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【連載】ふたりのマイルール
vol.3 - 遠い未来より、
“今”に焦点をあてて

“ルール”と聞くと少し堅苦しさを感じますが、夫婦や仕事のパートナーなどごまかしのきかない距離感では、なにかしら決め事があったほうがスムーズにいくような気もします。なら「素敵な関係のためのルール」って?毎回さまざまな「ふたり」に登場してもらい、心地よい関係を保つための秘訣を聞いていくこの連載。今回は子連れでUターン移住したご夫婦。環境の変化で一時期はぶつかることが増えたそうですが、お二人の手で作り上げた家や暮らしは、そのままご夫婦の軌跡に繋がるものを感じます。(2019年08月14日作成)

写真:yansuKIM 取材・文:西岡真実

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“今”に焦点をあてて
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“今”に焦点をあてて
今回のご夫婦は、寡黙で誠実なたくやさんと社交的で行動派のまりげさん。お二人はのどかな風景が広がる京都北部に家族でUターン移住し、たくやさんはデザイナーから一転、牡蠣の養殖業へ。まりげさんは、農業をしながら3人の息子さんとの日々を絵日記としてインスタに投稿しています。

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“今”に焦点をあてて
出会いは渋谷、結婚後の住まいは埼玉だったお二人ですが、たくやさんが家業を継ぐべく脱サラし家族で京都の舞鶴へ移住したのは、かれこれ3年前。まりげさんの著書『たのしいことを拾って生きる。』では、移住への迷いや移住後の実家での同居生活、古民家のセルフリノベーションまでの悲喜交交がユーモアたっぷりの視点で描かれています。


自宅の前に広がるのは小さく穏やかな内海と、それを囲うようにぐるりと並ぶ山々。窓からは海で働くたくやさんの姿が見えるほど小さな生活圏で、家族との距離も縮まったそう。

素敵なお宅での理想的な田舎暮らしですが、今の家やライフスタイルを手に入れるまでには、夫婦の間でそれなりの葛藤や道のりがありました。
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田舎での常識なのか、1000枚はあろうかというローリエなどご近所さんからのおすそ分けは大抵ダイナミックな量。苦手だったはずの虫は、頻繁な乱入によりいつしか慣れっこに。

自然の恩恵に溢れた田舎でのあれこれを面白おかしく描いているまりげさんですが、移住当初は戸惑いの連続だったそう。それにしても、渋谷で出会ったお二人がなぜ、田舎暮らしをすることになったのでしょうか。
三男の“さんちゃん”とともに、セルフリノベーションしたご自宅で迎えてくれたたくやさんとまりげさん

三男の“さんちゃん”とともに、セルフリノベーションしたご自宅で迎えてくれたたくやさんとまりげさん

たくやさん:僕はいつか地元に戻りたいと考えてたのもあって、子どもが生まれてから、自然が多い田舎で子育てしたいと思ったんですよね。それで、結婚して3年目くらいに、「仕事を辞めてこういうことをしたいんだけど……」ってA4のコピー用紙2枚にやりたいことを書いて妻にプレゼンしました(笑)。次男が生後1ヶ月のタイミングだったので驚いてましたけど、最終的には「いいんじゃない?」っていう感じで賛同してくれて。ただ、大変なのはそこからでしたけど……。

まりげさん:1歳と2歳の子を抱えての移住だし、私は「田舎暮らし」の理想と現実のギャップもあったし。

たくやさん:僕は慣れ親しんでる地元だから15年前の生活に戻るだけでしたけど、彼女にとっては田舎が未知の世界で。最初の半年くらいはケンカも多かったですね。

まりげさん:お互い余裕がなかったよね。彼は家業を継いだばかりで仕事に一生懸命だったのに対して、私はすごく不安な時期で家族にもっと目を向けてほしくて……。でも2つのことを同時に頑張ることは難しいから、それでケンカしたり、ね。

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たくやさん:今思えば、彼女が精神的に不安定だったのもありますね。

まりげさん:1歳と2歳を抱えて慣れない土地での子育てに加えて、義実家での同居生活からのスタートだったから色々苦しくて。ある時爆発してしまって(笑)

たくやさん:そうだね。本当にもう、魂の叫びを聞いた(笑)

まりげさん:それで最優先事項として住まいを探して、5年以上空き家になっていた築100年の古民家を紹介してもらったんです。そこから自分たちでDIY(リノベーション)したので……住めるようになるまでの3ヶ月がもう、すごい大変で。

たくやさん:解体するところから、だったからね。

まりげさん:家の中に残っていた軽トラック10台分のゴミを捨てに行くことからはじまって……二人で煤と埃まみれになって、もうボロッボロな状態。えらい目に遭わされた、もう一生やりたくないって思いました(笑)
お二人で一枚一枚貼ったキッチンのタイル。「今も製作中」だというお宅は、自分たちの手で作り上げた“夫婦の思い出の品”そのもの

お二人で一枚一枚貼ったキッチンのタイル。「今も製作中」だというお宅は、自分たちの手で作り上げた“夫婦の思い出の品”そのもの

夫婦や家族の距離が近い、田舎暮らし

まりげさん:でも今はケンカはだいぶ減りました。海に出る危険な仕事でもあるので、ケンカしたままで何かあったら後悔するし、ケンカするのがもったいないって思うようになって。彼がイカダの上で作業してるのがちょうど家の窓から見えるんですけど、30キロくらいある牡蠣がくくられた紐を腕一本で引き上げたりするので、風が強い日なんか「お父さん大丈夫かな」って心配しながら子どもたちと見守ることも。

たくやさん:僕は本当に生活圏がぎゅっと縮まりましたね。

まりげさん:移住前も彼はすごく家族のために頑張ってくれてたと思うんですけど、埼玉から都内まで通うのに朝早く出て遅い時間に帰ってきてて……心も行き違っていた気がします。今は身近にその姿を見てるので考え方が変わりましたね。
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“今”に焦点をあてて
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Rule1:SNSに干渉しない

インスタでのまりげさんの絵日記にちょくちょく登場しているたくやさんですが、夫婦間の何気ないやりとりや、忍者のごとく天井の梁で息をひそめる「本気すぎるかくれんぼ」が全国に発信されているなんて、当のご本人はつゆ知らず。でも、SNSを干渉しないというのには、まりげさんの表現の自由を尊重したいというたくやさんの配慮がありました。

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“今”に焦点をあてて
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たくやさん:彼女のクリエーションを邪魔したくないので、インスタの絵日記は見ないようにしてます。僕が意見とか言うと彼女独自の視点ではなくなってしまうし、家族とか近い人はそんなに見るもんじゃないかなと。特に言われた訳ではないけど、自分なかではルールとして決めてますね。

まりげさん:インスタで漫画を描いて3年以上になりますけど、それはすごく有り難いですね。彼を題材にすることもあるけど、彼自身が描かれることを意識せずにやっていることが面白みだと思うし、自然体で天然なのが彼の魅力だと思っているので。それに彼は自分がどんなふうに描かれてるかっていうのは多分気にもしてない。

たくやさん:そう、そんなに気にしてないです。

まりげさん:それが私のなかでプレッシャーを感じずに自由に続けられている点でもありますね。

Rule2:家事はきっちり担当制

夫婦の間でのルールとして話題にあがることが多い家事分担。あえて役割分担をしない家庭もありますが、たくやさんとまりげさんはきっちり家事担当を決めたことで、家事で揉めることやお互いへのモヤモヤが少なくなったそう。
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たくやさん:独立して僕が家にいる時間が増えてから、家事をある程度分担しようということになって。僕はそういうのをきっちり決めたい性格なのもあって「家事リスト」を作ったんですよ。

まりげさん:もともと管理職だったので(笑)

たくやさん:役割が明確なほうが上手くいくって思ったんです。それに彼女が気を利かせて僕の担当分をやってくれたときは「ありがとう」って言えるじゃないですか。

まりげさん:エクセルで作ったその表を見せられた時は「マジかよ」って思いましたけど(笑)。でも男性は可視化したほうが分かりやすいみたい。それに、以前はなんとなく私のほうが負担が大きい気がしてたけど、「見える化」したら不公平感もなくなったし、いざこざが減りましたね。
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育児の重荷はほどよく手渡す

まりげさん:うちはお互い得意分野が違っていて、子育ても私が“遊び担当”で、彼が“しつけ担当”になってます。私は子どもと遊んだり褒めたりするほうが得意で、いわゆる「しつけ」は苦手。なので、私は子どもと笑顔で遊んで、目に余るところは彼がしっかり教えるという感じです。

たくやさん:難しいことを言ってもまだ分からない年齢なので、最低限の道徳的なところですけど。

まりげさん:私は子どもと過ごす時間が長いから、しつけまで自分で背負ってたらすごい苦しくなっちゃうし潰れちゃう。怒る回数が多くなるのも嫌だし、自分の負担を減らしたかったので「しつけは頼んだ!」って感じで丸投げしちゃいました(笑)。責任を誰かに渡す、というのも時には必要ですよね。
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Rule3:お互いの“余白”を大切に

夫婦や子どもとの関係というのは、距離感が近いだけにどうしても自分の価値観を押し付けてしまったり、知らず知らずお互いの自由を奪ってしまっていたりすることも少なくありません。たくやさんが思う家族の定義は「会社のような個人の集合体」。そんな考えをベースにお二人の間でなんとなく認識されているルールのようなものがあるそう。
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たくやさん:「お互いを縛りすぎない」というのは、なんとなく意識してますね。会社とかでもそうですけど、規則でがんじがらめにされると窮屈だから。家族という集合体のなかではある程度ルールがあったほうがいいけど、基本的にはお互いやりたいことをやっていたいな、と思います。

まりげさん:一言で言うと?

たくやさん:うーん、“余白”とか“ゆとり”をちゃんと持つ。

まりげさん:彼は、妻とか母という役割だけでなく「個人」としての私も大事にしてくれている気がします。子どもに対してもそうで、例えば「将来、何になってほしい?」と聞いても「いや、子どもは子どもの人生だから」と言うので、なるほどなぁって。
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たくやさん:子どもに家業を継いでほしいとも思わないし、色んなことを経験してやりたいことをやってほしいですね。僕も仕事は転々としてきたけど、前職でやっていたデザインやブランディングのノウハウも今の仕事にすごく活きてるし。色んなことを経験することで、それが最終的には何かに繋がると思うんです。

まりげさん:私もね「グミの職人になりたい」って、ディスカウントストアにあるグミを30袋とか一通り買ってきて研究したこととかあるしね(笑)

たくやさん:その時は隣で「これはどうなのか」と思ってましたけど(笑)。でも価値観が違う人から見ると無駄な行為でも、彼女にとっては「投資」。たとえ上手くいかなくても、失敗を経て次に行くっていうのは、まわり道だけど必要な過程だと思います。最終的にはインスタで漫画を描くのにたどり着いて3年以上続いてるので。
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一緒に作り上げた家が、夫婦の歴史

仕事や住まいとともに家族のあり方も変化するなかで、時にぶつかりながらもひとつひとつ乗り越えてきたたくやさんとまりげさん。そんな濃い結婚生活のなかで、お互いの記憶に残っているエピソードは……?
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まりげさん ― バケツリレーしながら笑い合ったあの日

ふっと思い浮かんだのは、井戸が溢れたことかな。やっとの思いでリノベーションした家に引っ越した1ヶ月後、100年に一度の大雨が降ったんです。納屋の中に古い井戸があるんですけど、そこからゴポゴポ泉のように水が湧いてきて(笑)

普通だったらショックな出来事ですけど、その時に彼とバケツリレーしながら二人で笑ったんですよね。「これでまた、漫画のネタができちゃったね」「はははっ」って。

なんだか、笑った瞬間に力が抜けて。こんなに大変なことでさえ、一緒に笑い合える家族が側にいるのが、すごく幸せなことだなって思ったんです。大変なことではあったんですけど、自分のなかではすごく印象に残ってる出来事ですね。
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たくやさん ― 手塩にかけた家が二人の宝物に

一緒に手を動かして古民家のリノベーションをしたことが、本当に自分のなかでは大きいですね。住んでる今もまだ手を加えている途中で、ここ2年くらいライフワークのひとつとしてやっているんですけど、去年は薪ストーブを設置したので冬が暖かく過ごせるようになったり、家具も手作りしたり。自分たちで少しずつ手に入れていく過程がすごく楽しいです。

大変なのを乗り越えて手に入れたものなので、本当に家が宝物だし、どんどん愛着が湧いていく。二人で作り上げた“思い出の品”のような感じです。
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“今”を大切に進む、家族ドライブ

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お互いの性格の違いはまるで、アクセルとブレーキのようだというお二人。好奇心旺盛で「突っ走ってコケるタイプ」のまりげさんがアクセル、それをブレーキとハンドリングで調整するのがたくやさん。共通のガソリンである子どもたちと一緒に、家族は一台の車のように進んでいきます。ドライブの目的地はあえて決めずに。

「人生設計をしていても何が起こるか分からない。彼は15歳の時に突然の病で父親を亡くしていて、私は18歳の時それまで仲良しだった両親が離婚したんです。お互い10代でのそんな経験がバックボーンにあるので、10年、20年後の不確かな未来よりも『今を生きる』ほうを大事にしたいなって。」

「僕も、夫婦お互い幸せで、子どもも健康に育って……“今”の積み重ねの延長に未来があればいいかなと。家族でドライブするように、景色を楽しみながらどこまで行けるかっていう感じで。緩いですけど、フレキシブルでいたほうが生きてて面白いですしね。最終的にお墓に入る時に『いい人生だったな』って思えたらそれでいい。そう思います。」

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あえて行き先は決めない家族ドライブ。井戸が溢れたり、子どもの何気ない言動に笑い合ったり……小さな事件や笑いが詰まった日常を積み重ねたら、どんな未来にたどり着くのでしょう。

果てしなく遠い未来に目標を定めるのは難しくても、「今」を見つめればいい。そう言われたら長い道のりでも、もっとラクに進んでいけそうです。

まりげさんのアクセルとたくやさんの運転で家族5人、のんびり賑やかなドライブは続きます。

Information

ネットショップ作成サービス「BASE」がキュレーションするイベント「SHIBUYA WANDERING CRAFT 2019 旅 展 -MADE BY LOCALS-」に、8月22日〜岡山八朗兵衛商店が出店予定!
2019年のテーマは「旅」。全国のさまざまなジャンルのクリエイターが一堂に会し、作り手と直接話すことができる物産展です。


会 期 2019年8月20日(火) - 2019年9月1日(日) 
     ※岡山八朗兵衛商店の出店は8/22(木)~8/25(日)の4日間
時 間 11:00 - 20:00※8/26は入替日につき営業なし
場 所 渋谷ヒカリエ 8階 COURT
事前申込 不要 / 入場無料

2019年のテーマは「旅」。全国のさまざまなジャンルのクリエイターが一堂に会し、作り手と直接話すことができる物産展です。


会 期 2019年8月20日(火) - 2019年9月1日(日)
     ※岡山八朗兵衛商店の出店は8/22(木)~8/25(日)の4日間
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