青森県立美術館（青森市）
「三内丸山縄文遺跡」の隣に立つ青森県立美術館。「遺跡の中の美術館」というキャッチフレーズを持ち、真っ白い箱のような外観が周囲の豊かな自然に心地よく溶け込んでいます。
このユニークな形は、建築デザインを手がけた青木淳氏が、遺跡の発掘現場から着想を得たんだとか。
発掘現場のトレンチ（壕）のように、地面が幾何学的に切り込まれています。その上から白く塗装された煉瓦の量塊が覆いかぶさっています。
敷地内にある巨大な白い犬のオブジェ「あおもり犬」は、この美術館の象徴的存在です。こちらは青森県出身の画家・彫刻家である奈良美智氏の作品。
他にも版画で有名な棟方志功をはじめ、シャガール、ピカソ、レンブラントなども展示されており、建築と作品、どちらも見ごたえ十分です。
東京都庭園美術館（港区・白金台）
戦前にパリに遊学していた朝香宮夫妻の邸宅を使った美術館。昭和8年に当時最新の建築様式によって建造されたこちらは、80年以上経った今も色褪せることなく、優美な品格を備えています。
内部のデザインは、家具や照明器具にいたるまですべてアール・デコとよばれる装飾様式で統一され、建物そのものが壮大な美術品になっています。
また庭園美術館だけあって、緑の美しさも見逃せません。こちらの美術館には常設展示はなく、趣向を凝らした企画展が入れ替わりで行われます。美術鑑賞の余韻に浸りながら、カフェでのんびり過ごすのも素敵です。
国立新美術館（港区・六本木）
うねるガラスのファサードが迫力満点の国立新美術館。広大な展示スペースを活かして公募展、企画展、共催展を開催する、国内最大級のアートセンターです。
手掛けたのは、日本の設計界を代表する黒川紀章氏。近未来的な外観とはうらはらに、内部は陽の光が惜しみなく降り注ぎ、ウッドデッキと相まって温もりあふれる心地よい空間になっています。
また最近では、映画「君の名は」のワンシーンで、この円形カフェが使われたことでも話題になりました。休憩スペースが多く、窓からは青山霊園の豊かな自然がのぞめる立地。展示に関係なくついつい足を運びたくなります。
豊田市美術館（愛知県・豊田市）
現代美術の意欲的な収蔵と企画展で全国的に知られる豊田市美術館。鉄とガラスのシンプルなモダニズム建築で、まるで湖面に浮かんでいるかのような神秘的な佇まいです。
小高い丘の上にあるためテラスから豊田の市街が一望でき、とにかく開放感たっぷり。
ミニマムな外観を生かした、こんな美しい姿も。こちらは企画展での催しですが、こんな風に固定観念にとらわれない作品を鑑賞することができますよ。
MIHO MUSEUM（滋賀県・甲賀市）
建築家I.M.ペイ氏が、山深い立地からイメージしたのは桃源郷。チケット売り場から本館までは、道を歩き、トンネルをくぐり、吊り橋を越えてやっと到達するというアプローチの長さが特徴です。
I.M.ペイ氏といえば、ルーブル美術館のガラスピラミッドの設計や、スティーブ・ジョブズ氏に影響を与えたことでも知られる世界的建築家。トップライトの特徴的なガラス屋根などは、まさにルーブルを彷彿とさせますよね。
景観との調和を重視し、本館の埋没率はなんと80％。その分中に入ると、大自然に身を置いているような不思議な開放感に包まれます。
私立美術館でありながら、エジプトやギリシャ、アジアをはじめ日本美術などコレクション数は2000点以上。そんな古代美術を非日常な空間で鑑賞できるという、まさに桃源郷を体感できる貴重な場所です。
豊島美術館（香川県・豊島）
天井が大きく開いた水滴のようなシルエットで、美術館とはいうものの、実際はこの建物自体が作品のひとつ。中では泉が絶えず生まれ、周囲の風や音、光とともに、自然との融和を感じられる、体感型アートです。
同じような造りのカフェが隣接されており、こちらでゆったりとお茶を愉しむこともできます。柱が1本もなく、天井の低いコンクリート・シェル構造は、まるで大人の秘密基地。
豊島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、建物から一歩外に出ると、のんびりスローな島時間が漂います。あくせくした日常を忘れるにはうってつけです。
名前は聞いたことがあっても、そんなにすごいものだったんだ！とあらためて知った方も多いのではないでしょうか。美術館そのものに対しては、国内よりも海外からの方が高く評価されていることもしばしばあります。ぜひ記事を参考に、より深く、より幅広くアートを鑑賞してみてください。
日本には「建物だけでも一見の価値がある」そんなアートな美術館がたくさんあります。そこで今回は、建築へのこだわりが詰まった美術館をご紹介！どんな想いで造られたのかを知れば、アートの楽しみ方がより一層広がります。