多くのアイテムから選ばれた“昨年一位”の財布とは?
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土屋鞄製造所-日々を重ねる革財布 [前編]](https://kinarino.k-img.com/system/press_images/001/878/741/47bc80cda6650b565d0fc2bf10a0cdcf755ba884.jpg?1646712828)


小銭は中央のポケットに、紙幣は二つ折りでサイドに。カードも必要最低限なものは充分に収納できる(写真:土屋鞄製造所)

バッグと財布、各6型がラインナップされている「ディアリオ」。プレーンなデザインと使うほど味わいを増すレザーが魅力(写真:土屋鞄製造所)

今年2月には限定色のタンとブラックが発売された(写真:土屋鞄製造所)

デザイナーの舟山真利子さん。美大でテキスタイルを学んでいたころもあり、土屋鞄のものづくりに興味をもち、2005年に入社

デザインは不織布や紙の模型を動かしながら作っていくことが多い。「『ひとつ開ければもうおしまい』という感じで(笑)、マジックじゃないですけど、そういった原理も利用したくて」と舟山さん
二度のリニューアル!「ディアリオ」の歴史

ディアリオシリーズの元祖、「ユニック」の革タグ(写真:土屋鞄製造所)
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土屋鞄製造所-日々を重ねる革財布 [前編]](https://kinarino.k-img.com/system/press_images/001/878/744/97908448772aa15f2a1803af29caf981a27a8f47.jpg?1646712891)
革の個性をそのまま活かしたユニックは、人と同じように皮膚の表情が違っているからこそ、同一製品として長く作り続けるのが難しくなってしまうという面も。「突出した味わいの変化を楽しんでほしい」という当初の目的に回帰するため、誕生から6年後の2014年、「ユニック」は「ユニックリベルタ」として生まれ変わります。前シリーズの好評を受け、今度は全店舗での販売を開始。その後、品質面も検討しながら、より安心して使ってもらえる素材を追求し、現在の「ディアリオ」にたどり着いたと、舟山さんは話します。

ディアリオのLファスを4年半使用したもの(写真右)。深みのある表情に育っている
手間を惜しまない、きめこまやかな縫製などはもちろんのこと、土屋鞄の最大の魅力は素材の力強さ。レザーフリークたちをもうならせる品質に辿りつくまでには、気が遠くなるような長い時間がかかります。タンナーと何度も話し合い、紫外線や摩擦、色落ちなどの試験を経て、ようやくスタッフ全員で胸を張れる素材が完成するのです。

ディアリオシリーズに採用されているオイルメロウレザー。奥行きを感じる色味の秘密は、丹念に塗りこまれたオイル。さまざまな条件で仕上がりのカラーに差が出てくるため、オイルを重ねる工程で微調整をしながら丁寧に仕上げられている(写真:土屋鞄製造所)

ディアリオの製品は、しなやかな柔らかさがあり使いやすい。ほどよいハリの秘密は、原皮となる北米産のステア(満2歳以上の牡牛)。放牧されているため筋肉がついており、繊維が締まっているのが特徴(写真:土屋鞄製造所)
素材を活かす「機能とデザイン」の関係

今年で入社10年目になるという広報の山田智子さん
「初代のユニックのときに、『中身が見えてしまうのでトートバッグに天マチ(蓋)をつけてほしい』というお声が結構あったんです。あとは、社内でも『内装を貼ったほうが革の裏地も見えなくてきれいなんじゃないか』って意見も。でも、それを実現したら製品の良さがなくなってしまうんですよね。良い意味で作りっぱなしというか、天マチがないことで開け閉めしなくていいという使いやすさにも繋がるし、裏まで見えて一枚革の迫力が伝わるから、その案は違うよねって。当時かなり検討していましたね」

山田さん愛用の「レザーキャンバス2wayショルダー」。素材や形の品の良さはそのままに、ちょうどよく肩の力が抜けて雰囲気が出ている
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土屋鞄製造所-日々を重ねる革財布 [前編]](https://kinarino.k-img.com/system/press_images/001/878/748/2217e6dbf641e935e31825bd8074f93baa61303d.jpg?1646712967)

透明感があり美しいコバの処理は特に高く評価されている。やすり掛けで表面をならし、布で磨き、革を薄く漉いて断面を調整することも。複数のパーツが重なりながらも一枚の革に見えるよう様々な工夫が凝らされている

最適なミシンや針の大きさを選びながら魂が宿ったステッチが完成。ミシンの抑えで固定しにくい小さな引手は、職人泣かせのパーツでもある。毎日開け閉めするファスナーは特に神経を使うパーツ。左右の“ムシ”にずれが生じないよう、目と指先の感覚で、木型の上にひとつひとつ張り込んでいく

デザインのポイントにもなっている補強のステッチは手縫いで、糸止めを結びしっかりと中に押し込む。この手間を怠ると糸のほつれなど初期不良にもつながる
(取材・文=長谷川詩織)
ディアリオ ハンディLファスナー(写真:土屋鞄製造所)