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vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」

横田株式会社は、1901年創業の老舗糸メーカーです。長きに渡り家庭で愛されてきた手縫い糸「ダルマ家庭糸」を、2013年に「DARUMA THREAD(ダルマスレッド)」というブランドとして新たに立ち上げ、一世紀以上続く歴史に新たな糸口を見つけました。今までの手芸用品になかったような、ワクワクするプロダクトの数々に、根強いファンも多い「DARUMA THREAD」。歴史あるブランドが変化するきっかけはどんなものだったのでしょうか。創業者の子孫で、現在代表を務める横田宗樹さんにお話を伺いました。(2016年06月17日作成)

写真:松木宏祐文:キナリノ編集部

(画像提供:横田株式会社)

(画像提供:横田株式会社)

「物を大切にしなさい」――幼い頃から当たり前のように言われてきた言葉ですが、大人になった今も、私たちはそれを本当に実践できているでしょうか。

食べ物を粗末にしない。おもちゃを乱暴に扱わない。古くなったり壊れてしまった物は、補修したり手入れをすることで、なるべく長く使えるように。中でも、針と糸を使って洋服のほつれを直したり、ボタンを付ける裁縫は、「物を大切にする」ための、もっとも身近で基本的な作業です。家族が自分のために一生懸命作ってくれた通学セットや、大切な誰かのために何度も糸をほどきながら、初めて作った編み物……。

私たちが「もの」を大切だと思えるのは、何かを作る上での誰かの気持ちや、それに掛けられた時間を知っていて、感謝できるからこそなのかもしれません。

最高級品の糸にのみつけられていた“ダルマ印”

(画像提供:横田株式会社)

(画像提供:横田株式会社)

そんな、物を慈しむ時間を、長い間支えてきた「糸」があります。
写真の「ダルマ家庭糸」で知られる横田株式会社は、今年で創業115年の歴史ある縫糸・手編糸の製造会社です。おばあちゃんやお母さんの裁縫箱の中で、このダルマ印を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
(画像提供:横田株式会社)

(画像提供:横田株式会社)

京都の絞り鹿の子商で修行を積んだ創業者の横田長左衛門が、明治34年に世界最高品質を目指し、糸の製造と行商を行ったのが、現在の横田株式会社の始まりでした。女性の和服が木綿から絹に移りつつあった当時、長左衛門は、毛織物のモスリン(*1)や銘仙(*2)を縫うのに適した糸を作ろうと、綿でありながら絹のように光沢があり、丈夫で滑りのよい絹糸代用「絹カタン糸」を販売しました。その最高級品にのみつけられたのが、「七転び八起き」の意味を持つダルマのマークだったのです。その後、「ダルマの糸なら使って安心」と口コミが広がり、全国の家庭の裁縫箱でダルママークの縫糸が見られるようになりました。
*1 木綿、羊毛などを平織りにした薄手の織物
*2 大正から昭和にかけて女性の間で流行した平織りの絹織物。大胆な柄や鮮やかな色彩が特徴
「ダルマ糸」はどうやって作られている?
vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
滋賀県長浜市。ダルマの糸は、滋賀の最高峰・伊吹山の麓にある製造工場で作られています。この日は抜けるような青空。きらきらと輝く田園に囲まれた工場が、穏やかに迎えてくれました。
vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
朝9時になると、ひんやりとした広い工場内に「ラジオ体操第一」の音楽が響きます。ふわっと立ち込める香ばしい綿のにおい。そして、ガシャン、ガシャン、と規則正しく聴こえる機械の音。見たところ随分と年齢を重ねている、それでいてしっかりと頼もしい撚糸機の動きに思わず圧倒されてしまいます。

横田株式会社の自社工場は二つ。一つはここ「製造工場ダルマン」、もう一つは京都・紫野にある染色工場。綿糸を中心に撚糸・精錬・染色・製品加工までを自社工場で行っています。
滋賀の工場で作られるのは主に綿糸。
紡績工場から送られてきた単糸と呼ばれる細い糸を合糸して、チーズと呼ばれる糸玉に巻き、撚糸します(写真左)。糸をねじることで、太さと強度を出していき、炎の中で毛羽を焼いて表面を整える。これをガス焼きといいます(写真右)

滋賀の工場で作られるのは主に綿糸。
紡績工場から送られてきた単糸と呼ばれる細い糸を合糸して、チーズと呼ばれる糸玉に巻き、撚糸します(写真左)。糸をねじることで、太さと強度を出していき、炎の中で毛羽を焼いて表面を整える。これをガス焼きといいます(写真右)

ガス焼きを終えた後は、染色へ向けての作業を進めます。写真は「かせ切り機」。かせ切り機で一かせ分を巻き終えた後、上から垂れ下がった糸「ひびろ」でかせを束ね、結び合わせます。こちらは熟練者のみができる難しい作業。巻き終えた糸は染色工場へと送られます

ガス焼きを終えた後は、染色へ向けての作業を進めます。写真は「かせ切り機」。かせ切り機で一かせ分を巻き終えた後、上から垂れ下がった糸「ひびろ」でかせを束ね、結び合わせます。こちらは熟練者のみができる難しい作業。巻き終えた糸は染色工場へと送られます

染色工場でシルケット加工・漂白・染色された糸は再び滋賀の工場に送られ、かせからチーズへ巻き直されていきます。これにより、この後製品となる巻きの作業がしやすくなるのです

染色工場でシルケット加工・漂白・染色された糸は再び滋賀の工場に送られ、かせからチーズへ巻き直されていきます。これにより、この後製品となる巻きの作業がしやすくなるのです

カードに巻かれた糸は、最後までひとつひとつ検品されていきます。写真は、竹串で巻き乱れた糸を内側に入れているところ。機械ではできない繊細なところは、こうして手作業で丁寧に進められていくのです

カードに巻かれた糸は、最後までひとつひとつ検品されていきます。写真は、竹串で巻き乱れた糸を内側に入れているところ。機械ではできない繊細なところは、こうして手作業で丁寧に進められていくのです

代表取締役・横田宗樹さんの新しい挑戦

横田株式会社の代表取締役・横田宗樹(もとき)さん

横田株式会社の代表取締役・横田宗樹(もとき)さん

不動産営業で出会った人々に刺激を受けて
家業に挑戦してみたくなった
工場を歩いていると、ところどころに今は使われていない古い機械が目に入りました。

「場所を取るからどかしてくれって言われるんですけど(笑)、昔の機械って格好良いじゃないですか。いつか直営店ができたらディスプレイにしようと思って取っておいてもらっているんです」

そういってうれしそうに話してくれたのは、横田株式会社の代表取締役である横田宗樹(もとき)さん。
企画チームの部長も兼任する横田さんは、ダルマ糸に新しい風を吹き込もうと、新ブランド「DARUMA THREAD(ダルマスレッド)」を立ち上げます。京都出身で、建築物の造形美に触れることが多かったこともあり、10代の頃から建築に興味を持ち始め、大学卒業後は家業を継ぐことなく、商業施設の企画や内装の設計、施工を手がける不動産会社の営業を務めていました。
動かずとも、今もなお存在感を放っていた古い玉巻機

動かずとも、今もなお存在感を放っていた古い玉巻機

「就職活動をしていたときは、実家の家業について理解はしていたのですが、まずは自分の人生を生きようと思っていました。大学を卒業して、いきなり家業を継いでも世間知らずになってしまうでしょうから、まずは違うところに就職しよう、と」

就職先では、商業施設のテナントリーシング*に携わっていた横田さん。大きなお金が絡む業務だということもあり、取締役や経営者など、トップで働く人たちと話をする機会も多く、刺激を受けたといいます。
* 主に商業施設などの店舗でテナントを探し、出店の契約をする仲介業務
vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
「営業を通していろいろな人に会っているうちに、枠に囚われず幅広いことをしている経営者の方々を見て、面白いなと思ったんです。『いつかは家業を継がなくてはいけない』と思ってはいたものの、自ら積極的に『やりたい』という気持ちにはなれなかった。でも、色々な人の考え方を聞くうちに、家業を継ぐ機会を与えてもらえるのであれば、ぜひ挑戦してみたい、と思えるようになったんです」

こうして、東京支店の営業から横田株式会社に入社した横田さん。前職では一つの案件で数百万~数千万の資金が動く仕事をしていただけに、ひとつ数百円の小さな糸が、多くの社員を支えているということにシンプルに感銘を受けたといいます。創業家の人間が入社するとなると、少なからず社内のスタッフから意識されるだろうということもあり、「周りの人がしていることを自分もできるようになろう」という気持ちで、人一倍勉強する毎日を送りました。
「SyuRo」宇南山加子さんとの出会い
「SyuRo」と「ダルマスレッド」のコラボレーションアイテム、ブリキの裁縫缶。元々、SyuRoオリジナルの缶を裁縫箱として使用している方も多かったそう(画像提供:横田株式会社)

「SyuRo」と「ダルマスレッド」のコラボレーションアイテム、ブリキの裁縫缶。元々、SyuRoオリジナルの缶を裁縫箱として使用している方も多かったそう(画像提供:横田株式会社)

社内で経験を積み、色々な人に会い、ある程度色々なことを判断できる立場になった横田さん。今までの延長線上ではなく、何か面白いことができないかと考えていました。そんな時、プロダクトデザインやライフスタイル雑貨を扱うデザイン会社「SyuRo(シュロ)」を主宰する、宇南山(うなやま)加子さんと出会います。ある時、横田さんは東京・台東区にあるSyuRoの店舗兼アトリエへ出向きました。

「あの辺りは面白そうなお店が沢山あるな、と以前から思っていて、『SyuRo』にふらっと立ち寄ったんです。どちらかというと男性的で、素材感むき出しのプロダクツが薄暗い照明の中で光っている……その雰囲気が、ダルマの製品とも合うんじゃないかと思いました。僕自身、心のどこかで『手芸店じゃないところに糸を置いて欲しい』という想いがあったんですけど、たまたまその日店舗にいらっしゃった宇南山さんと喋っていて、『なんか面白そうじゃないですか』と興味を持っていただけたんです」
靴下とボールタイプの家庭糸がセットになったギフト。イニシャルや模様など、自分の好きなように刺繍することができるので、生まれてきた赤ちゃんとママにとって最高のプレゼントになりますね(画像提供:横田株式会社)

靴下とボールタイプの家庭糸がセットになったギフト。イニシャルや模様など、自分の好きなように刺繍することができるので、生まれてきた赤ちゃんとママにとって最高のプレゼントになりますね(画像提供:横田株式会社)

意気投合した二人がさっそく取りかかったのはギフト用の手作りキット。
「そもそも人のために手を動かすということは、想いを伝えたり、一手間かけるということ。それが伝わりやすいベビー向けのキットが良いのでは」という宇南山さんの提案で、ひとつひとつ製品づくりを進めていきました。こうして、ダルマ家庭糸は「DARUMA THREAD(ダルマスレッド)」として新しいスタートをきったのです。

「もの」だけではなく、それ以外の“付加価値”が必要

今秋、新発売のソックヤーン

今秋、新発売のソックヤーン

業界全体を見て作る側と使う側の間に溝を感じた
新製品を考えたり、ひとつひとつの色を決めるのにも時間を掛け、今は「こだわって作ること」に90パーセント以上の力を費やしているという、横田株式会社の企画チーム。今年の秋に発売になるという新商品を一足先に見せていただきました。こちらは、鮮やかでこっくりとした深い色味のソックヤーン。その名の通り、靴下を編むのに適した毛糸です。

でも、「靴下用の糸」って、改めて言われると、なんだか新鮮な印象……。

「海外ではソックヤーンってすごくメジャーなんです。日本にもあるにはあるんですけど、太過ぎたりとか、靴下なんだから洗濯機で洗えないとダメなのに、洗えなかったりしたんですよね。昔は『中細』と言われるような毛糸で靴下を編んでいたんですけど、どちらかというとメーカーが並太・中細・極太っていう風に特に用途を決めずに売り出していて、それを手芸好きの人が『これで靴下を作ると可愛いわよ』って自己流で広まっていく形だったんです。メーカーの方は『これで何を作るのか分からないけど、中細が売れるからとりあえず作ろう』というふうに、あまりお客様のことを知らなかったんですよね。正直、うちも数年前までそうでしたし」
vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
業界全体を見渡したときに、作り手であるメーカーと使い手であるお客さんに大きな溝があることに気付いた横田さん。「向こう側」が見えない物の作り方に違和感を覚えました。

「『編み物なんてまずしない人』が作って、売りに行き、店頭の人が編めないことも多い。それで、お客さんだけが好きで買っていくという、なんとなくそんな図式があって。それだと、何だか上手く広がっていかない。そういうところが見えてきたのもあって、僕たちが作る物では『編んだ物を身につける』ということの良さを少しずつ伝えていきたいなと思ったんです」
vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
「手作り=ダサい」という意識を変えたい
現在、横田さんが力を入れていることの一つに「伝える」ことがあります。編み物や縫い物をしたことがない人にとっては、何となくハードルが高そうに見える手芸の世界。「初めのきっかけ」が掴めずにいる人に向けて、横田株式会社では現在、「作ってみたい」と思わせるアイテムやコンテンツを積極的に発信しています。

「基本的に『手作り』って、“ダサい”というイメージが少なからずあったと思うんです。上手に出来るわけがない、というか。僕自身もそうだったんですけど、時間を掛けて作ったのに、いざ出来上がると『こんなものか……』って愕然とする経験って絶対にあると思うんですよ。そういう意識を変えていきたくて。一から作らなくても、今ある物にちょっと足すだけでオリジナルは作れるし、例えば、プラントハンガーなんかは、素敵なアイテムが簡単に作れます。三つ編みなら皆さんできるじゃないですか。縫う、編む、だけではなく、『結ぶ』ということだって立派な手芸です。そういうことをしながら、自分の暮らしの中で自分らしさを表現できたら素敵だなあと思って」
太めの糸を編んで作られたプラントハンガー。糸を使ったワークショップも定期的に行われています(画像提供:横田株式会社)

太めの糸を編んで作られたプラントハンガー。糸を使ったワークショップも定期的に行われています(画像提供:横田株式会社)

手縫い糸と並んで、横田株式会社を支えたロングセラーのレース糸。昭和30年代にレース編みが大流行し、多くの人がバッグの中にレース糸を忍ばせていたとか。元々この工場もレース糸を増産するために建てられたのだそう。こちらは、年に一度販売される20g増量パッケージの梱包作業中

手縫い糸と並んで、横田株式会社を支えたロングセラーのレース糸。昭和30年代にレース編みが大流行し、多くの人がバッグの中にレース糸を忍ばせていたとか。元々この工場もレース糸を増産するために建てられたのだそう。こちらは、年に一度販売される20g増量パッケージの梱包作業中

人気商品の「SASAWASHI」は現在12色で展開中。標高1000m以上にのみ群生するくま笹を原料にした和紙の糸で、帽子などを編むのに適しています。天然の抗菌作用、防臭、UVカット、撥水(はっすい)加工が特徴

人気商品の「SASAWASHI」は現在12色で展開中。標高1000m以上にのみ群生するくま笹を原料にした和紙の糸で、帽子などを編むのに適しています。天然の抗菌作用、防臭、UVカット、撥水(はっすい)加工が特徴

そもそも、横田さんが「伝えること」を大切にしているのには理由があります。

ここ数年、手芸用品は生産量も消費量も減少傾向にあり、ヒット商品を作っても作っても、なかなか楽になれないのが現状。街の商店街から手芸店が減り、100円ショップの手芸コーナーはどんどん増えていく……。もっと抜本的にやり方を変えなければいけないのだろうか、と考える中で、想うことがあるといいます。

「多分、“もの”だけではしんどいんだろうなって思うんです。形としては物を売っているかもしれないんですけど、そうじゃない付加価値というか、何かを提案していかないと難しいだろうなって思いますね」
vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
自分で手を加えたものは、その人に似合う。
そのための提案をしていきたい
物に対する付加価値。それは一体どんなものなのでしょうか。

「僕は今34歳なんですけど、15~6歳のときに見ていたセレクトショップの店員さんって、すごく格好良く見えたんですよね。それって何でだろうって考えると、多分、自分らしい服をちゃんと選んで着ていたからだと思うんです。今は全体的に、『その人らしさ』が薄れている気がして。なんとなくそれが良い感じ、という気持ちで物を買っている雰囲気があるというか。『良い』『悪い』というよりは、『似合っているかどうか』の方が大切な時代なのかなあと何となく思っていますね」

でも、と横田さんは続けます。

「自分で手を加えた物ってその人にちゃんと似合うし、気持ちが乗っていると自然と素敵に見えると思うんです。何でその色が良いと思ったのかということも含めて、その人らしさが表現できるじゃないですか。付加価値ってことで言うと、自分で手を動かして作った物が、自分の暮らしの中に馴染むような、そんなご提案がしたいんです。そうするとその人は、その人らしく生きていける気がして」
横田さんが、息子さんのために刺繍をした小さな上履きとソックス。見慣れたアイテムも、糸を少し加えるだけでこんなに個性的に、素敵に仕上がります

横田さんが、息子さんのために刺繍をした小さな上履きとソックス。見慣れたアイテムも、糸を少し加えるだけでこんなに個性的に、素敵に仕上がります

物が少なかった時代は、人々が「物を大切にする」ということを当たり前のように実践していました。選択肢が増え、“物”の価値が複雑化してしまった現代では、それを見つけることがなかなか難しくなっているのかもしれません。横田さんは「付加価値」をこうも語ります。

「身につける衣服も、使う道具も、自分がお金を払ってまで買うなら“共感できるもの”でないと買ってもらえないし、僕自身も買わないと思うんです。例えば、ボタンって付け直します? シャツとか着ているとどうしても袖の辺りがボロボロになってきて、それ以外はきれいなんですけど、ここを直したりするのに数千円掛かるってなると、新しい服を買おうってなってしまいますよね。服の値段もすごく安くなってきているし。本当に大事に使いたい物でなければ、中々直してまで使わない。その辺りが難しいところというか。だから、『ボタンをつけてまで着たい服』も必要なんだと思います」

糸だけにこだわらず、お客さんの期待を超え続けたい

今年の4月に発売になった玉巻機。部屋に置いておきたくなるようなアイテムが、今までにありそうでなかったため、横田株式会社で「作ってみよう」ということになったそう(画像提供:横田株式会社)

今年の4月に発売になった玉巻機。部屋に置いておきたくなるようなアイテムが、今までにありそうでなかったため、横田株式会社で「作ってみよう」ということになったそう(画像提供:横田株式会社)

横田株式会社では、現在糸だけに限らず、手芸にまつわる様々な製品を展開しています。そのどれもが「こういうものがあったら面白いよね」という遊び心があったり、「こんなの欲しい! 」という作り手の声をヒントに作られているアイテムばかり。

「多分、『ダルマの糸』って、今はある程度認知して頂いていると思いますし、そういったものづくりの考え方に期待して、他のアイテムを購入して下さる方もいると思うんです。だから、『良いもの』であることは当然で、そこからさらに『期待を裏切らないこと』が大切だと思っています」
こちらはマテリアルコード。「ペレット」というプラスチックを溶かして作られています。本来は農業資材、防虫網、ロープ、網戸などに使用される素材ですが、おしゃれなカラーバリエーションで、かぎ編みのバッグやアクセサリーを作るのにもぴったり。水に濡れてもOKなので、夏場に活躍しそうなアイテムとなりました(画像提供:横田株式会社)

こちらはマテリアルコード。「ペレット」というプラスチックを溶かして作られています。本来は農業資材、防虫網、ロープ、網戸などに使用される素材ですが、おしゃれなカラーバリエーションで、かぎ編みのバッグやアクセサリーを作るのにもぴったり。水に濡れてもOKなので、夏場に活躍しそうなアイテムとなりました(画像提供:横田株式会社)

フィルムに巻かれて流れてきたカード巻きの糸。これを5つずつ仕分けしながら、欠陥がないかどうかを瞬時に見分けています。入社当時はやりすぎなのではないかと思った横田さんでしたが、その「やりすぎ」くらいのチェックがあるからこそ、長い間信頼されてきたと、今では思っています

フィルムに巻かれて流れてきたカード巻きの糸。これを5つずつ仕分けしながら、欠陥がないかどうかを瞬時に見分けています。入社当時はやりすぎなのではないかと思った横田さんでしたが、その「やりすぎ」くらいのチェックがあるからこそ、長い間信頼されてきたと、今では思っています

私たちが沢山の中から何かを一つ選んで購入するときは、「その先」を想像しているときかもしれません。「これがあったら少し部屋が豊かに見えるな」「この色は、あの服に似合いそう」というふうに。物と一緒に手に入れたい「何か」があってこそ、初めてその物を愛おしく思えるのではないでしょうか。

「A社もB社も同じ物を出してしまうと、選択肢が少なくなってしまうと思うんですけど、逆を言うと、皆が『他がやっていないようなことをやろう』とすればもっと盛り上がっていくんじゃないかなと思います。そこをどこかの真似事みたいにしてしまうと、ユーザーさんの期待を裏切ってしまう。だからこそ「今ないもの」を作らないといけないっていうのは意識しています。『こんなのあったら面白いよね』っていうことを、糸に限らずどんどん広げていきたいなと思っています。せっかく日本で作っているわけですから、それは国外の人にもお伝えしたくて、海外の展示会に向けて準備なんかもしているところです」
目移りしてしまう、鮮やかな色見本

目移りしてしまう、鮮やかな色見本

物事の発想の原点は「お客様の目線に立って」ということだという横田さん。その想いは工場の見えるところにも、しっかりと表れていました

物事の発想の原点は「お客様の目線に立って」ということだという横田さん。その想いは工場の見えるところにも、しっかりと表れていました

透き通るように美しい、染色作業後の綿糸

透き通るように美しい、染色作業後の綿糸

vol.40 横田株式会社-ダルマ糸製造元 -創業115年の老舗メーカーが紡ぐ「新しいものづくり」
「どんなに時代が変わっても暮らしを支えるのは手縫糸」と、創業者の横田長左衛門が工夫を重ねて生み出した絹カタン糸。そこから、たくさんの信頼や想いが絡み合い、現在の「ダルマ糸」になりました。一世紀以上もの間、それを編み上げていくことは、容易なことではありません。少しでも引っかければ、すぐにもつれてしまいそうなほど複雑にも思えます。

色々なものを編み上げて、巻き込んで。簡単にはほどけないほど強く、だけど、ひとつひとつを丁寧に紐解いてみれば、最後にはシンプルな、一本の信念に辿り着きます。そしてこれからもきっと、様々な糸が編み上げられていくのでしょう。
(写真左から)企画生産部の松坂さん、整備士の岡本さん、横田さん、工場長の浅井さん、工程管理の山口さん

(写真左から)企画生産部の松坂さん、整備士の岡本さん、横田さん、工場長の浅井さん、工程管理の山口さん

インタビューの最後に、「糸って売るの、難しいんですよ。大変なんです」と、
言葉とは裏腹に横田さんの笑顔がはじけました。その笑顔はこれから先に胸を膨らませているようです。

何かを届け、伝え続けていくために必要なのは、何度転んでもまた立ち上がる精神。
横田さんのこの笑顔こそが、今のダルママーク。そう、「七転び八起き」の印です。

(取材・文/長谷川詩織)
横田株式会社|よこたかぶしきがいしゃ横田株式会社|よこたかぶしきがいしゃ

横田株式会社|よこたかぶしきがいしゃ

赤いダルマのマークでお馴染みの糸メーカー。1901年の創業以来、高い品質と使いやすい手縫い糸として愛されてきた。2013年、ダルマ糸の精神を引き継ぐ形で、新しく作られたブランド「DARUMA THREAD(ダルマスレッド)」では、「糸のはじまりは、楽しみのはじまり。糸さえあれば、なんでもできる」をコンセプトに裁縫道具をはじめとした雑貨やギフトを展開中。

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