憧れの"少女文学のような暮らし"してみませんか?

クラシックなファッションや手作りのお菓子、カントリーなインテリア。服も食べ物も一から自分たちで作り、一日一日を大切に暮らす丁寧でシンプルな暮らしには、現代を心豊かに生きるためのヒントが詰まっています。
「少女文学」とは?代表作をおさらいしてみよう
「少女文学」とは?

何も持たなくても幸せになる方法を教えてくれる『赤毛のアン』
アボンリーの美しい自然描写やマシュー、ダイアナ、ギルバートをはじめ、アンの人生に関わるキャラクターたちも作品をより魅力的にしています。
【書籍】L.M.モンゴメリー『完訳クラシック 赤毛のアン』
【映像】『赤毛のアン(Anne of Green Gables)』
映像化されたアンと言えば、1985年制作のミーガン・フォローズが演じたアンですよね。まさに本から飛び出してきたようなイメージ通りのアンに、原作ファンも納得したことでしょう。
美しい自然、衣装、小道具などもカントリーテイスト好きが夢中になるような雰囲気で、暮らしの参考にもなりますね。
【映像】『アンという名の少女(Anne With an "E")』
カナダCBCとNetflixの共同製作で2017年に配信された最近の映像作品。過去映像のファンは受け入れ難いかもしれませんが、想像以上に各キャラクターの配役がピッタリで、決して悪くありません。
偏見、人種差別、女性の自立など、ダークなテーマにも踏み込んだ、どちらかと言うと大人向けの内容。エイミーベス・マクナルティは、痩せっぽちで青白くそばかすだらけという原作の外見そのままに、お喋り好きで息つく間もなく話続けるところや癇癪持ちの気の強さまで見事に演じています。
大自然に囲まれたミニマルな暮らし『大草原の小さな家』

開拓者たちは、生きるためにすべてを一から作らなければならない気の遠くなるような環境で、厳しい自然と闘いながら暮らさなければなりません。その一方で、家族との強い絆、自然の恵みを賢く利用する知恵を得、類まれなる人生を歩むことができます。厳しくも幸福な時間の中で、ローラたち姉妹が逞しく成長していく壮大な物語です。
【書籍】ローラ・インガルス・ワイルダー『大きな森の小さな家』
インガルス一家の物語として知られているタイトルは『大草原の小さな家』ですが、福音館のシーリーズはこちらが1巻のタイトルで、2巻にそのタイトルが付けられています。出版社によってもタイトルやシリーズ巻数は違い、福音館シリーズは全5巻。
大草原からミネソタ州のプラム・クリークの土手にできた横穴の家へ移り、町の学校に通い、また別の地へと旅が続いていきます。最終巻ではローラの人生に大きく関わることになる青年アルマンゾの、開拓者とは対照的な農夫の暮らしが書かれています。
【映像】『大草原の小さな家(Little House in the Prairie)』
1974年から放送されたアメリカのTVシリーズ。日本でもNHKで放送され大ヒット。幌馬車に乗った両親が見守る中、三姉妹メアリー、ローラ、キャリーが丘を駆け下りてくるオープニングがとても印象的でした。
また、マイケル・ランドン演じる父チャールズの、家族を包み込むようなあたたかさや頼もしさがエピソードの随所に感じられ、理想の家族像として目に映った方も多いのではないでしょうか。
素朴な料理や桶の中で身体を洗うシーンなど、シンプルな暮らしを目の当たりにすることで、改めて今について考えさせられる刺激のある作品です。
困難を乗り越え成長していく個性豊かな四姉妹の人生『若草物語』

姉妹の会話がリアルで、それぞれ違った個性が顕著に表れた描写が巧み。読者によって感情移入するキャラクターが変わってきそうな点も面白いですね。
【書籍】L・M・オールコット『若草物語』
本作品も、いくつかの出版社から違う訳者の訳で出版されています。150年以上も前の人々や生活の雰囲気に忠実な訳はあるのか、読み比べてみてもいいですね。福音館古典童話シリーズのものは、ターシャ・テューダーの挿絵が素敵です。
原題の「Little Women」とは、著者の父親が実際に娘たちを呼ぶのに用いた言葉で、単なる小さな女の子ではなく1人の立派な女性であるという意味合いで付けられたそう。内容も著者の実生活が元になっており、ジョーは著者自身がモデルと言われています。
【映像】『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語(Little Women)』
映像では最も最近、2019年に公開された作品。姉妹が実家を離れた後に焦点を当て、ジョーが過去を振り返るかたちで進んでいきます。
「ぱっちりした瞳、甘やかなくちもとの美しい」メグをエマ・ワトソン、「背がむやみに高く、(中略)威勢のいい若駒を思いださせるような」ジョーをシアーシャ・ローナン……といったように、配役も原作のイメージに忠実。馬車が走る古い町並みやクラシックな衣装、アンティーク風インテリアも見どころです。
まずは服装から。「少女文学」風ファッションって?
3つの物語が書かれた19世紀後半頃のファッションの特徴


『大草原の小さな家』ではローラたちが普段着のワンピースの上からエプロンをするシーンや、『若草物語』ではケープを身に着け冬景色の中を歩くシーンも見られました。
現代風「少女文学」スタイルの秋コーデ
19世紀の少女スタイル〈ワンピース + エプロン〉
アンの憧れパフスリーブ
アンのエプロン風ワンピース
ローラのナイトドレス風ワンピース
四姉妹のケープ風コート
物語に出てくるレシピで「少女文学」ティータイムはいかが?

ティータイムにピッタリのおやつを3つの物語から取り出してみました。道具や材料も今ほど満足にはなかった時代の手作りおやつ。シンプルで丁寧な少女文学的暮らしを料理からもはじめてみませんか?
『赤毛のアン』― アンのお茶会にはハプニングが付きもの?
アンの「レイヤーケーキ」風ヴィクトリアケーキ
レイヤーケーキとはスポンジケーキを薄く切って中にジャムやゼリーをはさんだもの。有名ないちご水(Raspberry Cordial)事件もあり、アンがお茶会を開くときには何か起こるのではとドキドキしてしまいますが、アラン牧師夫妻を招いたお茶会でも、なんと香料の代わりに痛み止めの薬を入れてしまったのです。
さて、このレイヤーケーキですがイギリスのヴィクトリアケーキにそっくり。物語の舞台プリンス・エドワード島がイギリス王室の王子にちなんで名づけられたことからも分かるように、当時のカナダはヴィクトリア女王の統治下にありました。恐らくイギリスから伝わったレシピによるケーキなのでしょう。
お菓子から歴史を知ることができる点も、当時のレシピを探る面白さの1つですね。
もっとレシピを知りたいなら『L.M.モンゴメリの「赤毛のアン」クックブック』
モンゴメリの孫娘ケイト・マクドナルドによるクックブック。1985年に出版されたものに11のレシピを足し、かわいらしいイラストや物語のシーンがよみがえる美しい写真とともに新たに出版されました。中には、モンゴメリのキッチンで実際に作られていたレシピも。モンゴメリは料理上手で家族のために料理を振る舞うことを心から楽しんでいたのだとか。
「おひさま色のコーンスフレ」「火と露のベイクド・スイートポテト」など、わくわくするようなネーミングで料理が出てきたシーンの引用があるのもうれしいポイント。
『大草原の小さな家』― 知恵と工夫を凝らす開拓者の台所
現代風キャロラインの「コーンブレッド」
ローラのおやつ「ヴァニティーケーキ」風じゃがいもドーナッツ
もっとレシピを知りたいなら『大草原の『小さな家の料理の本』』

「日光を利用したドライフルーツ」「りんごの芯で作るビネガー」などのレシピ名からは、根気の必要性を感じつつも、自分で作ることの大切さやナチュラルフードの醍醐味も学べそうな予感。
『若草物語』― マーチ家の料理はいつも誰かへの思いやり
現代風ジョーの「ブラマンジェ」
現代風ハンナの「ターンオーバー」
もっとレシピを知りたいなら『ルイーザ・メイ・オールコットの「若草物語」クックブック』
物語の中で重要な役割を果たす食べ物のレシピが、それにまつわるエピソードとともに掲載されています。50の本格的なレシピは現代風にアレンジしてあるので、ゼラチンを仔牛の足から煮出す必要はありません。著者ウィニ・モランヴィルは、1850年頃から1880年前後に出版されたアメリカの料理本に幅広く目を通しこの本をまとめ上げました。
ボンボン、プラムプディング、ジンジャーブレッドケーキなど、見た目もかわいらしくティータイムにピッタリなお菓子が満載。四姉妹が家族や友人たちと一緒に味わった料理を、ぜひ大切な人と味わってみてください。
インテリアはナチュラルに。アンティークとカントリーをミックスさせて
木製家具とアンティーク小物
自然素材でデコレーション
食卓には「リネン」「陶器」「シルバー」を
賢く美しく生きるために、どんなときも前を向いて

日本だけでも様々な出版社が違う訳者で1950年代から出版をはじめています。最も有名な訳者は、恐らく日本にアンを普及させた村岡花子さんでしょう。しかし、彼女の訳は完訳ではなく、日本初の完訳シリーズは講談社の掛川恭子さんが訳したものだと言われています。
シリーズ巻数もタイトルも出版社によって違い、挿絵やブックデザインも様々なので、シリーズで集めたい方はよく調べてお好みのものを選ぶことをおすすめします。