いてみる

現代アートに触れることは、誰かの考え方やものの見方に触れること

それを知るために、まずは美術の歴史を簡単になぞることから始めましょう。現代アート以前のアートというと、肖像画や宗教画などが思い浮かぶのではないでしょうか。そうしたアートは、王様の姿や聖書のワンシーンを分かりやすく伝えるために、主に王様や教会が画家に依頼して描かれるものでした。「実際に描かれたもの」に対して、「表現したいこと」が一致していたので、人は描かれているものを見るだけで何を示しているかすぐに理解できたのです。