夏の記憶がみずみずしく蘇る、眩しさと懐かしさを紡ぐ青春小説

夏の記憶がみずみずしく蘇る、眩しさと懐かしさを紡ぐ青春小説

夏の終わりになると、ノスタルジーを感じませんか。思い出すのは遠くの故郷。子供の頃の夏休み。夏の強い日が終わりそうな秋の始まりには、そんなノスタルジーに浸る青春小説はいかがでしょうか。2017年03月08日更新

カテゴリ:
アート・カルチャー
キーワード
小説夏休み
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夏の終わりに読みたくなる、記憶を辿る物語

あの頃の感情を確認するように。
出典:stocksnap.io

あの頃の感情を確認するように。

最後に鳴き尽くすような蝉の声。まとわりつくような湿気。

お盆から残暑の時期は、不思議と懐かしい昔を思い出したりしませんか。夏休みに実家へ戻り、ふと、学生だった頃の自分の片鱗を見つけたり、変わらないお盆や祭の光景だったり、古くからの幼なじみと再会したり。
感傷のスイッチを押してしまう時、ちょっとあの頃のような気持ちをもう一度、感じてみたくなりませんか?

ノスタルジー。

大人が青春小説を読む時、そんな気持ちになれるかもしれません。

高校最後のイベントで起きる青春のほろ苦い記憶「夜のピクニック」

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。
出典:Amazon.co.jp: 夜のピクニック (新潮文庫): 恩田 陸: 本
「どこに辿りつくんだろう」
そんなことを思っていたあの頃を思い出す。
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「どこに辿りつくんだろう」
そんなことを思っていたあの頃を思い出す。

大人になりたい速度と近づいてくる現実と、いつも微妙にちぐはぐで、どこか将来に不安があった繊細な高校時代は誰にでも少し思い当たるのではないでしょうか。
進路ひとつ決めるにも一生の一大事のような覚悟と決めてしまう不安にゆれる最後、高校三年生。
物語の主人公たちはそれぞれの想いを抱えて歩いていきます。
一晩の夜のピクニック。それは彼らが歩く人生そのものかもしれません。

あの時しか見えていなかったもの、あの時だから見えなかったもの。そんな時間に出会えます。

帰省した孤島で自由の意味と向き合う「白いへび眠る島」

高校最後の夏、悟史が久しぶりに帰省したのは、今も因習が残る拝島だった。十三年ぶりの大祭をひかえ高揚する空気の中、悟史は大人たちの噂を耳にする。言うのもはばかられる怪物『あれ』が出た、と。不思議な胸のざわめきを覚えながら、悟史は「持念兄弟」とよばれる幼なじみの光市とともに『あれ』の正体を探り始めるが―。十八の夏休み、少年が知るのは本当の自由の意味か―。
出典:Amazon.co.jp: 白いへび眠る島: 三浦 しをん: 本
夏の終わりの祭は、秋の時間の始まりを告げてくれる。
出典:

夏の終わりの祭は、秋の時間の始まりを告げてくれる。

祭とは神を祀るものであり、一方で魔を封じるものでもあります。
古く人の営みをつないできた場所には、未だにその思想は生活に根付き、生まれ育った者の胸の奥に存在しています。
帰省した主人公は、不思議なものを見てしまう力で、島の秘密へ近づいていきます。
外の世界と違った不思議な故郷に、彼は何を思ったのでしょうか。
友達という言葉ではくくれない、人のつながりの物語が、清涼感があるラストに導いてくれます。

おちこぼれ高校に通う3人の少女の群像物語「ガールズ・ブルー」

落ちこぼれ高校に通う理穂、美咲、如月。十七歳の誕生日を目前に理穂は失恋。身体が弱く入院を繰り返す美咲は同情されるのが大嫌い。如月は天才野球選手の兄・睦月と何かと比較される。でもお構いなしに、それぞれの夏は輝いていた。葛藤しながら自分自身を受け入れ愛する心が眩しい、切なくて透明な青春群像小説。
出典:Amazon.co.jp: ガールズ・ブルー (文春文庫): あさの あつこ: 本
夢中で生きてきたあの頃、何もかもが澄んでいた。
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夢中で生きてきたあの頃、何もかもが澄んでいた。

自分は自分のまま生きていきたい。そんな思いで悩んで頑張って模索する高校生の少女たち。
特別な何かになれるわけじゃない。でも自分だって空っぽじゃない。見え始めた現実と見守る大人の社会への反抗心が混ざり合って悩んで立ち向かう少女たちの姿に、生き生きとしたエネルギーを感じます。
大人になって、いろんなことが当たり前と諦めてしまいがちですが、悩むことすら忘れてしまっただけなのかもしれないと、少女たちのまっすぐな本音が思い出させてくれます。

大家族と田舎の風景の中にある新しい絆の形「サマーウォーズ」

夏の記憶がみずみずしく蘇る、眩しさと懐かしさを紡ぐ青春小説
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小磯健二は、憧れの先輩・篠原夏希に、「4日間だけフィアンセの振りをして!」とアルバイトを頼まれ、長野県の田舎に同行することに。夏希の曾祖母を中心にご親戚に囲まれながらも、大役を果たそうと頑張る健二のもとに、謎の数列が届く。数学が得意な彼は、夢中で答えを導きだすが、翌朝世界は一変していた。世界の危機を救うため、健二と夏希、そして親戚一同が立ち上がる。熱くてやさしい夏の物語。映画「時をかける少女」の細田守監督・最新映画を完全ノベライズ。
出典:Amazon.co.jp: サマーウォーズ (角川文庫): 岩井 恭平: 本
好きという言葉ではくくれない、大切な場所。
出典:

好きという言葉ではくくれない、大切な場所。

夏に集う家族や親類。自然あふれる田舎で繰り広げられるどこにでもあるような帰省の光景。にぎやかで騒々しい時間はなくなってからその価値に気づく人も多いのかもしれません。
わかりあっていたり、わかりあえなかったり。それでもそんなことは飲み込んで、何かがあれば団結して同じ目的に走ることができる関係は好き嫌いを超えたところにある人間の力のようなものを感じます。
今年、バケモノの子を公開している細野守監督の珠玉の夏の物語。

15歳の恋と進路。生き方に戸惑う少年たちの扉を開く「いちご同盟」

中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。
出典:Amazon.co.jp: いちご同盟 (集英社文庫): 三田 誠広: 本
この記憶を守るために、長い時間を生きよう。
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この記憶を守るために、長い時間を生きよう。

切なくて眩しい、15歳の同盟。
生きる意味を見出せない少年と余命少ない少女、明るくて繊細なスポーツ少年という三人が「死」と向い合って「生」を知る物語。閉塞感のある中学生の頃、ささいなことで傷ついたり、傷つけてしまったり、背伸びした哲学的な考えを抱いたりした人は多いのではないでしょうか。
少年たちの繊細な心の叫びが、心をしめつけます。

あの頃はなんだってできるような気がしていた-14歳の4人の仲間の物語「4TEEN」

東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない―。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。
出典:Amazon.co.jp: 4TEEN (新潮文庫): 石田 衣良: 本
夏の記憶がみずみずしく蘇る、眩しさと懐かしさを紡ぐ青春小説
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積み重なっていくたくさんのリアル。その現実とぶつかり合う少年たちの物語です。うまくやることもできないけれど、不器用に生きていく仲間と過ごす時間は、刺激的なことで溢れています。それがすべて「いいこと」とは限りません。それでも走り続ける強さがある少年たちは眩しく健気なほど。

だめな自分に気づき始める大学生が日常を生きる物語「神田川デイズ」

ダメダメなあたしたちにも明日は来る。否応なく―コタツでとぐろを巻く童貞達にも、自己マン臭ぷんぷんの映研に反旗を翻す女子たちにも、クレバーに生きたい男子にも、つまんない周りとつまんない自分にうんざりの優等生にも、何かになりたくて何にもなれない彼女にも―それでもあたしたちは生きてゆく。凹み、泣き、ときに笑い、うっかり恋したりしながら。ひたすらかっこ悪く、無類に輝かしい青春小説。
出典:Amazon.co.jp: 神田川デイズ (角川文庫): 豊島 ミホ: 本
大人と子どもの境界線は、なぜあんなにも夢中に生きていたんだろう
出典:stocksnap.io

大人と子どもの境界線は、なぜあんなにも夢中に生きていたんだろう

子どもたちはいつから「かわいいかわいい」とちやほやされなくなってしまうのでしょうか。そんなことをふと思ってしまうこの話。
「何になりたい?」と聞かれた子ども時代から「さっさと地に足をついて現実を見なさい」といわれる大人未満の時代へ移り変わる時、人は戸惑ってしまいます。その戸惑いとフラストレーションはいつも青春時代の失敗や暴走に一役買い、そのエネルギーがあるからこそ大人になれるのかもしれません。

思い出があるから今がある

夏の記憶がみずみずしく蘇る、眩しさと懐かしさを紡ぐ青春小説
出典:stocksnap.io
微笑みたくなるようなものから、青春特有の物悲しさやトゲトゲしさ。
春は桜のようなピンクの季節なのに、人間の春の時間は青い世界。
あの頃を思い出して共感したり、胸の痛みを思い出したりしたあとは、その時間を過ごしてきて今の自分がいることを大切にしたくなります。
誰もがその人の人生を切るスタートの青春時代。
その物語に触れて、過去のがんばっていた自分を抱きしめてあげませんか。

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