多様な表情のコラボレーション

テーブルのスタンダードなバリエーションは、黒・白・ナチュラルのカラーや仕上げが揃いますが、それに加えて特別な周年を祝う記念仕様やショップ別注カラーなども。歴史あるブランドの製品でありながら、ここまで多彩なバリエーションを発表することは稀なのでは……。2006年に入社し、アルテック東京オフィスを立ち上げた林アンニさんは、アルテック製品のカスタマイズについてこう話します。

今回オンラインで取材に答えてくれた、林アンニさん

「FIN/JPNフレンドシップ コレクション」のひとつとして、建築家の長坂常氏が手掛けたシリーズ「カラリン」。日本の伝統技法「浮造」と漆塗りの技術「津軽塗り」を掛け合わせ、木目を浮き上がらせる独自の手法を生み出した(写真:Artek)

「鈴木マサルの傘展」10周年イベントのコラボ企画。大胆で楽しいカラーリングにおめかしした「L-レッグ」が印象的。ラメラ曲木を用いた「115 傘立て」の特別仕様も。(写真:Artek)

徳島県の藍師・染師集団「BUAISOU」とのコラボレーション「スツール 60 藍染」。2019年のフィンランドと日本の外交樹立100周年を記念したプロジェクト(写真:Artek)

2007年「コム デ ギャルソン青山店」の展示で、2nd Cycle が日本で初めて紹介された。
「2nd Cycleという取り組みは、日本では最初から注目されていた印象です。アアルトを知っている人はもちろん、知らない人にとっても『年月を重ねても魅力的なプロダクト』ということが伝わったんじゃないかなと思います」とアンニさん(写真:Artek)
「前身の会社から新しく『haluta』を立ち上げるとき、オーナーさんから『フィンランド語の名前を考えているんですけど、“ハルタ”というのは変ではないですか?』と相談を受けて。一緒にお茶しながら、いちフィンランド人として(笑)、『とてもいい名前なんじゃないか』と答えましたよ」

「haluta」はフィンランド語で“願い”に近い意味をもつ
「haluta」のWEBで使用されている写真。ヴィンテージ製品との組み合わせや、暮らしをイメージできるコーディネートが魅力(写真:haluta)

軽井沢の倉庫から一部を移動してヴィンテージ家具を展示販売。家具だけでなく、器や小物も購入することができる

【haluta tokyo】東京都渋谷区神宮前2-17-6 神宮前ビル2F 13:00~19:00 (18:00 最終入店) 不定休

店内の窓際に配置されていた半円テーブル。「こんな感じで置きたいけど置けないって人も多いですけど、それはそのときが来たらでいいと思う。使わないときは脚を外して畳んでおけますし、それまで別の場所に置いていても邪魔にならないサイズ感です」と所さん
![キナリノモール名品探訪記 File2
Artek(アルテック)-豊かな暮らしをつくる家具 [後編]](https://kinarino.k-img.com/system/press_images/001/882/193/87a32c2063e1e5872620ce56d9e3824678e4b8f3.jpg?1650522947)
「今までいろんな色で作りましたけど、現在は日本人ならみんなわりと好きな濃いネイビー(スモーキーブルー)と、取り入れやすい淡いペールグレーの2色に絞りました。ペールグレーは、経年変化も表れやすいし、どんな部屋にも合う良い色だなと思います。過去にもう少し濃いグレーを作ったこともあるんですけど、この微妙なニュアンスカラーのほうがアルテックというか、北欧らしさが出るなと思っています。グレーのものって皆さん何かしらは絶対持ってるじゃないですか。だから自然とお部屋に入れたときも馴染むと思いますよ」

別注カラーの「ペールグレー」。光の加減でホワイトや淡いブルーにも見える不思議な色(写真:haluta)

取材時に用意してもらったのは別注カラーの「スモーキーブルー」。深い色味ながらヴィンテージ感のある落ち着いた雰囲気で、どんな部屋にも馴染みやすい

「Forbo(フォルボ)」のカラーサンプル。左の「オリーブ」と右の「ライトブルー」は過去にhalutaで人気だったが現在は廃盤に
「僕は『90B テーブル』のシルエットがすごく好きです。『スツール 60』がそのまま大きくなったようなテーブルで、一緒に並べたり上に積み上げるだけでもすごく可愛くて。エッジが効いた半円テーブルよりも、もう少しナチュラルに使えるものとしておすすめです。『95 テーブル』は少しずつ認知されてきているので、『90B テーブル』も個人的に推していきたいアイテム(笑)。あとは、日本の家庭で使うと考えたときに一番多用性があったのが、『80B テーブル』という長方形のもの。今は製品ラインナップから離れてしまっているのがすごく惜しいですね」
スタッフの所さんいちおしの「90B テーブル」。直径75cmなので、一人暮らしの部屋にも、サブテーブルとしても柔軟に使えるサイズ感(写真:haluta)

現在の製品ラインナップにはない「80B テーブル」を2台並べて(写真:haluta)

ほかの長方形と組み合わせてもかわいい半円テーブル(写真:haluta)
自分に心地よいものを身近に置く、豊かな暮らし

(写真:Artek)
アルヴァ・アアルトもまた自然を愛し、自然の中に現れる有機的なフォルムを建築と家具デザインに応用し、自然素材を用いた製品を大切にしていました。その思いはアルテックで働く人々や現代のデザイナーにも受け継がれています。アンニさんは、これからのアルテックについてこう話してくれました。

(写真:Artek)
私たちは「モノ」を手に入れることによって直接的に幸せを得られるわけではありません。しかし、自分の幸せは何なのか、どこにそのヒントがあるのか、問いかけるきっかけになるはずです。
遠い国で生まれた名作は、言葉なくとも「本当に豊かな暮らし」を教えてくれるよう。今日も、そして間違いなく100年後も。このテーブルの上で、あたたかい語らいが生まれていくのでしょう。
(写真:Artek)