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vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ

初めてランドセルを背負ったときの気持ちを覚えていますか? 心細い瞬間も楽しい日も、背中のランドセルがいつも一緒でした。土屋鞄製造所は、そんなランドセル作りからスタートした鞄工房です。50年という長い間、いつも誰かの笑顔を思い浮かべながら続けられるものづくり。小さな箱型の鞄には、誰の、どんな想いが詰め込まれているのでしょうか。今回は工房におじゃまして、その中身をのぞいてみました。(2016年03月25日作成)

写真:松木宏祐文:キナリノ編集部

2016年がスタートし、あっという間にもうすぐ4月。
得意げなすまし顔や、期待に輝く目、ちらっと見せる不安そうな素振り。様々な表情をきらきらさせた小学一年生とすれ違う季節が、今年もやってきます。並んで歩くその背中には、まだ少し大きなランドセル。身体に似つかないランドセルのハンドルをぎゅっと握りしめ、まっすぐ学校へ向かう子どもたちを見ていると、初めてランドセルを背負った時のことを思い出し、すっと背筋が伸びるような気持ちになります。
(画像提供:土屋鞄製造所)

(画像提供:土屋鞄製造所)

東京・足立区にある「土屋鞄製造所」は、今も昔も子どもたちの相棒ともいえる特別な鞄、ランドセルを作り続け、昨年で創業50年を迎えました。
「子どもの持ちものだからこそ、上質で品のあるものを作りたい」。創業者の変わらない信念は世代を越えて受け継がれ、ランドセル専門店としてスタートした小さな鞄工房は、今やランドセルのみに留まらず、バッグから革小物まで幅広く、使うひとにずっと“寄りそう”ものづくりを届けています。
工房が併設されている西新井本店。工房見学スペースがあり、職人の技を間近で見ることができます

工房が併設されている西新井本店。工房見学スペースがあり、職人の技を間近で見ることができます

ドン!トントントントン、カーンカーン、ダダダダダダ……。工房のドアを開けると、ミシンや金づち、あらゆる道具のにぎやかな音が出迎えてくれました。
広い工房内に、完成間近のランドセルが所狭しと並びます

広い工房内に、完成間近のランドセルが所狭しと並びます

フロアを見回すと、完成前のランドセルやパーツがずらり。「わたしの番はまだ?」と声が聞こえてきそうなくらい、そこに並ぶランドセルたちは、何だかとっても誇らしげで、うれしそう。
たった一人のための、たったひとつのランドセル。子どもたちに会える日を、今か今かと心待ちにしているよう

たった一人のための、たったひとつのランドセル。子どもたちに会える日を、今か今かと心待ちにしているよう

工房の壁には、ランドセルに使われるパーツが貼られています。その数なんと110以上! どれがどの部分に使われるか考えてみるだけでワクワクしてきます

工房の壁には、ランドセルに使われるパーツが貼られています。その数なんと110以上! どれがどの部分に使われるか考えてみるだけでワクワクしてきます

「良い仕事には良い道具。自分で道具を作っていくのが本当の職人! 」
年季の入った道具を撫でながらそう話してくれたのは、職人さんの中でも一際目を光らせていた、創業者の土屋國男さん。70歳半ばを過ぎた今でも、こうして現役の職人として工房に立ち、ランドセル作りと若手の育成に携わっています。
「土屋鞄製造所」創業者の土屋國男さん。ランドセルに使用される小さなパーツの一つ一つを、角度を変えて丁寧に検品していきます

「土屋鞄製造所」創業者の土屋國男さん。ランドセルに使用される小さなパーツの一つ一つを、角度を変えて丁寧に検品していきます

一緒にものづくりを経験してきた、愛おしい道具たち。最初からしっくり手に馴染むものはありません。使いやすく改良していくうちに、土屋さんは、いくつもの作業道具を発明してきたそう(!)

一緒にものづくりを経験してきた、愛おしい道具たち。最初からしっくり手に馴染むものはありません。使いやすく改良していくうちに、土屋さんは、いくつもの作業道具を発明してきたそう(!)

創業者 土屋國男さんとランドセルの出会い

同級生に誘われ、土屋さんが故郷の岐阜から上京してきたのは、16歳のとき。上京後は、学生鞄とランドセルを中心とした製造会社で資材担当として鞄作りに携わります。

「僕は二年目から、ランドセルの材料集めを担当していたんです。資材を届ける役目で、職人さんのところへ出入りしていましたから、ランドセルを作る現場に関しては、それはもうよく見ていましたね。自分が集めた材料がどんな風に変化していくか、ランドセルの組み立て方はそこで学びました」
スタッフの皆さんからは「お父さん」の愛称で慕われている土屋さん。職人の時の真剣な顔つきとは一転、やさしい笑顔でインタビューに答えてくれました

スタッフの皆さんからは「お父さん」の愛称で慕われている土屋さん。職人の時の真剣な顔つきとは一転、やさしい笑顔でインタビューに答えてくれました

作ってみて初めて分かるランドセル作りの難しさ
その後、土屋さんは10年間同社で勤務しますが、独立していった先輩の姿に憧れ、自身も独立を決意。一からランドセルを作るということはなかったものの、長年携わっていたということもあり、「独立するならランドセル! 」という強い意志で、ランドセル職人の元で一年間修行を積みます。兄弟子である先輩の手伝いをしながら、「先輩が一つのことをやったら自分は二つやろう」という向上心をもち、親方や先輩の仕事を目で見て、技術を覚えていきました。
職人の仕事を誰よりも見てきた土屋さんだからこそ、職人の皆さんから信頼されているのが分かります。自らが職人になった今でも、若手職人への指導や、皆への声かけを大事にしています

職人の仕事を誰よりも見てきた土屋さんだからこそ、職人の皆さんから信頼されているのが分かります。自らが職人になった今でも、若手職人への指導や、皆への声かけを大事にしています

ふかふかの背当て。厚さの異なるクッション材のU字型に沿って、ミシンをかけていきます。職人さんは慣れた手つきでなめらかに動かしていましたが、カーブの部分がとても難しい作業なのだそう

ふかふかの背当て。厚さの異なるクッション材のU字型に沿って、ミシンをかけていきます。職人さんは慣れた手つきでなめらかに動かしていましたが、カーブの部分がとても難しい作業なのだそう

職人のみなさんがあまりにもテンポよく作業を進めるため、見ているだけでは難しさが分からなくなりますが、さらりとこなしているように見えるその作業は数ミリの世界。長年積み重ねた経験と感覚があってこそできる手仕事です。独立後、ランドセル製造の経験が一年しかなかった土屋さんは、今まで見てきたことと、いざ自分がやってみる難しさとのギャップに直面します。

「いやぁ、大変でしたね。ミシンも、職人さんは簡単にかけていたんですけど、自分でやるとなかなか上手くかからないんです。独立後は、一年近く一人でランドセル作りを勉強して、その後、少しずつ仕事を手伝ってくれる人が増えていって。自分の経験が浅かったので、人を雇う前に一人である程度苦しんだ経験があって良かったんじゃないかと、過去を振り返ってみると思いますね。入ってくる人はもちろんランドセル作りが分からない、僕も分からない、って、それじゃあさすがにね(笑)」
「まとめミシン」と呼ばれる作業。組み立てられたランドセルにミシンをかける「仕上げ」の工程です。まっすぐに伸びるステッチが美しい!

「まとめミシン」と呼ばれる作業。組み立てられたランドセルにミシンをかける「仕上げ」の工程です。まっすぐに伸びるステッチが美しい!

ランドセルのコンクールで目にした圧巻の職人技
独立して4年、軌道に乗り始めた頃、土屋さんは前社の親方から薦められ、「日本かばん協会」主催の技術創作コンクールに自身のランドセルを出展することに。それまでほかの人の作品をあまり見ることがなかったという土屋さんは、そこで目にしたハイレベルな職人技に感銘を受けたといいます。土屋さん曰く、良いランドセルは「光って見える」ものだとか。

「僕がその当時作ったものは駄作というか、もう、すべてがね、そういった人の技術に及ばなかったですね。ミシンのピッチにしても、細かいところにしても、高級感が出ているんですよね。良い腕をもつ人が作る鞄っていうのは、やはりすべての部分に神経が使われているんです。実際に、ランドセルを作っている自分でも、『よくこんな細かい作業ができるな……』って思うくらい。言ってみれば、僕はそれまで井の中の蛙でしたから、本当に勉強になりましたね。もし次にコンクールに出展する機会があれば、今度は『あの場所はこんな風に、ここはこういう風にしよう』って、想像を膨らませていました」
こちらは貼り合わせの作業。ほんの少しでもズレてしまうと、きれいな箱型にはなりません

こちらは貼り合わせの作業。ほんの少しでもズレてしまうと、きれいな箱型にはなりません

最後に全体を見て形を確認。作業は素早く正確、迷いがなく、これも熟練した職人の手だからできる技です

最後に全体を見て形を確認。作業は素早く正確、迷いがなく、これも熟練した職人の手だからできる技です

vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
コンクールに出展し、日本を代表する素晴らしい職人技に触れた土屋さん。試行錯誤を繰り返し、二回目の出展では見事入選します。その後も自身のランドセル作りを探求し続け「全国百貨店協会会長特別デザイン賞」、「経済局長賞」など数々の賞を受賞するまでに腕を磨き上げました。その探究心は、現在の土屋鞄製造所の精神にも確実に受け継がれています。
想いと技術。ミニランドセルを作って学んだこと
土屋鞄の信念を象徴するエピソードが、もう一つあります。

あるとき、6年間使ったランドセルをリサイクルして作る「ミニランドセル」が、世の中で注目され始めました。保管しておくのも大変、でも捨ててしまうのももったいない……。そんなランドセルを小さくし、思い出として取っておけるサービスを、土屋鞄製造所でも始めることに。
vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
「そのミニランドセルを作る仕事は、とにかく楽しいんです」
目をきらきらさせながら、土屋さんは続けます。

「その子どもさんの6年間の生活がよくわかるんですよね。落書きしてあったり、傷み具合だったり……。生活が、ランドセルの中にくっついてきているんですね。思い出が詰まったランドセルですから、やんちゃな子どもの物もあれば、すごくまじめに丁寧に使った子もいる。例えば傷とか、そのランドセルの中で一番特徴的な部分を残して作ったら、お客様にとても感動していただけたんです。お葉書や何かをいただいて。作る喜びっていうのを、そこでも感じましたね」
ランドセルを語るときの土屋さんの瞳は、こちらも笑顔になってしまうくらい、本当にうれしそう。まるで自分の子どものように(と、いっても過言ではないでしょうが)、愛を持ってランドセルに接しているのが分かります

ランドセルを語るときの土屋さんの瞳は、こちらも笑顔になってしまうくらい、本当にうれしそう。まるで自分の子どものように(と、いっても過言ではないでしょうが)、愛を持ってランドセルに接しているのが分かります

誰かに感動を与えるだけではなく、ミニランドセル作りの経験は土屋鞄のランドセルの品質をさらに上げることに繋がります。

「各地から、全国のメーカーさんが作ったランドセルが集まってくるんですから、本当に色々な状態のものが見られるんです。6年間使っていると、どこが一番傷むとか、どんな材料が良いとか、技術に関しても、とても学習できたんです。『6年間使ったランドセル』を色々見て、時代やメーカーによって作りも違って……。鞄の歴史のようなものも感じられて、ランドセルに関して深く考えさせられた仕事でしたねぇ」
前ベルトを指し、「握ってみてください」と土屋さん。実際に触ってみると、とてもしっかりと頑丈な作りになっていることがわかります。この部分に荷物を掛ける子どもが多く、一度切れてしまったことから、この中には5重にした補強材が入っています。大人が引っ張っても中々切れない、とても強い材料なのだそう

前ベルトを指し、「握ってみてください」と土屋さん。実際に触ってみると、とてもしっかりと頑丈な作りになっていることがわかります。この部分に荷物を掛ける子どもが多く、一度切れてしまったことから、この中には5重にした補強材が入っています。大人が引っ張っても中々切れない、とても強い材料なのだそう

「小学1年生と6年生のときに考えることや好みって、全然違うと思うんですよ。高学年までになると、すごく大人になってきますからね。それで、あまり飾りがあるのは飽きがきてしまうので、シンプルでベーシックな形で作るということは、今も昔も大切にしています」

たとえ子ども用の鞄であったとしても、だからこそ手を抜かず、大人から見ても『格好良いね』といえるような、“品のある”ランドセルを作るのが土屋さんの信念です。常に完成の「その先」を考えたものづくりは、土屋鞄の原点になっています。

次の世代へ受け継がれていく“土屋鞄流”

職人と作り上げていくデザイン
当初、工場の一角を店舗とし、製品を並べていた土屋鞄製造所。ほかの鞄もあった方がお客様にもっと楽しんでもらえるのではないかという考えから、ランドセル以外の製品を少しずつ増やしていきました。結果は大好評! 使う人のことを考え、もっと良いものを、という気持ちを忘れず、「更新されていくものづくり」が土屋鞄流。

そして昨年、50周年を記念して、長年培った技術とそれ以上の想いを集結させ作られたのが「OTONA RANDSEL(オトナランドセル)」。長い間ランドセルを作り続けてきた土屋鞄だからこそ追求できた新しいビジネスバッグの形です。
(画像提供:土屋鞄製造所)

(画像提供:土屋鞄製造所)

「職人さんには本当に頭が上がりません。本当に、職人ありきの土屋鞄だと思います」

そう、笑顔で話してくれたのは「OTONA RANDSEL」を担当した、デザイナーの舟山真利子さん。もともと美大でテキスタイルを学んでいた舟山さんは、大学で土屋鞄の求人を見つけたことをきっかけに入社。人が使うことで初めて物になる、愛着がわくものを作りたいという気持ちがあり、土屋鞄のものづくりに共感します。しかし、入社後は苦労も多かったそう。

職人が鞄を作る上で作業の道しるべともなるデザイン画は、単におしゃれなだけではなく、鞄の構造や組み立て方を理解した上で描くことが重要です。初めは、ステッチの入り方も分からず、職人さんと密に相談し、アドバイスをもらいながら、鞄のことを一から学ぶことで、少しずつデザインを描けるようになったといいます。
vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
「『OTONA RANDSEL』は、通常のランドセルをいかに大人の使うものとして、ビジネスバッグとして素敵に持ってもらえるかを一番に考えました。初めのサンプルは、子ども用ランドセルにかなり近いものが上がってしまって、出来上がりを皆で見て『さすがにこれを大人が背負うのは……』って(笑)。背負い心地や、箱型であること、かぶせ(※ランドセルのフタになる部分)など、どんなステッチや鞄のボリュームにすれば、ランドセルの特徴を消さずに、大人の背中に馴染むものを作れるのか……。職人やデザイナー、専門の垣根を取り去って皆で考えました。アイディア、技術を出し合って形を決めていったので、まとめるのは難しかったけど、楽しかったですね」
実際のデザイン画。作る側が見ても構造が分かるよう、細部まで描き込まれています

実際のデザイン画。作る側が見ても構造が分かるよう、細部まで描き込まれています

ランドセルの機能美はそのままに、大人が使えるスタイリッシュで美しいシルエットの「OTONA RANDSEL」。みんなで力を出し合って作った甲斐あって、インターネット上などでも話題となり、再販も即完売という人気アイテムになりました。

「自分で描いた図面が職人さんの手で3次元の立体に起こされて、こんなに格好良い鞄が出来上がったという感動が、さらにお客様にも届いて……。レビューやネットで感想を見たときや、持っているのを見たときに、その実感がわいてきて。その連鎖が本当にうれしいです」
どこから見ても美しいシルエットの「OTONA RANDSEL」。背負わせていただいたところ、とても軽く、背中にはランドセルの背当て部分の懐かしい感触が残りました

どこから見ても美しいシルエットの「OTONA RANDSEL」。背負わせていただいたところ、とても軽く、背中にはランドセルの背当て部分の懐かしい感触が残りました

舟山さんに、今後挑戦したいことを聞いてみると、少し考えて、でもその後すぐに「お客様と毎日を共にする鞄としてふさわしい鞄なのかを、本当に突き詰めて考えていきたいって、そればっかりです」と答えてくれました。その目は、舟山さんの描く線のように迷いがなく、まっすぐなものでした。
店舗で伝えたい「ものづくり」の想い
vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
土屋鞄製造所のものづくりは、お客さんに届いてからこそが、製品として完成する瞬間です。創業者である土屋國男さんの精神は、製品だけではなく、それを置く店舗にもしっかりと受け継がれていました。

「製品を『買ってほしい』というよりも、『良いものを使ってほしい』と思っている職人や会社のみんなの想いをとにかく伝えたくて、店頭に立っています」と話すのは、西新井本店の店舗スタッフ、関口由季子さん。ご両親が自宅で革漉き職人の仕事をしていたことで幼い頃から革に馴染みがあり、革製品にも興味があったことから土屋鞄製造所に入社します。以前は美容室でずっと接客に携わっていた関口さんですが、土屋鞄の接客は、ほかの接客業とは少し違っているそう。
vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
「たとえば、販売スタッフになるとノルマとか色々あると思うんですけど、土屋鞄はそういうのは一切なくて。個人のスキルアップももちろん大切なんですけど、どちらかというと、皆で、お店全体でおもてなしができるような空間を目指しているので、もしかしたらその考えがほかとは少し違うのかもしれませんね。特に西新井本店は、工房も、お店も、本社もあるので、余計に『土屋鞄製造所』全体のこと、という意識が強くなるのかもしれません」

今年で入社9年目になる関口さん。その間に店舗数も増え、近所の方や革製品好きの一部のお客様が多かった入社当時と比べると、革初心者の方や、土屋鞄に憧れを持っている方など、幅広い層のお客様が増えたそうです。
色とりどりのランドセル。大人でも選ぶのが楽しくなってしまいそうな、宝石箱のようなディスプレイです

色とりどりのランドセル。大人でも選ぶのが楽しくなってしまいそうな、宝石箱のようなディスプレイです

「革製品は長く使えるなどのメリットも沢山ありますが、その分お手入れが必要だったり弱点になる部分も多いので『安心して使っていただけるように』ということを大切にしています。基本的なお手入れ方法は土屋鞄のHPやインターネットでも詳しく書いてあります。なので、店舗でお手入れについてご案内するときは実際にお客様が製品を使っているときの話を聞きながら、自分の体験も交えつつ、ほかには載っていない知識を提供できるように心がけています。皆さん、本当に『長く使いたい』と思って選ぶので、製品をお求めいただいて終わりではなく、その後もお付き合いが続いていくんですよね。良いものを長く使ってほしい、それをいかに店舗でご案内できるか。シンプルだけど、今もその気持ちは入社時から変わっていません」
玄関に貼り出されていた一年生、その家族からのお便り。直接届く「ありがとう」が、次のものづくりに向けての原動力になります

玄関に貼り出されていた一年生、その家族からのお便り。直接届く「ありがとう」が、次のものづくりに向けての原動力になります

購入したランドセルを背負って店舗に会いに来てくれた子どもたち、製品を愛用しているお客様から届くたくさんのお手紙……。お話を聞いていると、製品を通してのお客様との繋がりが本当に密なものであることが分かります。技術的な面で上質であるのはもちろんですが、「もの」に誰かの気持ちが宿ったときに初めて「良いものづくり」が完成するのではないでしょうか。土屋鞄のランドセル作りには「想い」が欠かせません。それは、創業時からずっと変わらないこと。それを繋ぐパイプとなる店舗スタッフもまた、その想いをしっかり受け止めて、今日も誰かに届けています。
工房の壁でも目を惹く、きれいなスカイブルーの一枚革にはこんな言葉が掲げられていました

工房の壁でも目を惹く、きれいなスカイブルーの一枚革にはこんな言葉が掲げられていました

土屋鞄製造所では、入社後、どんなスタッフも必ず研修として工房に入ります。実際に自分が関わるものが生み出される瞬間を見ているからこそ、その想いを共有していけるのでしょう。

職人、デザイナー、店舗スタッフ……土屋鞄の製品は、一人でも欠けてしまうと本当の「完成」にはなりません。作る人、伝える人、届ける人、全員が使い手のことを想い、できあがる製品に対して最上級の誇りをもって、全力のものづくりをしているからこそ、長年愛されてきたのだと感じます。そして何よりも、胸を張って「土屋鞄が大好き! 」。声にはしないものの、皆さんの真摯な眼差しと笑顔がそれを教えてくれました。

日本の文化であるランドセルを、長く残していきたい

vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
ランドセルというのは不思議な鞄です。その発祥は古く――明治時代から日本の学習鞄として、一つの文化のような形で子どもたちの生活に根付いてきました。箱型の鞄ひとつに、贈る側の気持ちや、6年分の思い出。こんなにも多くのものが詰められている鞄って、考えてみるとそう多くはないかもしれません。土屋さんは、尽きることはないであろうランドセルの魅力を、こうも話します。

「創業当初、工房の近くに学校があって、僕の作ったランドセルを背負ってる子が、たまーにお店の前を通ったりするんですよ。当時は家族経営みたいなものですから、そんなにたくさん生産できるわけではなく、自分の作った製品が社会の中で生きているのを見られるっていうのはなかなかないんですよね。そういうところにものづくりの喜びっていうのはありますよね。それを直に感じられたのが、僕の場合はランドセルだった。日本の一つの文化のようなものですから、この文化を長く継続していきたいと思っています」
vol.34 土屋鞄製造所 -ランドセルが50年繋いだ「想い」のリレー。作る人から使う人の笑顔へ
初めての入学式、初めての運動会、初めての卒業式……。6年間、子どもたちと長い時間を過ごし、たくさんの「初めて」を共に経験するのは、たった一つのランドセルです。走り回って、友だちと大笑いしながら、時には泣いて歩いた帰り道も、ランドセルのハンドルと手を繋いで。そして、すこしだけ大きくなったときには知ってほしいと思うのです。楽しいときも辛いときも、いつも一緒にいた背中のランドセルが、あなたの笑顔を思い浮かべながら作られたということを。

土屋鞄製造所は今日も、「いつかのあなた」に寄りそうものづくりを、ひたむきに続けています。

(取材・文/長谷川詩織)
土屋鞄製造所 | つちやかばんせいぞうしょ土屋鞄製造所 | つちやかばんせいぞうしょ

土屋鞄製造所 | つちやかばんせいぞうしょ

1965年創業、一人のランドセル職人から始まった革製品メーカー。現在では関東に8店舗、名古屋、京都、福岡など、各地に店舗を構え、50周年を迎えた昨年「軽井澤工房店」をオープン。ひとつひとつ職人が手作りしているシンプルで美しいフォルムのランドセルには特に定評がある。そのほかの革製品もランドセル同様、職人の手作り。年を重ねるほど味わい深く、手に馴染んでいく製品は世代を越えて愛されている。

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