眼鏡の廃材から生まれる、毎日身につけたくなるアクセサリー「Sur」
ストーリーを感じさせるアクセサリーは、表面だけではなくて、内面の輝きを引き出してくれるような芯ある強さを感じさせます。


「Sur」のピアスが勢ぞろい。透き通るような質感と軽さが印象的なパーツは、眼鏡のプラスチック枠の端材から加工されたものです。使用されているのは、アセテートという素材で、石油系の合成プラスチックとは違い、元は綿花から作られる食物繊維。だから、人の肌にもそっと寄り添う優しさがあります。柔らかく光沢感あるコットンパールが女性らしさを加えています。

手に取ったとき、はっとするのはその軽さ。無色透明のものは光を受けたときの質感がたまらない。空気を含んでいるようで、有機的な美しさを感じさせます。

柄があるものも、直線だったり楕円だったり、形を変えることで全く違った印象に。貝殻のように、1つ1つ微妙に色合いや模様が異なって見えるのもいいですね。

明るさや肌色、髪型、着ている服、...状況によって、表情が変わるピアス。派手さはないけれど、しっかりとした主張を感じます。
‘もったいない‘が形になったピアス
眼鏡の街として知られる福井県鯖江市。明治期より始まった眼鏡製造の歴史は100年を超え、その技術力は世界で一目置かれています。今や眼鏡のフレームの生産シェアは国内で94%を占めるほど。熟練の職人が集まり、伝統を継承し、さらに新しい分野へも技術開拓を進めるなど、地域の発展に貢献し続けている産業です。
一方で、こうして大量生産される中でどうしても避けて通れないのが、フレーム枠をくりぬいた後に出てくる端材。それをただ再利用するのではなく、素材としての価値に着目し、若いセンスと情熱を注ぐことで、新たな命を持って誕生したのが、「Sur」のアクセサリーです。

アセテート素材の透明感をより魅力的に表現するために、カッティングにも拘りました。地元の眼鏡会社の協力も得ながら、1点ずつ手作業でパーツを仕上げていきます。

「Sur」のアクセサリーは、地域にある「もったいない」の意識をプラスに転換することで生み出されました。「Sur(サー)」のブランド名は、「surplus(サープラス)」=「余り」という言葉から取られています。ものづくりに真摯に向き合い、地域性を大切にすることで、「余り」に新たな価値を付加することができた。このアクセサリーの背景には、未来に向けて前向きなメッセージが感じられます。

「眼鏡工場で生まれたアクセサリー」。「Sur」のアクセサリーにはストーリーがあるのです。そのストーリーを肌で感じたとき、一層愛おしく感じるでしょう。
ものづくり+デザインユニット、「TSUGI」

「TSUGI」という名前には、「‘次’の世代である若者がものづくりや文化を‘継ぎ’、新たなアイデアを‘注ぐ’ことでモノ・コト・ヒトを‘接ぐ’」という思いが込められています。4つの「つぐ」が地域の過去、現在、未来を繋ぎ、生産性あるコミュニケーションの連鎖を生みだす。実際に、「TSUGI」から発信されるプロジェクトは、県内県外の垣根を超え、たくさんの関心を集めています。

メンバーは、関西からこの地に移住した6人の若者たち。きっかけは2004年に福井豪雨の被災地支援のアート活動として開催された「河和田アートキャンプ」。「芸術が社会に貢献できることは何か」という問いを合言葉に全国から32大学の学生が参加しました。このイベントに参加することで、河和田の人々との交流が始まり、やがて河和田を含む鯖江市のものづくりの現場に魅了されてしまった彼らは、それぞれ、鯖江市で職を見つけ、新たな生活のスタートを切ります。そして「TSUGI」のメンバーとなった後も、肩書は、木工職人、眼鏡職人、デザイナー、鯖江市職員など様々。だけど、「ものづくり」に関わり、鯖江が大好きという点は大きな共通項として、皆に通じています。

2013年に福井に息づく文化や地場産業の魅力を、多くの人に知ってもらいたいという思いを胸に、ものづくり+デザインユニットとして結成した「TSUGI」。その拠点を河和田地区にある老舗の漆器店(錦古里漆器店)の一角に置いています。セルフビルドで改装したというスペースは、事務所としての機能だけでなく、「TSUGI Lab(ツギラボ)」として、イベントスペースにも使われています。ものづくりや地域の資源を紹介するイベントを開催することで、県外に発信するだけでなく、地元の人にも地域の良さを再確認してもらえる場を提供しています。

「TSUGI」オリジナルの、アクセサリーブランド「Sur」。メンバーが協力し合って、企画、製造、販売までプロデュースすることで、「ものづくり」の1つのモデルを作りました。プロダクトデザインは新山悠さんが手掛け、製作、加工は今平心平さん、そしてアートデザインは「TSUGI」の代表、新山直広さんが担当しています。

デザインやものづくりというフィールドに立てば、彼らはこれから更にキャリアを積み重ねていく世代。彼らのすばらしいところは、地域社会において、何が大切で、何が必要か、そして自分たちに何ができるのか、リサーチと実践を繰り返しながら、きちんと未来を見据えて行動していること。「TSUGI」の活動だけではなく、彼らのライフスタイルそのものが、次世代への手本となりそうです。彼らが生み出すヒトモノコトの繋がりが、一体どんな未来へと繋がっていくのか目が離せませんね。
おわりに
福井県鯖江市から発信される‘ものづくりの魅力’。興味を惹かれたら、ぜひ一度、「TSUGI」や「Sur」のホームページを覗いてみてください。

福井県鯖江市のデザイン集団「TSUGI(ツギ)」が立ち上げた、アクセサリーブランド「Sur(サー)」。鯖江市の伝統産業である眼鏡の廃材を素材にピアスなどのアクセサリーを製作しています。肌に馴染む透明感ある輝きと凛とした佇まい。ミニマルなデザインがより素材の存在感を引き立てています。