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マダムの香りを、鞄にしのばせて

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2021年11月29日作成
うまく言語化できない、好きな香りがあります。それは小さい頃によく嗅いだ、祖母の家の鏡台やハンカチなどの持ち物からほんのり漂う不思議な芳香。満開の花束のように甘さと野性味が混ざった、とでも言えばいいでしょうか。
いつも爪をきれいな色に彩っていた祖母は、子供の目から見ても小粋な感じの人でした。雰囲気とリンクしたのか、その香りも「おしゃれなにおい」として幼心にインプットされたのです。
マダムの香りを、鞄にしのばせて
大人になってから同じ香りが欲しいと思い「昔何の香水付けてたの?」と祖母に聞いたものの「付けたことないよ」の一言で、あえなく撃沈。手に入れることを諦め、存在すら半ば忘れていたある日、雑貨屋さんでその香りと偶然の再会を果たしました。

それがこちらの『papier d'armenie triple(パピエ ダルメニイ トリプル)』。1885年にフランスで創業して以来長い歴史を持つ、ちょっと珍しい紙製のお香です。ピンクのパッケージがレトロで可愛い“Rose”は、バラ特有の華やかさと草っぽさ、それからベビーパウダーに似た甘さが溶けあったような、一言では形容しがたい……かつての自分が脳内に記憶した、まさに“あの香り”でした。
マダムの香りを、鞄にしのばせて
中身は、3枚でひと綴りの紙が束ねられたメモ帳のような形状。切り取り線に沿って1枚ずつ切り離し、アコーディオン状に折ったものを耐熱性のお皿の上で燃やして使います。
昔から浄化の儀式や抗菌を目的に使われていたベンゾイン樹脂が含まれているので、焚くことで部屋のこもったにおいやタバコ・ペットなどの気になるにおいをリフレッシュできる、とのこと。消臭剤として活用するのが正しい使い方のようです。
マダムの香りを、鞄にしのばせて
ただしこちらのお香、本来の目的では使用したのは数回だけ。というのも、家に持ち帰ってみると放たれる香りが結構ベビーパウダー感強めなことが判明…。野花っぽい香りをささやかに楽しみたかったわたしとしては、どうにかほのかに香らせる手段はないかひと工夫する必要がありました。

そこで編み出したのが「しおり代わりにして文庫本に挟む」「ポーチに入れる」「ハンカチに挟む」など、1枚ずつ切り取って持ち歩く使い方。紙自体にしっかり香りがついているので、ふわっと香らせたい派としては移り香になったくらいがちょうどよいのです。
本を取り出したときや、ハンカチを広げたときにふと鼻先へ届く、小さい頃に憧れたおしゃれな人を体現する香り。かつてのマダムに近づきたくて、今日も小さな紙きれをそっと鞄に忍ばせるのでした。

この記事を書いた人

編集 michaka
キナリノ編集部
編集 michaka
お酒とくだもの、酸っぱいものに目がありません。生活雑貨・家電・グルメなどなど、幅広く担当しています。晴れた日に屋外で読む小説と、深夜に見る映画が好きです。

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