3つの整えメソッド
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痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」

イラスト:小池ふみ 取材・文:キナリノ編集部

年を重ねるにつれ、少しずつ表れるマイナートラブル。肩こり、片頭痛、便秘、さらには、気持ちが沈みやすくなったり、妙にイライラしたり。病気とまではいかないけど、心身の不調に悩まされる現代女性は多いもの。そこで、四季のある日本人の暮らしの基盤「衣・食・住」からヒントを得た「3つの整えメソッド」なるケア方法を提案します。毎回1つの不調に対して、日常生活でできる整え方を専門家からアドバイス。シリーズ連載第10回目の今回は、急激な気圧変化によって今の時季に起こりやすくなる「頭痛」がテーマです。

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2020年04月16日作成
痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
寒かった冬も終わりを告げ、春は植物たちも成長を始めたり、入学や転勤など人々の生活に変化が増える季節でもあります。そんなアクティブになる4月に気を付けたい不調が、気圧変化の多い季節に起こりやすくなる『頭痛』です。“なぜか天気のいい日に限って頭痛が起こる”“年々頭痛の痛みが増しているように感じる”、そんな原因不明な頭痛に悩まされていませんか?
痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
今回は、医師/医学博士、気圧医学の第一人者で、天気痛ドクターとしてTV雑誌等マスコミで活躍中の佐藤純先生に、昔からいわれてきた天気と頭痛の関係にフォーカスをあてながら、頭痛緩和へ導く「3つの整えメソッド」を教えていただきました。

目次

佐藤先生の「3つの整えメソッド」

【知のメソッド】急にくる頭痛はどうして起こる?

雨の日に頭痛が起こりやすいのはよく聞きますが、春の気持ちよく晴れた日でも、急に頭痛が起こることがあります。どのようなことが原因で春頭痛は引き起こされるのでしょうか?

春に起こる頭痛の3つの原因

痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
「春の頭痛にはいくつか原因がありますが、一番の要因として『気圧変化』が大きく関係していることが分かっています。春先や台風時季のような急激な気圧変化が起こると、体内の自律神経は乱れやすくなり、頭痛や様々な不調を引き起こします。4月は1年の中でも最も気圧変化が大きく、また季節の変わり目でもあるためなかなか安定しません。頭痛持ちの人にとってはつらい時季と言えるでしょう。
二つ目は『寒暖差』です。日中は汗ばむ陽気でも、夜になると冷たい風が吹き荒れる。そんな寒暖差の激しい春の気候も頭痛の大きな要因となっています。」
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「三つ目は、新年度に行われる仕事の異動や新しい出会いによるプレッシャー、そして春に意外と悩まされる人が多い春鬱などからの『ストレス』です。頭痛にプラスされ“春独特の不調”として訴える人が増えています。
冬の間は室内で暖かく過ごしていた人たちも、日照時間が徐々に延びる春は外に出てアウトドアをしたり、春らしい軽やかな服装を楽しみます。そんな中ストレスや春鬱の症状がある人にとっては、なかなか気持ちが追い付かず頭痛の痛みも相まって、暖かく過ごしやすい春は実はストレスや鬱の症状が出やすくなります。」

日常生活に変化が増える春は様々な心理的ストレスを受けやすい季節。春の頭痛をさらに悪化させないためにも、ストレスが要因の一つになっていることを覚えておきましょう。

気圧変化に着目した『天気痛予報』

『寒暖差』のような“暑い、寒い”といった体感の変化とは異なる『気圧変化』を把握することはなかなか難しい気がします。何か指標になるものがあれば教えてください。
「私の監修したウェザーニュースでは延べ何万人という人たちのデータから、3つの気圧変化に着目した『天気痛予報』を作りました。この予報によって、単純に低気圧のときだけが問題ではなく、高気圧などの気圧変化でも総合的に頭痛や体になんらかの影響を与えていることが分かりました。」
痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
1、低気圧や台風の接近時、高気圧が離れるときの気圧変化
低気圧や台風が接近したときなど高気圧が離れていくとき、数字にすると1日に20hPa(気圧単位)以上もの気圧変化が起こります。坂道のように気圧の傾きが大きくなるところで頭痛発生リスクは高まります。

2、気圧のアップダウン『大気潮汐(たいきちょうせき)』
徐々に暖かくなる朝や日没後に冷える夜など温度差によって、1日2回、ほぼ決まった時間で繰り返す気圧のアップダウンを『大気潮汐』といいます。その大気潮汐も天気の影響でずれることがあり、通常よりも大きな変動が起こると頭痛の引き金になる場合も。天気が崩れる前から頭痛を感じる人は、大気潮汐が原因の1つになっているのかもしれません。

3、周期性のある小さな気圧変動
低気圧がやってくると例えば台風がくる1~2日前から小さな気圧の揺れが始まります。その小さな気圧の揺れを『微気圧変動』といい、大気潮汐よりも小さな気圧変動になります。そんな微細な揺れでも自律神経が敏感な人には影響が出ると考えられています。


この3つの気圧変化をウェザーニュースの『天気痛予報』では、分かりやすく4段階のイラストで発症リスクをお伝えしています。6日先の天気痛予報まで分かるので、大事な予定を入れる際の日程調整に役立ったり、頭痛発生前に対策を立てられる心強い味方になってくれますよ。
天気痛予報 | ウェザーニュース
天気や気圧の変化によって起こる「気象病」や「天気痛」と呼ばれる頭痛やめまいなどの発症リスクを6日先まで4ランクで予想します。また、3時間毎の予報や気圧の変化も確認できるので、薬を飲むタイミングの参考に。さらに、過去1週間分のデータも確認できるため、症状の振り返りや分析にも便利です。※本予報は天気痛ドクターの佐藤純医師と共同開発しています。
詳しい内容はこちらからご確認ください。

頭痛の原因となる生活習慣

一人一人の何げない生活の中にも、頭痛の原因は潜んでいると佐藤先生は話します。
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「私の患者さんで、職場オフィスが28階で住まいがタワーマンションの12階に住んでいる人がいます。その人は仕事中に外出などで3回ほどビルの上と下を行き来し、帰りは地下鉄に乗って住まいの12階に戻ると、ものすごくへとへとに疲れているとおっしゃっていました。このように気圧の変化は、天候の良い悪いに関係なくとも日常生活の中でも頻繁に起こることがあるので、知らず知らずのうちに頭痛の原因を自らつくり出している人も増えていますね。

また気圧以外にも、においや満員電車、赤ワインやチーズを食べたときにだけ起こる五感が関係した頭痛や、働く女性に多い、平日の忙しさから解放された週末にだけ起こる“週末頭痛”など、一人一人の生活習慣によって頭痛の起こる原因は多岐にわたります。」

頭痛を起こしやすい人は『内耳』が敏感?

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「天気痛を起こしやすい人の共通点として『内耳』が敏感だということが分かっています。耳の内側にある内耳は、脳へ情報伝達を送ったり体のバランスを保ったりする大事な働きをしています。内耳が敏感な人には、元々片頭痛やめまいの症状を持っている生まれつき内耳が敏感な人と、病気などをきっかけとして後天的に敏感になった人の2パターンがあるようです。
そして、内耳が敏感なのは大人だけではありません。小学校低学年ほどの子供でも、頭痛による体調不良を訴える子もいます。また子供は頭痛の痛みを言葉で上手く表現できないことも多く、ただなんとなく不機嫌だったりするとその変化に大人が気付いてあげられないこともあります。まして自分の子供が頭痛に悩まされているとは思いもしないので、この不機嫌の原因が頭痛だったと分かると驚く親も少なくありません。」
子供時代の頭痛を対処せずにいると、大人になってどのようなことが体に起こるのでしょうか?
「子供時代の頭痛は高校生ぐらいになると固定化し、20~30代ぐらいの年齢で激烈にひどい頭痛が起こる人もいます。そういう人の多くは片頭痛ですし、月経前のPMSの症状で多くの場合頭痛が起こります。
また更年期になると、同い年の人たちよりも更年期の症状が強く出てくるようになり、気持ちが悪い、めまいが強くなる、体がだるくなる、急に眠気が襲ってくるといった、頭痛とセットになった不調が体調に現れるようになります。
何事もそうですが、頭痛は早めの対処が重要です。子供時代の頭痛を重症化させないためにも、子供の様子が“いつもと違う”と感じたら、親や周りの大人が話を聞き、不調の原因を見つけてあげることが大切になってきますね。」

【整のメソッド】頭痛と上手に付き合うためにできること

子供のうちに頭痛に対処できていればいいのですが、なかなかそうはいかず大人になり重い頭痛に悩まされている人は多くいます。そんな大人の頭痛と、上手に付き合うための対処法などありましたら教えてください。

自分の症状を把握する

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「突然起こるように思われている頭痛ですが、実は起こる前に“前兆”と“予兆”といった様々な症状が体には起こっています。
例えば予兆が起こると、大概の人は体がだるく朝起きられなかったり、日中あくびが出たりクラクラとした症状が体に表れます。その次に起こる前兆では、頭痛が起こる直前に『閃輝暗点(せんきあんてん)』と呼ばれる、光が見えたり目がキラキラと眩しくなる症状が起こることがあり、その眩しさが消えた後にドーンと大きな頭痛がやってくるのです。このような頭痛が起こる自分の症状パターンをある程度知っておくだけでも、マッサージをしたり薬を飲んだりと事前準備ができるので痛み軽減に繋がります。

頭が痛いという患者さんの話を聞いていると、小さい頃からずっと頭の痛みはあっても、この痛みが頭痛だと認識をしていない人が多くいます。頭痛の症状には、気持ちが悪い、吐き気がするといった頭痛とセットとなった症状を持った人もいるため、不調の原因が頭痛だと気付かず、耳鼻科や脳神経外科、しまいにはメンタルクリニックを受診し、様々な病院を回り最後に私の外来に辿り着く人もいます。頭痛が不調の原因だったと分かると皆さんすごい驚かれて、“頭痛は昔からの持病だと思い気にも留めていなかった”という人がほとんどです。
このように頭痛は一時期なものだからと、7割以上の人は病院にかからず市販の頭痛薬で対処したり、痛みに耐えてしまいます。ですがやり方を間違えると頭痛はますます悪化してしまうこともあるので、自分だけの判断でやり過ごすのではなく、一度病院で相談されることをおすすめします。」

頭痛を記録する『痛み日記』やお役立ちアプリ

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「頭痛が起こるタイミングは人によって様々ですが、天気や気圧の変化など、人によって一定の法則は必ずあります。その痛みが起こるリズムを事前に知るためにも、『痛み日記』を付けることをおすすめしています。どんな天気のときにどのぐらいの強さの頭痛が起こるのか?それは気圧が上がっているときか?下がっているときなのか?といった変化を日記を付けることによって、自分の症状の傾向を客観的に知ることができますよ。」

【日記の付け方とコツ】
・基本は1ヵ月天気と自分の体の状態、痛みの強さや弱さの移り変わりをメモする。
・具合が悪くなったときだけではなく、具合が悪くなりそうな予感も記入する。
・自分の体が“要注意”を示すタイミングを知ることで、事前に薬を服用するタイミングの重要なヒントとなる。
・1週間分ができたら、日記を一度見返す。どんなときに痛みがあったのか、何をすると痛みが和らぐのかに注目する。

また、多くの頭痛に悩む人たちのデータが反映された、ウェザーニュースの『天気痛予報』でその変化を照らし合わせると、より正確に自身の頭痛が起こるタイミングを知ることができます。

上手に取り入れる『酔い止め薬』や『漢方』

痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
「天気痛になりやすい人は共通して『内耳』が敏感だとお伝えしましたが、その症状を緩和させるために私の外来では『めまいの薬』を処方しています。
また市販の薬だと『酔い止め薬』を試してみるのもいいかもしれません。乗り物酔いをしたときの、気持ちが悪くなる、吐き気、頭痛、眠気といった症状は、天気によって起こる頭痛の症状にもあてはまるからです。ですが選ぶときに気を付けてほしいのが、自分の症状に合った酔い止め薬を選んでほしいということです。市販の酔い止め薬には内耳に効くものだけではなく、カフェイン、吐き気止め、眠くなる成分が入ったものなど、様々な種類があります。薬局などで購入する場合は、適当に購入するのではなく、かかりつけの医師や薬剤師さんに相談してから選ぶようにしてください。

そして『漢方』でおすすめしているのが、体内の水分の巡りを整え、むくみ取りができる『五苓散(ごれいさん)』です。気圧を感じやすい人は内耳がむくんでいる可能性があるので、五苓散のような利水作用のある漢方を使って、むくみを取ってあげると、耳のむくみも取ることができ、気圧変化も感じにくくなりますよ。」

酔い止め薬も漢方も、取り入れるタイミングは早め早めが肝心。自分の耳が気圧の変化を感じ始めているタイミングをとらえたら、そのときに飲むようにしましょう。

【日のメソッド】頭痛に負けない強い体をつくる

頭痛の症状を抱える人の中には、薬を飲むとアレルギーが出たり、妊娠中の人など、薬が飲めない人も多くいます。そんな人たちでも日常で取り入れられる方法はありますか?

1分でできる『くるくる耳マッサージ』

痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
「私の開発した『くるくる耳マッサージ』は、即効性がありマッサージをしたらすぐにその場で効果を実感できるので、薬が飲めない人にもおすすめしています。また耳の血行が悪くなると、耳は硬くなり頭痛の原因になります。日頃から耳を柔らかく保つためにも、耳の調子や天気が悪くなりそうなときにマッサージを行ったり、人によっては朝昼晩定期的にやっている人もいます。そして続けることによってお薬がいらなくなりますよ。」

【くるくる耳マッサージの行い方】
1、親指と人差し指で両耳を軽くつまみ、上・下・横に、それぞれ5秒ずつ引っ張る。
2、耳を軽く横に引っ張りながら、後ろ方向に5回、ゆっくりと回す。
3、耳を包むように折り曲げて、5秒間キープする。
4、手のひらで耳全体を覆い、後ろ方向に円を描くようにゆっくりと回す。これを5回行う。

頭痛を緩和させる、食材や入浴温度

痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
「私がおすすめしているのがビタミンB類や亜鉛を含む食材。ビタミンB群を含む食材には、豚肉や玄米、ナッツ類などがあり脳や神経を正常に保つ働きをします。また貧血に効果があったり、体内のさまざまな働きをサポートする亜鉛を含む食材には、牡蠣や胡麻、アーモンドなどがあります。気圧の変化を貧血の人は受けやすいので、今の時季は積極的に牡蠣などの食材を食事に取り入れるようにしてください。

お風呂ではしっかりと湯船に浸かり、ゆったりと体を休めることが大切です。4月頃は38~40度の湯船に最低でも5~10分を目安にして浸かるようにしてください。あまりにも高い温度や長い入浴は、のぼせによる頭痛の原因にもなるのでおすすめしていません。」

痛みをコントロールして、すっきりとした毎日を

痛みをコントロールできる、天気痛予報―4月の不調「頭痛」
気圧変化を感じない、閉鎖空間に行けばもちろん頭痛を起こす頻度は少なくなりますが、私たちが生活する環境下では気圧の変化からは逃れることはできません。強い頭痛を感じても一時的なものだからとその場しのぎで頭痛薬を飲むのではなく、自分の頭痛パターンを理解し、事前にコントロールできる術を身に付けていくことが大切だと佐藤先生は話します。

桜はあっという間に散り、短い春は終わりを迎えます。これから始まるジメジメした梅雨や、季節の変わり目に負けないためにも、今から不調と上手に付き合っていきましょう。

プロフィール

佐藤純

天気痛ドクター。名古屋大学教授を経て愛知医科大学医学部客員教授。中部大学生命健康科学部教授。2005年より愛知医科大学病院 痛みセンターと東京竹橋クリニックにて日本で唯一の「天気痛外来」を開設。
著書に『天気痛 つらい痛み・不安の原因と治療方法』(光文社)、『「低気圧頭痛」は治せる!』(飛鳥新社)、『まんがでわかる天気痛の治し方 気圧による不調をズバッと解決!』(イースト・プレス)などがある。
気象病外来・天気痛外来(愛知医科大学・東京竹橋クリニック) - 天気痛ドクター 佐藤 純
公式HP

illustrator/小池ふみ

Fumi Koike (@fumi_koike)
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